Bruce ACKERMANの日独と米国
ブルース・アッカーマンがドイツと日本で、アメリカの地位は悲劇的局面に陥ると題する記事をハフィントン・ポストに書いている。
ドイツについては、例のCIAの諜報活動についてドイツの怒りを軽視した米政権の拙さを非難するものだが、日本については、以下のように書かれている。
日本では、集団的自衛権の解釈がさらに深刻な悪影響を及ぼしつつある。安倍晋三首相は復古主義的なナショナリストで、自ら総裁を務める与党・自民党に対し、戦後の日本国憲法が連合軍の占領政策によって不当に押しつけられたものと貶めるキャンペーンを主導している。安倍首相の最初の標的は憲法9条で、彼は当初、憲法で定められた国民投票を実施して9条を破棄しようと模索した。この戦略が世論と国会から大きな反発を受けると、安倍首相は方針を転換し、憲法改正を伴わない手段によって同じ成果を得ようとしている。7月1日、安倍首相は閣議決定で憲法を「解釈変更」し、憲法が「永久に」放棄するとしてきた「武力による威嚇又は武力の行使」を認めると発表した。これは半世紀にわたる憲法解釈を覆したものだ。
集団的自衛権の行使容認について、正面から「武力による威嚇又は武力の行使」を認めるものと評価された。この部分については、おそらく政府関係者からは「当たらない」ということになるだろうが、その前提の文脈は正鵠を得ている。つまり、「戦後の日本国憲法が連合軍の占領政策によって不当に押しつけられたものと貶めるキャンペーン」とか、「憲法で定められた国民投票を実施して9条を破棄しようと模索」とか、こうした理解は全く正しい。戦後体制からの脱却が安倍氏のスローガンであり、またいわゆる押しつけ憲法論もお得意の論理である。
集団的自衛権を前提にした、新たな自衛隊の対外的活動の恒久立法についてアッカーマン教授は、以下のように述べている。
安倍首相の目論見が成功すれば、彼の急進的な解釈改憲は、自民党が憲法改正案で掲げる、日本国憲法が保障する民主政治の基本原理、そして社会的権利を打破する先例となる。安倍首相が政治生命を賭けているとも言えるこの大博打に対し、今後数カ月は現代日本史上で最も重要な議論が展開されるだろう。
これに対してアメリカの、特に国防長官が支持するコメントを出したことについて、「アメリカが半世紀にわたって支持してきた憲法秩序を否定したからだ。安倍政権のクーデター的な解釈改憲にお墨付きを与えた画期的な発言ではあった」と評している。
なお、日本におけるアッカーマンの紹介としては、長谷部恭男「民主主義の質の向上--ブルース・アッカーマンの挑戦 (特集 議会制民主主義の行方)」ジュリスト1311号84頁、川岸令和「熟慮に基づく討議の歴史とアメリカ合衆国憲法の正統性--ブル-ス・アッカマンの「2元的デモクラシ-論」への覚書」早稲田政治経済学雑誌 320号286頁などがある。
そのアッカーマンの「市民権革命」と題する講演が、パリ第二大学で2015年4月10日に行われる。
→Conférence du professeur Ackerman
市民権革命というのは、アッカーマンの著作の一つの表題である。
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