祝・村木厚子さんへの控訴断念、だが・・・
郵便不正事件の犯人に仕立て上げられて、働き盛りの1年半を無駄にさせられた村木さんにとっては、一刻も早く原職に復帰することが第一で、そのためは控訴断念という報は良いニュースだ。
しかしこれで終わりではない。
村木さん自身が記者会見で言っていたように、検察は信頼に値するべき存在であって、社会の安全安心の守り手として存分に機能してもらわなければならない。
その検察が無辜を罪に問うようなことをすれば、その原因が何であったかを明らかにして信頼を取り戻す必要がある。
もちろん、刑事裁判では検察も一方当事者であって、その判断が絶対ではないからこそ裁判をする必要があるわけだから、無罪判決が出たというだけで不祥事であるかのような扱いをするのは不当である。
しかし、今回の村木裁判では、無様にも客観的証拠に反する供述調書を多数作り出して、検察自身が自分で作った調書に騙されて突っ走ってしまったように見える。避けようとすれば避けられた無罪事件に見えるのだ。
このような無様な失敗を繰り返さないためには、取り調べ過程の可視化ももちろんだが、身柄拘束のあり方、否認事件における保釈の運用、そして渡部保夫先生の時代から研究が進んでいる供述調書の信用性の批判的検討、とりわけ共犯者の供述の信用性の問題などの検討結果を踏まえて、今回の捜査過程でどこのあたりに間違いがあったのかを特定する検証作業が必要だ。
久しぶりに渡部保夫先生の本でも読んでみたくなった。
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