インドとカナダの事実上の断交には、至る所に米国の指紋がびっしり(抄訳)
2024/10/19のアンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。インドとカナダの関係が悪化しているのは米国の所為だ。米国は世界が三極体制を向かうのを阻止したい。印米関係の今後については決定権は米国側が握っている。
The De Facto Rupturing Of Indian-Canadian Ties Has The US’ Fingerprints All Over It
印加関係は悪化中
2023年9月以降、インドとカナダの関係は悪化した。トルドー首相が、インドがカナダ国内で二重国籍を持つテロリスト分離主義者を暗殺したと非難した為だ。
これに対してインドは容疑を否定し、カナダ国民のビザを一時的に停止した。
その後、米国もインドに対して同様の非難を行い、相互信頼を大きく傷付けたが、インドはこれまでのところ、カナダ相手よりも遙かに上手くこの論争に対処して来た。
背景を説明する記事は以下の通り。
・ 2023/09/19:インドとカナダの論争には暗殺疑惑以上のものが色々絡んでいる(抄訳)
・10/01:インドの外交高官がカナダについての暗い真実を語る(要点)
・11/23:インドと西洋の蜜月関係が遂に破局?(抄訳)
・2024/05/02:ワシントン・ポストのインドの暗殺記事は、米国諜報機関による一撃だ(抄訳)
・09/23:The US Is Playing A Game Of Good Cop, Bad Cop Against India
最新の展開としては、トルドーは、2023年夏の暗殺事件にインドの高等弁務官達が直接関与したと非難したが、この主張を裏付ける証拠は一切提示しなかった。
これに対してインドは高等弁務官を含むカナダの外交官6人を追放した。
その後トルドーはファイブ・アイズ(米国が主導する諜報共有同盟)から証拠を受け取ったと述べた。
黒幕は米国
インドとカナダの事実上の断交には、至る所に米国の指紋がびっしりだ。
その目的は、ロシアに対する制裁を拒否したことは勿論、それどころかエネルギー、金融、テクノロジー、更には北極圏の分野に於てロシアとの戦略的パートナーシップを強化して来たことへの罰として、インドの国際的評判を貶めることだ。カナダはその為の代理だ。
米国はまたインドに制裁を課す口実を欲しがっており、インドの反体制派も勢い付けたい。
これら全体の目標は、インドに圧力を掛けてその独立した外交政策を再考させることだ。インドはグローバルなシステム移行に於て三極化プロセスを加速させており、米国の一極覇権の終焉を早めているが、米国の政策立案者達は、若し一極覇権体制が維持出来ないのであれば、三極体制よりも米中二極体制の方がまだマシだと考えている。だがそれには大国として驚異的に台頭しているインドに待ったをかけなかればならない。
問題は、インド封じ込め(例えば隣国バングラデシュでのレジーム・チェンジによる不安定化)をやり過ぎると、インドが中国との関係を修復して、共同で米国に対抗するかも知れないと云うことだ。だからこそ、米国は少なくとも今のところは、非常に慎重に行動している。
印加断交は印米断交よりもずっと害が少ないので、米国はカナダを手先として利用している。貿易や移民に関して混乱が起きたとしても対処可能だ。その程度で済めば米国としては安いものだ。
インドと米国の関係が崩壊すれば、上述した様に世界秩序が変化するかも知れないが、それは両国にとって大きな経済的損失を伴うことになり、現時点ではどちらもそのリスクを冒したくない。
米国の政策立案者達はインドが国際的評判を傷付けられれば、インドにロシアと縁を切らせることまでは出来なくとも、少なくとも独立した外交政策路線を縮小させられると考えているのだろう。だが、これは裏目に出るかも知れない。これまでの前例を考えると、圧力を受けたインドがより反抗的になる可能性の方が高いからだ。
但し印中関係は国境論争とそれに起因する安全保障上のジレンマから、依然として問題を抱えているので、この点でインドが出来ることには限界が有る。インドは中国に対して一方的な譲歩はしたくないが、印米関係が更に悪化した時に、米国が裏で中国と取引するシナリオを恐れている。
だからこそ、インドはカナダを間に挟んだ米国との論争を出来るだけ紛争を外交的に処理するよう、全力を尽くして来た。従って印米関係の今後については、決定権は米国側が握っている。
米国の選択肢は3つだ。
1)これ以上のエスカレーションはせずインドを罰しようとするのを止める。
2)インド政府職員を犯罪容疑で告発し、標的を絞った制裁を課す(それが印中関係の改善を促すリスクは我慢する)、
3)二極体制へ移行する為に裏で中国と取引する。
The De Facto Rupturing Of Indian-Canadian Ties Has The US’ Fingerprints All Over It
印加関係は悪化中
2023年9月以降、インドとカナダの関係は悪化した。トルドー首相が、インドがカナダ国内で二重国籍を持つテロリスト分離主義者を暗殺したと非難した為だ。
これに対してインドは容疑を否定し、カナダ国民のビザを一時的に停止した。
その後、米国もインドに対して同様の非難を行い、相互信頼を大きく傷付けたが、インドはこれまでのところ、カナダ相手よりも遙かに上手くこの論争に対処して来た。
背景を説明する記事は以下の通り。
・ 2023/09/19:インドとカナダの論争には暗殺疑惑以上のものが色々絡んでいる(抄訳)
・10/01:インドの外交高官がカナダについての暗い真実を語る(要点)
・11/23:インドと西洋の蜜月関係が遂に破局?(抄訳)
・2024/05/02:ワシントン・ポストのインドの暗殺記事は、米国諜報機関による一撃だ(抄訳)
・09/23:The US Is Playing A Game Of Good Cop, Bad Cop Against India
最新の展開としては、トルドーは、2023年夏の暗殺事件にインドの高等弁務官達が直接関与したと非難したが、この主張を裏付ける証拠は一切提示しなかった。
これに対してインドは高等弁務官を含むカナダの外交官6人を追放した。
その後トルドーはファイブ・アイズ(米国が主導する諜報共有同盟)から証拠を受け取ったと述べた。
黒幕は米国
インドとカナダの事実上の断交には、至る所に米国の指紋がびっしりだ。
その目的は、ロシアに対する制裁を拒否したことは勿論、それどころかエネルギー、金融、テクノロジー、更には北極圏の分野に於てロシアとの戦略的パートナーシップを強化して来たことへの罰として、インドの国際的評判を貶めることだ。カナダはその為の代理だ。
米国はまたインドに制裁を課す口実を欲しがっており、インドの反体制派も勢い付けたい。
これら全体の目標は、インドに圧力を掛けてその独立した外交政策を再考させることだ。インドはグローバルなシステム移行に於て三極化プロセスを加速させており、米国の一極覇権の終焉を早めているが、米国の政策立案者達は、若し一極覇権体制が維持出来ないのであれば、三極体制よりも米中二極体制の方がまだマシだと考えている。だがそれには大国として驚異的に台頭しているインドに待ったをかけなかればならない。
問題は、インド封じ込め(例えば隣国バングラデシュでのレジーム・チェンジによる不安定化)をやり過ぎると、インドが中国との関係を修復して、共同で米国に対抗するかも知れないと云うことだ。だからこそ、米国は少なくとも今のところは、非常に慎重に行動している。
印加断交は印米断交よりもずっと害が少ないので、米国はカナダを手先として利用している。貿易や移民に関して混乱が起きたとしても対処可能だ。その程度で済めば米国としては安いものだ。
インドと米国の関係が崩壊すれば、上述した様に世界秩序が変化するかも知れないが、それは両国にとって大きな経済的損失を伴うことになり、現時点ではどちらもそのリスクを冒したくない。
米国の政策立案者達はインドが国際的評判を傷付けられれば、インドにロシアと縁を切らせることまでは出来なくとも、少なくとも独立した外交政策路線を縮小させられると考えているのだろう。だが、これは裏目に出るかも知れない。これまでの前例を考えると、圧力を受けたインドがより反抗的になる可能性の方が高いからだ。
但し印中関係は国境論争とそれに起因する安全保障上のジレンマから、依然として問題を抱えているので、この点でインドが出来ることには限界が有る。インドは中国に対して一方的な譲歩はしたくないが、印米関係が更に悪化した時に、米国が裏で中国と取引するシナリオを恐れている。
だからこそ、インドはカナダを間に挟んだ米国との論争を出来るだけ紛争を外交的に処理するよう、全力を尽くして来た。従って印米関係の今後については、決定権は米国側が握っている。
米国の選択肢は3つだ。
1)これ以上のエスカレーションはせずインドを罰しようとするのを止める。
2)インド政府職員を犯罪容疑で告発し、標的を絞った制裁を課す(それが印中関係の改善を促すリスクは我慢する)、
3)二極体制へ移行する為に裏で中国と取引する。
- 関連記事
-
- フランスがロシアの資産からウクライナ向けシーザー榴弾砲12台を購入(抄訳) 2024/11/02
- 中国の作家が、モルドバ国民投票に米国が秘密裏に介入していたことを暴露(抄訳) 2024/11/01
- インドとカナダの事実上の断交には、至る所に米国の指紋がびっしり(抄訳) 2024/11/01
- ポーランドの一流ジャーナリストが慨嘆:何故我々はウクライナの最終局面で蚊帳の外に置かれているのか?(抄訳) 2024/11/01
- ウクライナの外交団がRTのマイクを見てパニックに(抄訳) 2024/11/01