日本とフィリピンの軍事兵站協定は中国との戦争のリスクを高める(抄訳)
アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2024/07/08に発表された日本とフィリピンとの軍事兵站協定は、米国の中国封じ込め戦略の一環だ。米国は日本と共に、東南アジアではフィリピン、北東アジアではROKを中心として、2つのアジア版三極を形成しているが、これにより新冷戦が更に危険なものになっているのは間違い無い。
The Japanese-Philippine Military Logistics Pact Raises The Risk Of War With China
米国は中国をより強力に封じ込める為に、欧州から「アジアへの軸足変更(回帰)」の準備をしているが、それが具体的にどう云う形になるかを予想している人は殆ど居ない。
以前は米豪日印から成るQUADを利用すると考えられていたが、米印関係が悪化してインドの協力は最早望めなくなった為、インドをフィリピンに置き換えた「分隊(SQUAD)」がこの役割を担うと予想される。
2024/07/08に発表された日本とフィリピンの軍事兵站協定はこの文脈で理解する必要が有る。
これに先立ち、2023/06/16に米日比3ヵ国の国家安全保障担当補佐官達が初めて会合を開き、その9ヵ月後の202404/11には同3ヵ国の首脳会談が開催された。これによって米国は第一列島線に沿って中国封じ込めの縄を更に締め上げることになった。
恐らく日本はフィリピンとの軍事演習を強化し、更なる武器取引を開拓することだろうが、両国が台湾から略同距離に位置していることを考えると、将来的に台湾も巻き込む可能性も考えられる。最近のフィリピンとの低強度の衝突で証明されている様に、中国は自国が主張する領土への侵害に対応する政治的意志を持っているので、これは紛争が起こるリスクを高めることになる。
米国はフィリピンに対して相互防衛義務を負っているが、最近は中国との緊張緩和を続けているので、大っぴらには関与したがらない。だが状況は簡単に変わるかも知れない。
日本とフィリピンが、北京が自国の領土だと主張する海域を侵害した場合、両国の同盟国である米国は対応を迫られることになる。当面はその様な挑発はやらないかも知れないが、そうしたことが起こる可能性は排除出来ない。そうなればそれは危険な瀬戸際危機を引き起こすかも知れず、各方面が冷静な判断を下さなければ、制御不能に陥る危険性が有る。
新冷戦の中米対立の局面に於いて東南アジア戦線は唯一の戦場ではなく、北東アジア戦線もまた補完的なものとして急速に形成されつつあるある。06/19にロシアと相互防衛協定を結んだDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)は米韓日の合同演習後に、これら3ヵ国が共謀して「アジア版NATO」を作ろうとしていると非難した。
ROK(大韓民国)はAUKUS+とも言えるチームに参加する最有力候補で、その場合はフィリピンと同じ様に日本のジュニア・パートナーになるだろう。だがROK人は第2次世界大戦時代の日本による占領に対して依然として憤りを抱いており、日本は当時の責任を十分に認めていないと思っているので、これは確かな話ではない。米国の庇護の下で三国演習を行うことはまだいいが、旧植民国と軍事・兵站協定を結ぶとなると話は全く別だ。特にそれで日本が優位に立つことになるなら尚更だ。
それでもROKは日本をアジアのトップ・パートナーとして、AUKUS+に於ける役割を拡大すると予想される。
大戦略的には、米国は日本と共に、東南アジアではフィリピン、北東アジアではROKを中心として、2つのアジア版三極を形成している。オーストラリアの役割は当面は主に象徴的なものであり、これら2つの三極はまだNATOの様な多国間防衛ネットワークへと統合されてはいないが、何れそちらへ向かうであろうことは明らかだ。
中国がこうした動きにどう反応するかは不明だが、新冷戦が更に危険なものになっているのは間違い無い。
The Japanese-Philippine Military Logistics Pact Raises The Risk Of War With China
米国は中国をより強力に封じ込める為に、欧州から「アジアへの軸足変更(回帰)」の準備をしているが、それが具体的にどう云う形になるかを予想している人は殆ど居ない。
以前は米豪日印から成るQUADを利用すると考えられていたが、米印関係が悪化してインドの協力は最早望めなくなった為、インドをフィリピンに置き換えた「分隊(SQUAD)」がこの役割を担うと予想される。
2024/07/08に発表された日本とフィリピンの軍事兵站協定はこの文脈で理解する必要が有る。
これに先立ち、2023/06/16に米日比3ヵ国の国家安全保障担当補佐官達が初めて会合を開き、その9ヵ月後の202404/11には同3ヵ国の首脳会談が開催された。これによって米国は第一列島線に沿って中国封じ込めの縄を更に締め上げることになった。
恐らく日本はフィリピンとの軍事演習を強化し、更なる武器取引を開拓することだろうが、両国が台湾から略同距離に位置していることを考えると、将来的に台湾も巻き込む可能性も考えられる。最近のフィリピンとの低強度の衝突で証明されている様に、中国は自国が主張する領土への侵害に対応する政治的意志を持っているので、これは紛争が起こるリスクを高めることになる。
米国はフィリピンに対して相互防衛義務を負っているが、最近は中国との緊張緩和を続けているので、大っぴらには関与したがらない。だが状況は簡単に変わるかも知れない。
日本とフィリピンが、北京が自国の領土だと主張する海域を侵害した場合、両国の同盟国である米国は対応を迫られることになる。当面はその様な挑発はやらないかも知れないが、そうしたことが起こる可能性は排除出来ない。そうなればそれは危険な瀬戸際危機を引き起こすかも知れず、各方面が冷静な判断を下さなければ、制御不能に陥る危険性が有る。
新冷戦の中米対立の局面に於いて東南アジア戦線は唯一の戦場ではなく、北東アジア戦線もまた補完的なものとして急速に形成されつつあるある。06/19にロシアと相互防衛協定を結んだDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)は米韓日の合同演習後に、これら3ヵ国が共謀して「アジア版NATO」を作ろうとしていると非難した。
ROK(大韓民国)はAUKUS+とも言えるチームに参加する最有力候補で、その場合はフィリピンと同じ様に日本のジュニア・パートナーになるだろう。だがROK人は第2次世界大戦時代の日本による占領に対して依然として憤りを抱いており、日本は当時の責任を十分に認めていないと思っているので、これは確かな話ではない。米国の庇護の下で三国演習を行うことはまだいいが、旧植民国と軍事・兵站協定を結ぶとなると話は全く別だ。特にそれで日本が優位に立つことになるなら尚更だ。
それでもROKは日本をアジアのトップ・パートナーとして、AUKUS+に於ける役割を拡大すると予想される。
大戦略的には、米国は日本と共に、東南アジアではフィリピン、北東アジアではROKを中心として、2つのアジア版三極を形成している。オーストラリアの役割は当面は主に象徴的なものであり、これら2つの三極はまだNATOの様な多国間防衛ネットワークへと統合されてはいないが、何れそちらへ向かうであろうことは明らかだ。
中国がこうした動きにどう反応するかは不明だが、新冷戦が更に危険なものになっているのは間違い無い。
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