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ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
昨日NIHのプログラム・オフィサーがハーバードを訪れた際に、ランチの席で、政府からのグラント(科学研究費)をとるための戦略を相談する機会がありました。

現在米国の科学研究費が伸び悩み、グラント獲得競争はますます激しくなっています。そのため予備データのたくさんあるリスクが低い(結果を出す確率の高い)と見なされるプロポーサルしか採択されないのではという懸念が研究者コミュニティーに広がっています。

プログラム・オフィサーのコメントによると、NIHの主要なリサーチグラントであるR01を獲得するためには、予備データが十分にある(リスクが低い)ことは言うまでもなく、研究成果がイノベーションをもたらすかがどうかが重要視されるのが最近のレビューの傾向であるようです。

しかし、リスクを取ることなくイノベーションをもたらすことは非常に困難です。そこでプログラム・オフィサーが薦めたのがフェーズド・イノベーション・アワード(R21/R33)です。

R21はもともとハイリスクのプロジェクトに取り組むためのグラントでしたが、期間が2年とバイオメディカル研究には短すぎ、また一度限りで更新がないので、実際には2年で成果がでるような中程度のリスクしかとれませんでした。

フェーズド・イノベーション・アワード(R21/R33)では、最初の2年間はR21と同じなのですが、あらかじめ2年後に達成可能な中間到達点(マイルストーン)をNIHと合意して設定しておき、マイルストーンを達成すれば(ハイリスクのアイデアがなんとかうまく機能しそうだという予備データが得られれば)新たに申請書を書くことなく、大きな予算のつく3年間のR33フェーズに移行できるという仕組みです。

将来大きなインパクトを生み出す可能性のあるクールなアイデアを、予備データがほとんどないような非常に初期の段階からサポートし、NIHがマイルストーンでプロジェクトをガイドしていくのがR21/R33の肝です。総予算の限られたなか、できるだけイノベーションを推進したいNIHの工夫としては期待できるものの一つではないでしょうか。

Phased Innovation Awards (R21/R33)

Innovation grants involve a high degree of risk, innovation, and novelty with some promise for improving vaccine development. Although there is no requirement for preliminary data, strong scientific rationale is advisable.

Awarded projects will first be tested in milestone-driven exploratory/feasibility "proof of concept" studies (R21 phase); and then, if eligible, will be reviewed for the expanded development (R33 phase) award without the need to submit an additional grant application. The phased R21/R33 mechanism offers the potentially successful investigator the opportunity to devote full attention to the research project without the burden of additional grant writing for continued support, and will permit promising research to continue with no lapse in funding.



テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術

「主張しよう」19歳歌手 クリスタル・マイヤーズ<asahi.com>より。「どんなノイズ(主張)?」との問いに対して:

自分たちがだれであるか。どんな人間になりたいのか。そういうこと。なりたい人間になるためには、他人を巻き込み、人に興味を持ってもらわないと:クリスタル・マイヤーズ



この言葉の後半は、おそらく彼女が考えているよりずっと広い範囲で有用ではないでしょうか。

「自分たちがだれであるか。どんな人間になりたいのか。」というのが、わかっていないときこそ、「他人を巻き込み」自分の外側にヒントを見いだすことで道が開けることが多いと思います。同様のことを、確か山田ズーニーさんが「迷ったらひらけ」と著書の一つに書いておられたと記憶しています。



テーマ:アート・デザイン - ジャンル:学問・文化・芸術

TokyoやKyotoに比べて、Osakaを外国人に英語で紹介するのは簡単ではないように感じています。そんななか、このプレゼンテーションは完璧ではないにせよ、なかなかうまくOsakaの良さをまとめているのではないでしょうか。大阪出身の私としてはすこし嬉しい発見でした。今度ぜひ使ってみたいと思います。

また、大阪に関連してポドキャスト「大阪まちあるき 文明開花 幕末維新人物伝」も大阪人には嬉しいリソースです。




テーマ:語学・国際交流 - ジャンル:学問・文化・芸術

スプートニク1号(ロシア語:Спутник-1、спутникはロシア語で衛星の意)はソ連が1957年10月4日に打ち上げた世界初の人工衛星。重量は83.6kg。世界初の人工衛星・スプートニク1号は、コンスタンチン・E・ツィオルコフスキーの生誕100年と国際地球観測年に合わせて打ち上げられた。科学技術的に大きな成果であるのみではなく、スプートニク・ショックを引き起こし、米ソの宇宙開発競争が開始されるなど、冷戦期の政治状況にも影響を与えた。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』





なお、このムービーのプロデューサーDavid Hoffmanは、最近自宅の火災ですべての機材を失ったのですが、ゼロから出直す意気込みと希望をTEDで語っています

テーマ:歴史大好き! - ジャンル:学問・文化・芸術

スピーチが重要な仕事の一つである政治家は、プレゼンテーションの名手であることが要求されます。ボブウッドワードの「攻撃計画ーブッシュのイラク戦争ー」で、イラク戦争を始める直前のState of the Union Address演説のリハーサルをしているブッシュ大統領をまえにして、大統領専属スピーチライターのガーソンはつぎのように回想しています。

演説の予行演習をやるのは、その言葉を最初に口にしたときの気持ちを経験するためだというのを、ガーソンは承知していた。そうすれば、2度目には勢いをつけられるようになり、3度目にはその言葉だけでなく自分自身も制御できるようになる。
(Gerson knew that one of the reasons to practice a speech was so the president could experience the emotions of the words the first time. Then, on second practice, he could drive through them, and on the third control them and himself.)



つまり3回のリハーサルの目的はそれぞれ:
1回目:言葉を口にすれば、それは聴衆だけでなく自分にも作用します。まず自分の発した言葉に対する感情の揺れを経験します。
2回目:感情に押し切られないように勢いをつけます。
3回目:平常心で言葉を発することができるように。

スピーチのプロフェッショナルの米国大統領は3回で言葉と自分とが制御できるようになるのでしょうが、一般にはそれ以上の予行演習が必要で、3回というよりは3段階のフェーズがスピーチ/プレゼンテーションの予行演習にはあると理解した方がよいでしょう。


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仕事とプライベートとのバランスは永遠のテーマですが、現在のようにいつでもどこでもネットにつながり、24時間仕事に関するメールをやりとりし、仕事に関する情報を吸収/発信する状況のなか、仕事/プライベートの境目は増々希薄になっています。スマートフォンやiPhoneがさらにこの境目をなくしていくでしょう。

かっては「本当に仕事のできるヤツはオンとオフのバランスをうまくとっている」的な伝説もあったかも知れませんが、境目がなくなって行く以上、もともとワーカホリックにとっては不可能な「バランス」などという幻想など捨ててしまおうというのが最近よく目にする考え方です。

仕事/プライベートの「バランス」から「融合」への変遷をうまく表したイラストをribbonfarm.comで見つけました。70年代は仕事がプライベートを浸食しましたが、その後バランスという幻想が流行りました。2000年以降はプライベートが仕事へと浸食し、現在は融合がハッピーエンディングに向けて進行中ということでしょうか.....


work life




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何か大きなことを成し遂げる行程で、「考えられる失敗はすべて経験した」と語る成功者は少なくありません。キャリアを形成して行く過程で許される失敗の回数は無限回ではありませんし、個人の状況によっても違います。しかし、失敗は、そのネガティブな面が過剰に強調される傾向があるので、長期的に見て許される失敗の回数はおそらく人が感じているよりもずっと多いはずです。

失敗を恐れるメンタリティーに対抗するのに効く一つの方法が、失敗のポジティブな面に目を向けることです。そこで”15のクリエイティブな失敗プラス1”に関するプレゼンテーション「Funny Mistakes」を紹介します。




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羊土社「実験医学」で執筆しています「プロフェッショナル根性論」関連のコラム「第7回 理系研究者のための”名刺戦略’としてのブログのすすめ”ブログをはじめるにあたって”」がアップロードされました:

(梅田望夫さんが提唱されていますように)他のブロガーの書いたブログをRSSフィードを使って定期的に読んでいくことは,普段は出会うことのないタイプの人の考えをリアルタイムで学ぶことを可能にする知的生産術の1つです。私が推薦する理系研究者自己啓発のための10個のブログを紹介します。



ぜひご覧下さい

プロ根

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研究者がよりダイレクトな形で世の中にインパクトを与える方法の一つが、自分のサイエンスの成果をもとに起業することですが、ビジネスの経験のないアカデミアの研究者にとっては、そのプロセスは容易なことではありません。しかし、メディカルスクースとビジネススクールとのコラボレーション、さらにはベンチャーキャピタルの少しばかりの助けがあれば、アカデミアの研究者が起業も不可能なことではないと感じています。

今私は、自分の研究室の仲間と、ハーバードビジネススクールの学生とチームを組み、自らの開発したテクノロジーをもとにバイオテクスタートアップを立ち上げようとしています。その第一歩として、ハイランドベンチャーキャピタルの提供する”起業家キャンプ”に応募し、何十倍かの難関を乗り越え、この夏起業家キャンプの正式な参加者に選ばれました。

ハイランドベンチャーキャピタルが与えてくれるアドバイスやオフィススペースと少しばかりの資金もありがたいのですが、本当に重要なのは彼らのネットワークを通じてボストン周辺での重要なビジネスパーソンとのコネクションを作って行くことができることです。とにかく、競争の激しいボストンのビジネスコミュニティーでわれわれのチームの存在を知ってもらう(ノイズをたてる)のが、まずすべきことのひとつです。ノイズをたてるのに効果的なのがやはりメジャーなメディアでストーリーが取り上げられることです。

幸運にもビジネスウイークがハイランドの起業家キャンプでの私たちの活動をとりあげてくれました。サイエンスをビジネスにするのは簡単なことではないでしょうが、”挑戦し、失敗から学ぶ”ということをもう一度やってみるつもりです(一回目は臨床医から基礎医学研究者に10年前に転向したとき)。


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ニューヨークタイムズの記事のうちここ数日最もよくクチコミ(メール)で広がった記事のひとつ、世界の貧困問題(Global Poverty)の取り組み方に関するちょっといい話”The Luckiest Girl(最高にラッキーな少女)”を紹介します。

最高にラッキーな少女はウガンダ出身ベアトリス。今年コネチカット・カレッジを見事に卒業しました。ウガンダ出身の少女がアメリカのカレッジを無事卒業するのは簡単なことではありません。多くのひとの助けが必要でしたが、彼女の成功を助けた立役者はちょっと変わっています。彼女の成功に大きく貢献したのは”一匹の山羊”なのです。

ベアトリスはウガンダ西部の貧しい農家の生まれ. 幼いときから勤勉な彼女は家で家族を助けながら勉強し、ウガンダでは希少な読み書きのできる少女となりました。そして、もっと勉強するために、学校に行くことを切望していましたが、彼女の家庭にそんな経済的余裕はありませんでした。

同じ頃米国コネチカット州の小さな町ニアンティックの教会では、何か世の中に役立つことにお金を使うことを話し合っていました。そして、アーカンソーにある慈善団体Heifer Internationalをとおしてアフリカの農家に山羊を何匹か贈ることにしました。Heifer Internationalのオンライン・カタログによると山羊は一匹一万円余り(120ドル)でした。

教会が贈った山羊のうちのメス一匹がベアトリスの両親に届き、そのメスはやがて双子を生みます。子山羊が乳離れしたのち、両親は山羊のミルクを子供の栄養補給に使い、余ったミルクを売りました。そしてその蓄えたお金で長女であったベアトリスを学校に入れてやることができました。ベアトリスは非常に喜び、一生懸命勉強しその学校で一番になりました。

ベアトリスの学校を訪れたアメリカ人のひとりは、彼女のストーリーに感銘を受け、"Beatrice's Goat" という本を書き、この本は2000年のベストセラーになります。

Heifer Internationalの慈善事業家らはベアトリスのストーリーに心動かされ、彼女を奨学金を与えます。この奨学金のおかげで、ベアトリスはウガンダでベストの女子高生となり、マサチューセッツの高校へ進み、そしてコネチカット・カレッジに入学します。

のちにHeifer Internationalのイベントで経済学者のJeffrey Sachsは、ベアトリスのストーリーのことを:

ベアトリスの経済発展定理:小さなインプットが大きなアウトプットを生み出せること

と談まじりで話したそうです。

もちろんベアトリスのサクセス・ストーリーの背後には、何百、何千、何万の発展途上国援助の失敗例があることは確かです。Global Povertyの問題はあまりに大きく個人の取り組みはあまりにも無力と感じずにはいられないでしょう。しかし、ベアトリスと山羊の物語は、心に響くストーリーが世界を変える力を持っているのだということを教えてくれます。(反対に世界を動かすストーリーの怖さを忘れたはいけませんが....)

なお、ベアトリスはアーカンソー州のクリントン・スクール・オブ・パブリック・サービスで学位を取ったのち、アフリカに戻りエイド・グループとして貧困問題に取り組み予定らしい。ベアトリスの経済発展定理はもっと大きなアウトプットを生むことを証明するでしょう。







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Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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