昨日NIHのプログラム・オフィサーがハーバードを訪れた際に、ランチの席で、政府からのグラント(科学研究費)をとるための戦略を相談する機会がありました。
現在米国の科学研究費が伸び悩み、グラント獲得競争はますます激しくなっています。そのため予備データのたくさんあるリスクが低い(結果を出す確率の高い)と見なされるプロポーサルしか採択されないのではという懸念が研究者コミュニティーに広がっています。
プログラム・オフィサーのコメントによると、NIHの主要なリサーチグラントであるR01を獲得するためには、予備データが十分にある(リスクが低い)ことは言うまでもなく、研究成果がイノベーションをもたらすかがどうかが重要視されるのが最近のレビューの傾向であるようです。
しかし、リスクを取ることなくイノベーションをもたらすことは非常に困難です。そこでプログラム・オフィサーが薦めたのがフェーズド・イノベーション・アワード(R21/R33)です。
R21はもともとハイリスクのプロジェクトに取り組むためのグラントでしたが、期間が2年とバイオメディカル研究には短すぎ、また一度限りで更新がないので、実際には2年で成果がでるような中程度のリスクしかとれませんでした。
フェーズド・イノベーション・アワード(R21/R33)では、最初の2年間はR21と同じなのですが、あらかじめ2年後に達成可能な中間到達点(マイルストーン)をNIHと合意して設定しておき、マイルストーンを達成すれば(ハイリスクのアイデアがなんとかうまく機能しそうだという予備データが得られれば)新たに申請書を書くことなく、大きな予算のつく3年間のR33フェーズに移行できるという仕組みです。
将来大きなインパクトを生み出す可能性のあるクールなアイデアを、予備データがほとんどないような非常に初期の段階からサポートし、NIHがマイルストーンでプロジェクトをガイドしていくのがR21/R33の肝です。総予算の限られたなか、できるだけイノベーションを推進したいNIHの工夫としては期待できるものの一つではないでしょうか。
Phased Innovation Awards (R21/R33)
Innovation grants involve a high degree of risk, innovation, and novelty with some promise for improving vaccine development. Although there is no requirement for preliminary data, strong scientific rationale is advisable.
Awarded projects will first be tested in milestone-driven exploratory/feasibility "proof of concept" studies (R21 phase); and then, if eligible, will be reviewed for the expanded development (R33 phase) award without the need to submit an additional grant application. The phased R21/R33 mechanism offers the potentially successful investigator the opportunity to devote full attention to the research project without the burden of additional grant writing for continued support, and will permit promising research to continue with no lapse in funding.