スピーチが重要な仕事の一つである政治家は、プレゼンテーションの名手であることが要求されます。ボブウッドワードの「攻撃計画ーブッシュのイラク戦争ー」で、イラク戦争を始める直前のState of the Union Address演説のリハーサルをしているブッシュ大統領をまえにして、大統領専属スピーチライターのガーソンはつぎのように回想しています。
演説の予行演習をやるのは、その言葉を最初に口にしたときの気持ちを経験するためだというのを、ガーソンは承知していた。そうすれば、2度目には勢いをつけられるようになり、3度目にはその言葉だけでなく自分自身も制御できるようになる。
(Gerson knew that one of the reasons to practice a speech was so the president could experience the emotions of the words the first time. Then, on second practice, he could drive through them, and on the third control them and himself.)
つまり3回のリハーサルの目的はそれぞれ:
1回目:言葉を口にすれば、それは聴衆だけでなく自分にも作用します。まず自分の発した言葉に対する感情の揺れを経験します。
2回目:感情に押し切られないように勢いをつけます。
3回目:平常心で言葉を発することができるように。
スピーチのプロフェッショナルの米国大統領は3回で言葉と自分とが制御できるようになるのでしょうが、一般にはそれ以上の予行演習が必要で、3回というよりは3段階のフェーズがスピーチ/プレゼンテーションの予行演習にはあると理解した方がよいでしょう。