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ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。
楽天社長の三木谷浩史氏の書いた「たかが英語! Englishnization」。

Freakonomicsファンの私としては、興味はUnintended Consequences

楽天のグローバル戦略目的として始められた英語社内公用語化「Englishnization」ですが、ポジティブなUnintended Consequencesは:

①「有名」ハーバードビジネススクールで「RakutenのEnglishnization」が非英語圏の企業がグローバル化する一例として、ケース・スタディーに使われた。そのケースは2011年のハーバードビジネススクールで最もよく勉強された課題となった。2011年以降のハーバードビジネススクールの卒業生の大半は楽天をよく知ることとなる。

②「社内求心力の上昇」全員参加で一丸となって取り組む課題があるで、社内で正のモーメンタムができる。

③「社内評価の相対化」英語力は楽天に入社できるレベルの人なら皆勉強すれば努力に応じて上がる。これに反して、仕事の成果は運や上司との人間関係に左右され、いくら努力してもマイナスとなることされある。自分である程度コントロールできる第2の評価軸を導入することは、社内の「閉塞感」を緩和する。

しかし、これらがUnintended Consequencesではなく、三木谷氏の想定通りなのかもしれない。
國澤 純 先生(東京大学医科学研究所・炎症免疫学分野・講師)に大学院医学セミナーでのレクチャーをしていただきました。

タイトルは:
Lipids and vitamins in the maintenance of immunological homeostasis in the intestine

國澤 純 先生は東京大学医科学研究所・所長 清野 宏 教授のラボの講師を務め、日本の粘膜免疫学の分野での新進気鋭の若手研究者です。食物や腸内細菌と粘膜免疫の関係など、食・ビタミンの科学とハードコアな免疫学をつなぐ新境地をひらくお話しをしていただきました。学生・教官の方々の多数のご参加をいただき、盛況のうちに終了しました。

また、英語教育の一貫として、 演者:國澤先生(カリフォルニア大学バークレー校留学経験あり)には英語でレクチャーをしていただきました。さらに、レクチャーに先立ちホストの島岡が「英語プレゼンテーション上達のための3分間講義」を行いました。


國澤先生による英語でのご講演「Lipids and vitamins in the maintenance of immunological homeostasis in the intestine」
大学院セミナー2


島岡の「英語プレゼンテーション上達のための3分間講義」
大学院特別セミナー1



國澤先生のセミナーの前座で行いました島岡の3分間英語セミナーのスライドです。






テーマ:語学の勉強 - ジャンル:学問・文化・芸術

5号館のつぶやきのstochinaiさんに「研究者の仕事術」に引き続き、「研究者の英語術」の書評をいただきました。ありがとうございます。

この本では、そうしたいわゆる「論文の書き方」のすべてを指南するという、書き手にとっても読み手にとっても労多く得るものが少ないものになることを避け、論文に関連したものとしてはもっとも重要なアブストラクトとカバーレターの書き方だけに絞り、それ以外の研究生活関連のものとして、外国人研究者に送るメールの書き方、英語でのプレゼンテーション原稿の作り方、そして海外での就職の際には必須となる推薦状と履歴書(CV、レジュメ)の書き方などを実践的に紹介しています。
5号館のつぶやき:島岡要、J.A.Moore著 「研究者の英語術」


ご指摘のように「研究者の英語術」は単なる”英作文”ではなく、論文や研究者に必要なビジネス文書のビルディング・ブロックである”英文パラグラフ・ライティング”を実践的に解説しています。

この中で推薦状だけがちょっと異色ですが、私は推薦状を書く時にはしばしば被推薦者の研究者にどんなことを書いてもらいたいかを書いた自薦状を送ってもらい、それを参考に推薦状を書きます。若い研究者の方々ももしも誰かに推薦状を書いてもらいたいならば、どういうことを書いてもらいたいのかという自薦状を「参考書類」として推薦を依頼する方に送るのが礼儀でありまた効率的でもあると思いますので、そういう意味ではここに推薦状の書き方があるのは、大いに納得してしまいました。
5号館のつぶやき:島岡要、J.A.Moore著 「研究者の英語術」


アカデミア用の英文推薦状に関するテキストブックは和書・洋書ともあまりありせん。英文推薦状のマニュアルはあまり需要がないからかもしれませんが、stochinaiが書かれているように、推薦状を依頼する際にその”参考書類”としての自薦状を英語で書くためのマニュアルは一部では非常に必要とされているニッチなトピックであると考えました。


「隠しメッセージ」

最後に言わずもがなですが、この本に込められた「隠しメッセージ」についても触れておきましょう(笑)。それは、たとえ「バーバードでも通用」している島岡さんと言えども、こうした「英語を書く本」の執筆はひとりでやり抜いていないことを見てもわかるように、正式な英語の文章の最後の仕上げは Native speaker さらには Native writer の助けを借りるべきだということだと思います。

 さすがに島岡さんくらいになると必要ないのかもしれませんが、私たちは今でも英語論文は最終バージョンができあがったら Native の英文校閲者に査読してもらって訂正したものを投稿しています。もちろん、日常的なメールやCVなどまで校閲してもらう人は少ないかもしれませんが、我々のような英語を話さない言語圏の人間の英語力はその程度くらいまで上達すれば良いのだという「あきらめ」も、また必要な「英語術」なのかもしれません。
5号館のつぶやき:島岡要、J.A.Moore著 「研究者の英語術」



私は投稿論文とグラントの申請書は「研究者の英語術」共著者であるジョーの提供する有料のサービスを利用して、文法や表現をチェックしポリッシュしてもらっています。stochinaiのおっしゃる:

我々のような英語を話さない言語圏の人間の英語力はその程度くらいまで上達すれば良いのだという「あきらめ」も、また必要な「英語術」なのかもしれません


にはまったく同意いたします。「研究者の英語術」のはじめにで書いたメッセージが:

「流暢な英語が話せるようになる」という希望を捨てる勇気、と「機能的な英文が書けるようになる」という希望をもつ勇気


でした。自力で「機能的な英文が書ける」ようになることが目標であり、「流暢な英文」を書く必要があるときにはネイティブ・スピーカーの助けを借りればよいのです。したがって、「流暢な英語が話せるようになる」という希望だけでなく、自力で「流暢な英文が書けるようになる」という希望もとりあえず捨てて、現実的にそのためのリソースを別のアクティビティーに割り振ることを考えてもいいのではないのでしょうか。そう考えれば英語コンプレックスがあったとしても、ずいぶん楽になるはずです。

stochinaiさん、書評ありがとうございました。


追記:「人生の道の駅 失敗から発見、そして自信へ」のつぐみさんにも書評をいただきました。

研究者の英語術を読みました。まずは、アブストラクトの書き方までと、プレゼンテーションの作り方について読みました。.......英語に限らず日本語での論文、プレゼン準備にも多く役立ちます。
人生の道の駅 失敗から発見、そして自信へ: 研究者の英語術を読んだ感想 その1



「研究者の英語術」ではメッセージをわかりやすく伝える文章を書くためのフレーム・ワークについて解説しています。つぐみさんが書評で書かれているように、このフレーム・ワークは英文ライティングだけでなく、日本語での論文やプレゼンテーションに役立つと考えています。

つぐみさん、書評ありがとうございました。


テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術

ー研究者は英語の学習時間をライティングにより多く割くべきー

研究者の英語術グローバル化した世界で英語は”共通のコミュニケーションのプラットフォーム”としてますます重要性を増していくでしょう。英会話ができるようになることが、これからは必要不可欠になると提唱するスクールもあり、多くの時間とお金を英会話につぎ込んでいる研究者もいるのではないでしょうか。

しかし、主として日本を仕事の場として活躍する研究者や学生にとって必要な英語でのコミュニケーションの形態に優勢順位をつけるとすれば、英会話がトップに来るのでしょうか。英語の勉強のための貴重な時間とお金の大部分を英会話学習にかけていいのでしょうか。

ところで、一般的に英会話を学ぶモチベーションのひとつに、街で外国人に道を聞かれた時にすらすら答えたいというものがありますが、グローバル化が進んでも、街で英語を話す機会が突然増えるわけではありません。しかし、インターネットの恩恵で、メールやテキストを通じて英語でコミュニケーションをする頻度は、グローバル化とともに、今後急速に増えるでしょう。

したがって、英会話や口頭での英語コミュニケーション中心の学習スタイルを再考し、”研究者は英語の学習時間をライティングにより多く割くべき”というのが、新刊「研究者の英語術」のメイン・メッセージです。この本は、私が論文やグラントの英語表現のエディティングをいつもお願いしているJoseph A.Moore氏との共著です。

序章「ひとりで学ぶ英語の心得」から始まり、相手に伝わる”機能的な”パラグラフ・ライティングの実践を全体を俯瞰するテーマとして、第1章:アブストラクトの書き方、第2章:カバーレター、第3章:英文メール術、第4章:プレゼンテーションの読み原稿作成の極意、第5章:強い英文推薦状の書き方、第6章:英語ライティング上達のための「自分語り」CVとレジメの書き方、と研究者や学生が日常の仕事の中で必要な英語ライティング・スキルを高めていくための指針が具体例をあげて解説しています。

羊土社のサイトもぜひご覧下さい。

序章 ひとりで学ぶ英語の心得
英語は読めるが話せない悩み
英語の読み書きは国語の能力で,話すのは体育の能力
体育の能力である同時性・双方向性・即興性は実践でしか学べない
本を読んで一人で勉強するならば,それに適した英語コミュニケーション力にフォーカスする
これからは文書での英語のコミュニケーションが重要になってくる
研究者はまず文章による英語のコミュニケーションにプライオリティーを置くのが効率的
英語の論理的思考の習得にはパラグラフ・ライティングが効果的

第1章 アブストラクトの書き方

研究者のすべての英語ライティングの基礎
どうしてアブストラクトのトレーニングが重要なのか?

* アブストラクトを書く力は英語ライティング・コミュニケーションの基礎
* 第一印象が運命を決める
* 研究者の仕事の成果はアブストラクトとして世界に伝わる
* 論文のアブストラクトは通常最後に書く
* アブストラクトを書くことで理解が深まる
* アブストラクトを最初に書くという修行
* 優れたアブストラクトを書くために,知っておくべきたった1つのこと
* セルフ・エディティング能力を育てる
* アブストラクトに書くべき3つのエレメント
* 優れたアブストラクトを書くための具体的な心得

実践編 優れたアブストラクトへの道のり

* 例1:名作アブストラクト
* 不完全な第1稿を書くのが,優れたアブストラクトへの第一歩
* 快適に第1稿を書き始めるためのフレーム・ワーク
* つまらずに第1稿の下準備をするためには正解ではなく納得解を
* シグナルを使って,センテンスに有機的なつながりをもたせる
* 第 1稿をさらに磨きあげる
* まとめ

便利な実例集

* 実例1:基本に忠実なロジック展開
* 実例2:ストーリーを意識してまとめる
* 実例3:定められたフレーム・ワークに則る

第2章 カバーレター
論文の重要性を訴える考え方を身に付ける
エディターを説得し,投稿論文を査読にまわすための強いカバーレターの書き方

* カバーレターの役割とは
* 論文の重要性をいかに語るか
* カバーレターのフレーム・ワーク

実践編 カバーレターの実際

* 例1:Science へ投稿したときの実際のカバーレター
* 例2:FASEB J へ投稿したときの実際のカバーレター
* 例3:The Jounal of Immunology へ投稿したときのカバーレター
* まとめ

カバーレターでよく使われる言いまわしの実例集

* 論文がオリジナルであるとの宣言の例文 (二重投稿していないことの宣言など)
* 適切なレビュアーの示唆や,不適切なレビュアーを除外する依頼

第3章 英文メール術
ライティング・スキルを日々鍛える
伝わるメールを書いて,英語ライティング・スキルを高める

* あなたのメールが正しく読まれているとは限らない
* 下手な英語を話すことは許されても, 下手な英語を書くことは許されにくい
* メール・ライティングの心得はアブストラクト・ライティングの基本と同じ

実践編 具体的な英文メール・ライティングの技術

* あなたのメールの後半は読まれていない
* メールでは結論を最初にもってくる
* 件名欄を有効に使う
* 読ませるメールとは(岡田さんのメールを書き直す)
* 読みやすいメールを書く3つのテクニック
* リストを有効に使用して浜田さんのメールを書き直す
* オープニングとクロージング
* こんなときはメールを使ってはいけない
* まとめ

伝わるメールの実例

* ジョブ・アプリケーションレター
* リクエスティング・レター

第4章 プレゼンテーションの極意

ロジックにより説得する表現を磨く
成功の鍵を握るショーの下準備

* 十分な下準備をするという王道を歩む
* 優れた英語のプレゼンテーションはトランスクリプトを用意することから始まる
* トランスクリプト作成には二重のベネフィットがある

実践編 スライド各場面でのトランスクリプトの要点と実例
ソーシャルな部分のトランスクリプト

* #1:プレゼンテーションに入る前のスモール・トーク
* #2:話題を変えるときのフレーズ
* #3:共同研究者やスポンサーへの謝辞
* #4:質疑応答の場面でのフレーズ

サイエンスの部分のトランスクリプト

* スライド1「タイトルスライド」の機能とポイント
* スライド2「テイクホームメッセージ」は最も重要なスライド
* スライド3~4「バックグラウンド」で背景,問題点を示す
* スライド5~8「データ・ソリューション:解決法 or 答え」
* スライド9「まとめ」
* スライド10「謝辞」
* まとめ

あなたがホストの場合の心得と演者紹介の実例

* イントロダクションにおける先入観・必然性・共感
* フォーマルな場面でのホストによるイントロダクションの例
* インフォーマルな場面でのホストによるイントロダクションの例

第5章 推薦状
ポジティブな表現を磨く
用紙2枚分の説得力のある強い英文推薦状を書く

* 推薦状を書くのがもともと得意な人などいない
* 推薦状を書く際に,どこでつまずくのか
* 推薦状の重要性
* 推薦状の現状:ネガティブな推薦状はなくなっていく
* 人の長所を見つけて,世間に売り込む力を伸ばす
* 強い推薦状とは情熱,情熱とはとりあえず分量
* 強い推薦状を書くための5つの心得
* 強い推薦状を書くためのフレーム・ワーク

実践編 強い英文推薦状の書き方

* 職場ロゴの入ったヘッダーを準備する
* パート1:イントロダクション(自分が推薦者として適切であることのアピール)
* パート2:被推薦者の業績とプロフェッショナルとしての成長をストーリーで語る
* パート3:人間的魅力について語る
* パート4:まとめと締めくくり
* まとめ

業績と成長を語るストーリー(3幕構成)の実例

第6章 CV,レジメ
自己PRとアクション・スタイルを上達させる
英語ライティング上達のための「自分語り」

* CVとレジメ
* CV とレジメを英語ライティングのトレーニングの場として使う

実践編-1 CVの具体例

* CVのパーツ一覧
* Personal and contact information
* Education and Professional Experience
* Committee Service, etc.
* Funding Information
* Report of Teaching and Training
* Invited Presentations
* Bibliography
* 特許
* Narrative Report

実践編-2 レジメの具体例

* レジメで学ぶアクション・スタイル
* トップ
* 1枚目の上3分の1
* Education
* Professional Experience
* 発表論文リスト
* 専門技術・スキル
* 照会先
* まとめ

コラム
セルフ・エディティングについての補足
カバーレターとオンライン投稿
いろいろ頼みたいのは山々だが,要求を詰め込みすぎない
英語でリストを作るうえで注意すべきこと
準備しすぎるという問題
大統領のスピーチ原稿
重要でない話を英語でする難しさ
言及する範囲
米国と欧州における推薦状の違い
CVにはどのフォントとサイズを使えばよいのでしょうか
転職の理由をポジティブに説明する準備を
CVとレジメの差をもっと詳しく
アクション動詞

オハイオ大学の先生から届いたメールのシグニチャーに、素敵なQuoteが使われていたので紹介します。映画カンフー・パンダ(Kung Fu Panda)に登場する亀の師匠(Master Oogway)の言葉です。

Yesterday is history.
Tomorrow is a mystery.
But today is a gift.
That is why it is called the present.

―Master Oogway, Kung Fu Panda







テーマ:ことば - ジャンル:学問・文化・芸術

マルコム・グラッドウェルのアウトライアーズ(OUTLIERS)では、日本(や中国)が米国よりも数学/算数ができる理由のひとつをその言語体系の違いに求めています。

たとえば数の数え方(The number system)を例にとると、日本語では「1”いち”」と「10”じゅう”」を知っていれば、その組み合わせとして「11」を”じゅういち”と呼ぶことの法則を理解するのはそれほど難しくないはずです。しかし英語では「1”One”」と「10”Ten”」を知っていても、「11」を”Ten-One”とは呼ばずに、”eleven”と呼び、そこには簡単に理解できる法則はありません。同様のことが13(Ten-ThreeではなくThirteen)や40(Four-TenではなくForty)など多くの数字にはてはまり、英語での数の数え方の法則がより複雑でかつ不規則であることがわかります。この不規則性が米国の小学生の算数の学力の伸びを難しくしているというのがグラッドウェルの仮説。

Rice Paddies and Math Tests by Malcolm Gladwell:

The number system in English is highly irregular. Not so in China, Japan and Korea. They have a logical counting system. Eleven is ten one. Twelve is ten two. Twenty-four is two ten four, and so on.



ところで「国家生き残り戦略としての日本語リストラ」で、国家の経済戦略としての日本語の「Re-structuring」が提案されていますが、Re-structuringのコストの大きさと、その効果の不確実性を考慮すれば、むしろ「Marketing」で日本語のあまり気づかれていない上記のような”相対的な機能性の良さ”を”売る”戦略もあるのではないでしょうか。


参考エントリー:読みたい本:マルコム グラッドウェルの Outliers: The Story of Success



テーマ:語学の勉強 - ジャンル:学問・文化・芸術

羊土社のウェブ連載「研究者のための英語コミュニケーション」では、英語を話すことよりも、書くことが重要であると主張してきました。時間、資金、精神力・体力なのどリソースが無限にあるのならば英語を話すことと書くことの両方に磨きをかけることができますが、リソースに限りがあるのならばプライオリティーを決めなければなりません。

そういう前提のもとで、研究者は、英語を話すことを磨くことに比較して、独学の効く英語を書く能力を磨くことにまず専念したほうがトータルな「仕事力」を高める上では効率がよいというのが、私の考えです。

また、英語を話すこと・英語を書くこといづれにせよ、上達のための最大のドライビング・フォースは「緊急性」と「具体性」です。将来的にいつか役立てるために英語のスキルを高めておくというのでは「緊急性」も「具体性」もありません。しかし、一ヶ月後に英語のスピーチをしなければならないとか、2週間後に英語の申請書を提出しなければならないという状況には「緊急性」と「具体性」があります。

「緊急性」と「具体性」を兼ね備えた英語ライティングのトレーニングの場として適したものに、英文メールを書くということがあげられます。メールではある期日までに(緊急性)、あるメッセージを伝えなければなりません(具体性)。例えば、英語でメールを返信するために数年かけて英語力を高め、十分に準備してから返信するわけにはいきません。今ある力を駆使して、今日(もしくは明日までに)返信しなければなりません。上手い英語をめざすのではなく、伝わる機能的な英語を目指さなければなりません。

羊土社のウェブ連載「研究者のための英語コミュニケーション」第5回「英文メールの書き方-2」がアップされました。

あなたは自分のメールの後半が読まれていない事実を知っていますか?....メールで数回やりとりをしていると,前回のメールで自分が詳しく書いたはずの事項を,相手がまるで初めてのことのように質問してくることを経験したことはありませんか.メールの全文がいつも読まれているわけではないのです.とくに後半に書いたことは全く読まれない(スルーされる)と考えた方がよい場合が多いのです.私自身も忙しい時には,長いメールは最後まで読まないことがよくあります(*)....



「伝わる英文メール・ライティングのトレーニング」を具体例をあげて解説していますので、どうぞこちらをご覧ください。


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(*)追記:コメントをくださったボストン「プロ研究者への道」のKayさんも、メールの後半は読まないことがよくあるとご自分のブログで告白されています。





羊土社ウェブ連載中の「研究者のための英語コミュニケーション」では”グローバル化の進んだ今こそ研究者は英語ライティングの学習に時間をかけることが重要である”という主旨のもと、第1から3回では英文アブストラクトの書き方を、そして第4回目からは英文メールの書き方を解説しています。

このウェブ連載の第1回で,英語ライティングに重点を置いた英語学習法を推す根拠として,英語を書く(ライティングでのコミュニケーション)能力は,英語を話す(口頭コミュニケーション)能力に比べて独学で磨くことにより適している,そしてライティングでのコミュニケーションが今後のグローバル化にともないますます重要になってくることを挙げました.

ここでもうひとつライティングを真剣に学ばなければならない重要な理由を挙げますと,米国では,“話し言葉としての流暢でない英語”(とくにアクセントや発音)に対してはかなり許容度が高いのですが,“書き言葉としての流暢でない英語”に関しては許容度が低いという背景があるからなのです

第4回 英文メールの書き方①
~伝わるメールを書いて,英語ライティング・スキルを高める



この話し言葉と書き言葉に対する許容度の差は、日本語の下手な外国人を例に考えてみると実感しやすいかもしれません。

例えば、見知らぬ外国人がカタコトの日本語と身振り手振りであなたにメッセージを伝えようとしている場合には、仕事中でも何とか話しを聞いてやろうという気持ちになることも多いでしょう。

しかし、見知らぬ相手から、カタコトの日本語で書かれたメールを仕事中に受け取った場合に、どれだけの人がそのメールの”真意の解読”に時間を割くでしょうか。

このような背景を踏まえて、「研究者のための英語コミュニケーション」の連載では読まれる・伝わる英文メールの書き方を数回に分けて解説していきます。詳細はどうぞこちらをご覧ください。



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テーマ:語学の勉強 - ジャンル:学問・文化・芸術

米国のアカデミアの研究者が、特に大きなストレスを感じる月が年に3回あります。それは、1月、5月、9月です。これは政府の大型研究費申請書R01グラントの締め切りが2月5日、6月5日、10月5日であるからです。自分を含めスタッフ全員の給料とすべての研究費を外部資金から調達することを要求される米国の主要大学の場合には、グラントの合否は死活問題です。私はアイデアや予備実験、共同研究者との交渉など通常1年以上かけて下準備しますが、締め切り2ヶ月前あたりから強いストレスがかかりはじめ、締め切り前1ヶ月はグラントのことが全く頭から離れない状態になります。

現在私はそのストレスのまっただ中にいるわけです。R01グラントはシングルスペース25ページのサイエンスに関する部分に、予算・設備・スタッフの構成などを含めると100ページ程度になります。頭の中にある漠然としたサイエンスのアイデアを、25ページの文書にして、向こう5年間このプロジェクトに自分の仕事人生の一部(%エフォート)を捧げますと宣言するに至る第1ドラフトを書き上げるまでの生みの苦しみが最も苦しいところで、研究者は毎回この苦しみに正面から向き合わねばなりません。

グラント・ライティングに限らず、目の前の白紙に自分のアイデアを書いて、人にわかってもらえるようなメッセージに落とし込むという作業は、程度の差はありますが、つねに創造的ですが、そしてつねに生みの苦しみをともないます。それは英文アブストラクトを書く場合にも言えることです。

羊土社のウェブ連載「研究者のためのひとりで学べる英語コミュニケーション」第3回「第3回 アブストラクトの書き方③~【実践編】優れたアブストラクトへの道のり」では、第1ドラフトを書き上げる「生みの苦しみ」を少しでも軽減するためのフレームワークを実例を引いて提唱しています。


アブストラクトを完成させる過程で人は2度の「生みの苦しみ」に向き合わなくてはなりません.無から第1ドラフトを生み出す過程が「最初の生みの苦しみ」であり,第1ドラフトをセルフ・エディティングして人に見せられるレベルにまで磨き上げる過程が「第2の生みの苦しみ」です.

―「羊土社:研究者のためのひとりで学べる英語コミュニケーション」―


「最初の生みの苦しみ」を軽減するために,ここで私案ではありますが,「快適に第1ドラフトを書き始めるためのフレームワーク」を提案します.このフレームワークに乗っ取って,とにかく第1ドラフトを仕上げましょう.第1ドラフトは同じような表現を繰り返し使ってしまうことなど無駄な部分や,また逆に言い足りない部分もあると思いますが,それらはのちに訂正しますので,気にせずに書き上げましょう.

―「羊土社:研究者のためのひとりで学べる英語コミュニケーション」―



詳細はこちらをご覧ください。



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失敗するのは誰でも怖いものです。「負け組」の烙印を捺されてしまうのではないかと不安になってしまいます。そんなときにお奨めの本が「失敗の本:The Little Book of Failure」です。このなかで私が一番勇気づけられた言葉に:

”やる価値のあることは,まずは失敗してみる価値がある”
”If a thing is worth doing, it's worth doing badly at least at the beginning. ”


があります。

羊土社連載中の「ハーバードでも通用した、ひとりで学べる研究者のための英語コニュニケーション」第2回で述べていますように、英文を書く際にもこれと同じことが言えると思います。

よい文章を書く秘訣を知っていますか?良い文章というのは無から生まれるものではありません.白紙のうえにいきなりよい文章が書かれるわけではないのです.良い文章は,悪い文章から生まれるのです.良い文章とは,悪い文章を何度も書き直すことによって初めて生まれるのです.良い文章を書く秘訣とは,まず悪い文章を書くこと.そして,それを何度も校正することなのです


最初から良い英文を書こうとすると、全く筆が進まず何時間も白紙とにらめっこしていたり、つい既存の文章からコピー&ペーストしてしまいたい誘惑に駆られてしまいます。私の場合には「最初から良い英文を書く」ことはできないのだと諦めることにしています。むしろ勝負はその後にあるのです。

つまり、レベルは低くてもよいのでまず第1稿を書いてしまう。そしてそれを何度も書き直す。セルフ・エディティングしているうちに集中力が高まり、”創造性のスイッチが入る魔法の瞬間”が一瞬ですがやってくるものなのです(参照:”クリエイティビティーが枯渇するという恐怖”)。

ライティングとは本質的には書くことというよりも、考えることです。”創造的”な思考へ向けての”助走”をするためにも、まずは失敗を承知で第1稿を書き上げる。その後セルフ・エディティングを繰り返し、第5稿、第10稿...と”スイッチが入る”まで諦めずに書き直すことが、英語ライティングの力をつける秘訣だと思います。

詳しくは「ひとりで学べる研究者のための英語コニュニケーション:第2回アブストラクトの書き方②~優れたアブストラクトを書くために,知っておくべきたった一つのこと」をご覧ください。


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プロフィール

Motomu Shimaoka

Author:Motomu Shimaoka
島岡 要:三重大学医学部・分子病態学講座教授 10年余り麻酔科医として大学病院などに勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘する. 2011年に帰国、大阪府立成人病センター麻酔科・副部長をつとめ、臨床麻酔のできる基礎医学研究者を自称する. 専門は免疫学・細胞接着. また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)がある. (Photo: Liza Green@Harvard Focus)

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