鳩山首相「定昇困難」「内部留保」発言
連合内からも批判の声
“自公政権でも賃上げ要請したのに”
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今たたかわれている春闘で注目される「定期昇給」をめぐる鳩山由紀夫首相の発言に対し、民主党最大の支援組織である連合内からも「労働者の気持ちを分かっていない」との声があがっています。
「連合のお考えは理解できるが、現在の経済状況はそう簡単ではない。経営者の皆さんにとって、簡単に昇給できる状況ではないと思う」
鳩山首相は1月26日夜、連合が定期昇給確保を求めていることについて記者の質問に、こう答えました。
定期昇給(定昇)とは勤続年数などに応じて給料が上がること。「賃金カーブ」ともいわれ、労働者と家族の人生設計の基盤となっているものです。
経団連に「理解」
ところが、日本経団連は1月に出した経営労働政策委員会報告で「総額人件費の抑制」を理由に、ベースアップ(賃上げ)どころか「定昇の凍結もありうる」と賃下げをねらう異常な姿勢を打ち出しました。首相発言はこの経団連の立場に理解を示したと受け取れるものでした。
財界の姿勢に対し連合は、鳩山発言と同じ日の朝に行われた経団連とのトップ会談で古賀伸明会長が「定期昇給の確保・賃金カーブ維持は最低限の方針であり、ここに手を付けることは労使関係を揺るがすことになる」と強調したばかりでした。
鳩山発言を聞いた連合加盟の産別組合の幹部は「耳を疑った。経団連とのトップ会談当日にする発言か。労働者の気持ちを分かっていない。KY(空気が読めない)にもほどがある」と憤りを抑えきれない様子です。
連合は翌27日、「首相が定期昇給を軽視するかのような発言をされたとすれば残念」と官邸に伝えました。官邸からは「懸念は理解した。与党議員の質問で首相に発言の真意をただす」と返答。さっそく同日の参院予算委員会で辻泰弘議員の質問に首相が「すでに経営側が主張していることを単に紹介しただけ」「自分の立場からどうこう言う立場ではない」と弁明しました。
しかし、2008、09年の春闘では当時の福田康夫、麻生太郎首相が経団連の御手洗冨士夫会長を官邸に呼び、内需拡大のために賃上げを直接要請する異例の対応を行いました。産別幹部の一人は「介入しないという立場では弱い。自公政権でも経団連に賃上げ要請をしていたのに」と不満を漏らします。
企業責任問わず
定期昇給問題だけではありません。首相は、大企業の内部留保の還元を求める質問に「企業がそれぞれの状況に応じて経営判断を下すべきだ」(2日)と、自公政権の麻生首相と同じ言い回しで、大企業の社会的責任を問わない答弁に終始。「大企業のぼろもうけを労働者と下請け企業に還元せよ」という世論に背を向けています。
前出の産別幹部はこう語ります。「経済の底割れに歯止めをかけるためにも雇用と賃金を守ることが不可欠であり、政府もその立場にたって行動すべきだ。政治とカネの問題でけじめをつけることも含めて、それができないのなら参院選で厳しい状況になりかねないことを考えるべきだ」と話しています。(深山直人)
(出所:日本共産党HP 2010年2月14日(日)「しんぶん赤旗」)
大企業、巨額の内部留保
従業員1人あたり→トヨタ4178万円、NTTドコモ1億8755万円
全労連などが5000社を調査
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大企業約5000社(資本金10億円以上、金融関係をのぞく)は世界的な不況下で売り上げも利益も減らすなかでも、巨額の「内部留保」をため込んでいることが、全労連と労働運動総合研究所の調査で明らかになりました。労働者と中小企業が雇用と経営の苦境に立たされるなか、大企業だけがひとり肥え太る異常な姿を示しています。
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財務省の法人企業統計(08年度決算)や有価証券報告書をもとに算出し、『2010年国民春闘白書』として発表したものです。
白書は、賃金や下請け単価の抑制、非正規雇用の拡大などに加えて、国民所得減で設備投資も増えず、不要不急の資金がたまる結果になっていると分析しています。
白書によると、トヨタは内部留保を5306億円減らしたものの、それでも従業員1人あたり4178万円にものぼります。在庫調整や人減らしで総資産が減少したため、逆に内部留保が占める割合は上昇しています。
全労連・労働総研では「大企業に社会的責任を果たさせ、内部留保の社会的還元で、内需拡大・生活充実の経済へ転換する第一歩とすることが重要」と強調しています。
雇用確保・賃上げ 体力十分
『2010年国民春闘白書』から、主要企業の内部留保を見ると―。
日産自動車は国内外で2万人の人員削減をすすめていますが、1人あたり2372万円もため込んでいます。
ソニーも内外で1万8000人(正規8000人)を削減しますが、127億円増やし1人あたり2071万円にのぼっています。
「非正規切り」で批判をあびた自動車や電機各社は内部留保を減らしているものの、巨額のため込みに変わりはありません。
11万人リストラをすすめるNTTグループでは、NTTドコモが1人当たり1億8755万円と断トツ。ゼネコンでは、建設不況でも内部留保を増やしている清水建設をはじめ各社が大きなため込みを維持しています。
ワンマン運転化をすすめている東京地下鉄は、1人あたり3284万円と高水準です。
持ち株会社では、りそなホールディングスが1人当たり1億3663万円など、金融持ち株各社は巨額のため込みを抱えています。
今春闘で大企業は、定期昇給の凍結までいい出していますが、雇用を守り、賃上げもできる十分な体力があることを示しています。
内部留保について財界・大企業は、「工場など資産に形を変えており取り崩せない」などと主張しています。
これに対して白書では、内部留保は預金など手元資金として保有したり、株式・公社債など換金性が高い証券投資に振り向けており取り崩すことは可能だと指摘。「内需拡大・生活充実の経済へ転換するために、内部留保を社会に還元することは大企業の社会的責任」だと強調しています。
◇
『2010年国民春闘白書』は、内部留保のほか経済、賃金、労働時間、雇用、社会保障、政治など33項目にわたって活用できる豊富なデータや課題などをコンパクトに掲載。定価1000円。発行・学習の友社03(5842)5641。
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内部留保 利益から税金、株主配当など社外流出分を引いた残りのもうけをため込んだもの。国民春闘白書では、利益剰余金、資本剰余金、引当金などを総計しています。
(出所:日本共産党HP 2010年1月13日(水)「しんぶん赤旗」)
けいざいそもそも
内部留保ってなに
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巨額にのぼる大企業の「内部留保」の活用が、雇用や下請けの営業を守るための「体力」として期待されています。この「内部留保」とはどんなものなのでしょうか。(吉川方人)
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社内に残った利益
財務省の「法人企業統計年報」の担当者は、「『法人企業統計年報』では内部留保を『当期純利益』から『配当金』を差し引いたものと定義しています」といいます。
つまり、それぞれの期間に企業が稼いだ利益から株主への配当金を除いたものです。配当金は社外に流出しますが、それ以外の部分の利益は社内に残されます。これは、利益の面から見た内部留保の定義です。
また、「法人企業統計年報」では、資金調達の面からみた内部留保の定義もしています。
財務省の担当者は、「資金調達には、株式、社債などの発行で外部からお金を調達する外部調達と、社内からの資金調達があります。内部留保は社内調達資金に分類されています」といいます。
狭義と広義がある
資金調達の面から見た場合、財務省の内部留保の定義は、利益剰余金、その他資本剰余金、引当金、特別法上の準備金、土地の再評価差額金、金融商品に係る時価評価差額金、自己株式の増減額、その他の負債(未払金等)の増減額の合計とされています。
このうち、利益剰余金は、繰越利益などを積み上げたもので「狭義の内部留保」といわれます。その他、実際には支出していないのに隠し利益として企業内に蓄えられている引当金や準備金などを加えたものが「広義の内部留保」といわれます。企業の決算で貸借対照表上のこれらの項目を合計すれば、内部留保の積み上げ額が計算できます。
大企業ほど大きい
内部留保は、大企業ほど大きく積み上がっています。「法人企業統計」によると、内部留保の大きな部分を占める利益剰余金は、資本金十億円以上の大企業製造業で、十年間におよそ三倍にも膨らんでいます。これに対して、資本金二百万円未満の小・零細企業では、一時マイナスにまで落ち込み、回復しても、蓄積をすべて使い尽くしてしまった状態が続いています。
ところが、大企業は内部留保を取り崩すと経営が立ち行かなくなるなどと主張しています。それについて、会計学が専門の角瀬保雄法政大学名誉教授は次のように指摘します。
「日本の大企業は、内部留保を崩したからといって経営困難になるような状態ではありません。キヤノンなどは二〇〇八年十二月期に減収減益といっても、利益剰余金を前年同期に比べ千六百四十一億円も増やしています。雇用を維持する体力は十分にあります。大企業が雇用よりも内部留保のためこみを優先し、企業の買収・合併に使う姿勢を強めていることが問題です」
また、剰余金を取り崩すには、総会決議が必要なので難しいという一部の主張について、こう解説します。
「剰余金は、労働者の賃金を先に支払い、つくりだされた利益から配当を差し引いた残りなので、雇用を維持するために特別な総会決議はいりません」
(出所:日本共産党HP 2009年4月21日(火)「しんぶん赤旗」)
主張
経労委報告
企業の一人勝ちは許されない
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日本経済団体連合会(日本経団連)が、企業側の春闘対策方針である「経営労働政策委員会報告」を発表しました。ことしのテーマは「危機を克服し、新たな成長を切り拓(ひら)く」ですが、危機をどう克服するのか、「報告」からまともな内容は見ることができません。
社会的要請に背いて
日本の経済危機を深刻にしている最大の原因は、賃金の低下や不安定雇用によって生活の土台が崩れ、消費が冷え切っていることにあります。危機の克服にはまず、賃金、雇用の改善を思い切ってすすめ、輸出依存から内需主導の経済に切り替える必要があるという議論が広くおこっています。ことしの春闘は、この方向に向かう契機にすべきです。
「経労委報告」は、こうした社会的な要請に完全に背を向けています。主張の中心は「アジア新興国」をターゲットにした相変わらずの輸出頼みです。そのための国際競争に勝つには「総額人件費管理の徹底」が必要だとして、ベースアップも賞与・一時金も困難だ、厳しいといい、定期昇給の凍結にも踏み込むなど、ひたすら賃下げとの考えが露骨に表れています。
今回の「報告」では「雇用の安定・創出に向けた取り組み」という一章を設けています。「派遣切り」など大企業の無法行為にたいする社会的批判を気にしたとみられますが、内容は国の雇用調整助成金制度を活用して雇用確保に努力し「雪崩」を緩和したという類(たぐい)の、言い訳ばかりです。雇用保険制度の適用拡大など政府頼みの主張を並べるだけです。
非正規雇用の増大についても「報告」は、サービス産業の成長や労働者側の意識の変化などを主な原因にあげています。さすがにそれだけではまずいと思ったか、国際競争の激化で企業の存続をかけて「非正規」を活用せざるをえない側面があったと認めています。しかし「非正規」の多寡を論ずるのは建設的でないとして「雇用は正社員中心に」という要求に応えようという姿勢はありません。
大企業にはありあまるほどの体力があります。企業の内部留保は、この10年間で200兆円から400兆円に異常に増えています。一方、雇用者報酬は1997年から2009年の間に27兆円も減っています。経済の安定した成長のために、大企業はいまこそ巨額の内部留保を、賃金、雇用の改善、社会保障の充実に活用すべきです。内部留保は「会計上の概念」で現金などは手元にはないから「取り崩せない」などとする「報告」の弁明は、社会的責任をわきまえない情けない姿勢です。
国民的なたたかいこそ
政府も「平成21年版労働経済の分析(労働経済白書)」で、企業の利益が株主配当と内部留保の増加に用いられる傾向が強まり、賃金の支払いに向かう部分は大きくなかったと指摘しています。そして、企業が賃金抑制傾向を強め、賃金水準の低い非正規の労働者の活用で抑制したことが「すそ野の広い消費と国内需要を生み出すという点で、大きな障害となった」と分析しています。
賃上げも雇用もかたくなに拒否する姿勢からは危機克服の展望は出てきません。内需主導の経済への転換めざし、大企業に社会的責任を果たさせる国民的な共同のたたかいが重要です。
(出所:日本共産党HP 2010年1月21日(木)「しんぶん赤旗」)
連合内からも批判の声
“自公政権でも賃上げ要請したのに”
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今たたかわれている春闘で注目される「定期昇給」をめぐる鳩山由紀夫首相の発言に対し、民主党最大の支援組織である連合内からも「労働者の気持ちを分かっていない」との声があがっています。
「連合のお考えは理解できるが、現在の経済状況はそう簡単ではない。経営者の皆さんにとって、簡単に昇給できる状況ではないと思う」
鳩山首相は1月26日夜、連合が定期昇給確保を求めていることについて記者の質問に、こう答えました。
定期昇給(定昇)とは勤続年数などに応じて給料が上がること。「賃金カーブ」ともいわれ、労働者と家族の人生設計の基盤となっているものです。
経団連に「理解」
ところが、日本経団連は1月に出した経営労働政策委員会報告で「総額人件費の抑制」を理由に、ベースアップ(賃上げ)どころか「定昇の凍結もありうる」と賃下げをねらう異常な姿勢を打ち出しました。首相発言はこの経団連の立場に理解を示したと受け取れるものでした。
財界の姿勢に対し連合は、鳩山発言と同じ日の朝に行われた経団連とのトップ会談で古賀伸明会長が「定期昇給の確保・賃金カーブ維持は最低限の方針であり、ここに手を付けることは労使関係を揺るがすことになる」と強調したばかりでした。
鳩山発言を聞いた連合加盟の産別組合の幹部は「耳を疑った。経団連とのトップ会談当日にする発言か。労働者の気持ちを分かっていない。KY(空気が読めない)にもほどがある」と憤りを抑えきれない様子です。
連合は翌27日、「首相が定期昇給を軽視するかのような発言をされたとすれば残念」と官邸に伝えました。官邸からは「懸念は理解した。与党議員の質問で首相に発言の真意をただす」と返答。さっそく同日の参院予算委員会で辻泰弘議員の質問に首相が「すでに経営側が主張していることを単に紹介しただけ」「自分の立場からどうこう言う立場ではない」と弁明しました。
しかし、2008、09年の春闘では当時の福田康夫、麻生太郎首相が経団連の御手洗冨士夫会長を官邸に呼び、内需拡大のために賃上げを直接要請する異例の対応を行いました。産別幹部の一人は「介入しないという立場では弱い。自公政権でも経団連に賃上げ要請をしていたのに」と不満を漏らします。
企業責任問わず
定期昇給問題だけではありません。首相は、大企業の内部留保の還元を求める質問に「企業がそれぞれの状況に応じて経営判断を下すべきだ」(2日)と、自公政権の麻生首相と同じ言い回しで、大企業の社会的責任を問わない答弁に終始。「大企業のぼろもうけを労働者と下請け企業に還元せよ」という世論に背を向けています。
前出の産別幹部はこう語ります。「経済の底割れに歯止めをかけるためにも雇用と賃金を守ることが不可欠であり、政府もその立場にたって行動すべきだ。政治とカネの問題でけじめをつけることも含めて、それができないのなら参院選で厳しい状況になりかねないことを考えるべきだ」と話しています。(深山直人)
(出所:日本共産党HP 2010年2月14日(日)「しんぶん赤旗」)
大企業、巨額の内部留保
従業員1人あたり→トヨタ4178万円、NTTドコモ1億8755万円
全労連などが5000社を調査
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大企業約5000社(資本金10億円以上、金融関係をのぞく)は世界的な不況下で売り上げも利益も減らすなかでも、巨額の「内部留保」をため込んでいることが、全労連と労働運動総合研究所の調査で明らかになりました。労働者と中小企業が雇用と経営の苦境に立たされるなか、大企業だけがひとり肥え太る異常な姿を示しています。
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財務省の法人企業統計(08年度決算)や有価証券報告書をもとに算出し、『2010年国民春闘白書』として発表したものです。
白書は、賃金や下請け単価の抑制、非正規雇用の拡大などに加えて、国民所得減で設備投資も増えず、不要不急の資金がたまる結果になっていると分析しています。
白書によると、トヨタは内部留保を5306億円減らしたものの、それでも従業員1人あたり4178万円にものぼります。在庫調整や人減らしで総資産が減少したため、逆に内部留保が占める割合は上昇しています。
全労連・労働総研では「大企業に社会的責任を果たさせ、内部留保の社会的還元で、内需拡大・生活充実の経済へ転換する第一歩とすることが重要」と強調しています。
雇用確保・賃上げ 体力十分
『2010年国民春闘白書』から、主要企業の内部留保を見ると―。
日産自動車は国内外で2万人の人員削減をすすめていますが、1人あたり2372万円もため込んでいます。
ソニーも内外で1万8000人(正規8000人)を削減しますが、127億円増やし1人あたり2071万円にのぼっています。
「非正規切り」で批判をあびた自動車や電機各社は内部留保を減らしているものの、巨額のため込みに変わりはありません。
11万人リストラをすすめるNTTグループでは、NTTドコモが1人当たり1億8755万円と断トツ。ゼネコンでは、建設不況でも内部留保を増やしている清水建設をはじめ各社が大きなため込みを維持しています。
ワンマン運転化をすすめている東京地下鉄は、1人あたり3284万円と高水準です。
持ち株会社では、りそなホールディングスが1人当たり1億3663万円など、金融持ち株各社は巨額のため込みを抱えています。
今春闘で大企業は、定期昇給の凍結までいい出していますが、雇用を守り、賃上げもできる十分な体力があることを示しています。
内部留保について財界・大企業は、「工場など資産に形を変えており取り崩せない」などと主張しています。
これに対して白書では、内部留保は預金など手元資金として保有したり、株式・公社債など換金性が高い証券投資に振り向けており取り崩すことは可能だと指摘。「内需拡大・生活充実の経済へ転換するために、内部留保を社会に還元することは大企業の社会的責任」だと強調しています。
◇
『2010年国民春闘白書』は、内部留保のほか経済、賃金、労働時間、雇用、社会保障、政治など33項目にわたって活用できる豊富なデータや課題などをコンパクトに掲載。定価1000円。発行・学習の友社03(5842)5641。
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内部留保 利益から税金、株主配当など社外流出分を引いた残りのもうけをため込んだもの。国民春闘白書では、利益剰余金、資本剰余金、引当金などを総計しています。
(出所:日本共産党HP 2010年1月13日(水)「しんぶん赤旗」)
けいざいそもそも
内部留保ってなに
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巨額にのぼる大企業の「内部留保」の活用が、雇用や下請けの営業を守るための「体力」として期待されています。この「内部留保」とはどんなものなのでしょうか。(吉川方人)
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社内に残った利益
財務省の「法人企業統計年報」の担当者は、「『法人企業統計年報』では内部留保を『当期純利益』から『配当金』を差し引いたものと定義しています」といいます。
つまり、それぞれの期間に企業が稼いだ利益から株主への配当金を除いたものです。配当金は社外に流出しますが、それ以外の部分の利益は社内に残されます。これは、利益の面から見た内部留保の定義です。
また、「法人企業統計年報」では、資金調達の面からみた内部留保の定義もしています。
財務省の担当者は、「資金調達には、株式、社債などの発行で外部からお金を調達する外部調達と、社内からの資金調達があります。内部留保は社内調達資金に分類されています」といいます。
狭義と広義がある
資金調達の面から見た場合、財務省の内部留保の定義は、利益剰余金、その他資本剰余金、引当金、特別法上の準備金、土地の再評価差額金、金融商品に係る時価評価差額金、自己株式の増減額、その他の負債(未払金等)の増減額の合計とされています。
このうち、利益剰余金は、繰越利益などを積み上げたもので「狭義の内部留保」といわれます。その他、実際には支出していないのに隠し利益として企業内に蓄えられている引当金や準備金などを加えたものが「広義の内部留保」といわれます。企業の決算で貸借対照表上のこれらの項目を合計すれば、内部留保の積み上げ額が計算できます。
大企業ほど大きい
内部留保は、大企業ほど大きく積み上がっています。「法人企業統計」によると、内部留保の大きな部分を占める利益剰余金は、資本金十億円以上の大企業製造業で、十年間におよそ三倍にも膨らんでいます。これに対して、資本金二百万円未満の小・零細企業では、一時マイナスにまで落ち込み、回復しても、蓄積をすべて使い尽くしてしまった状態が続いています。
ところが、大企業は内部留保を取り崩すと経営が立ち行かなくなるなどと主張しています。それについて、会計学が専門の角瀬保雄法政大学名誉教授は次のように指摘します。
「日本の大企業は、内部留保を崩したからといって経営困難になるような状態ではありません。キヤノンなどは二〇〇八年十二月期に減収減益といっても、利益剰余金を前年同期に比べ千六百四十一億円も増やしています。雇用を維持する体力は十分にあります。大企業が雇用よりも内部留保のためこみを優先し、企業の買収・合併に使う姿勢を強めていることが問題です」
また、剰余金を取り崩すには、総会決議が必要なので難しいという一部の主張について、こう解説します。
「剰余金は、労働者の賃金を先に支払い、つくりだされた利益から配当を差し引いた残りなので、雇用を維持するために特別な総会決議はいりません」
(出所:日本共産党HP 2009年4月21日(火)「しんぶん赤旗」)
主張
経労委報告
企業の一人勝ちは許されない
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日本経済団体連合会(日本経団連)が、企業側の春闘対策方針である「経営労働政策委員会報告」を発表しました。ことしのテーマは「危機を克服し、新たな成長を切り拓(ひら)く」ですが、危機をどう克服するのか、「報告」からまともな内容は見ることができません。
社会的要請に背いて
日本の経済危機を深刻にしている最大の原因は、賃金の低下や不安定雇用によって生活の土台が崩れ、消費が冷え切っていることにあります。危機の克服にはまず、賃金、雇用の改善を思い切ってすすめ、輸出依存から内需主導の経済に切り替える必要があるという議論が広くおこっています。ことしの春闘は、この方向に向かう契機にすべきです。
「経労委報告」は、こうした社会的な要請に完全に背を向けています。主張の中心は「アジア新興国」をターゲットにした相変わらずの輸出頼みです。そのための国際競争に勝つには「総額人件費管理の徹底」が必要だとして、ベースアップも賞与・一時金も困難だ、厳しいといい、定期昇給の凍結にも踏み込むなど、ひたすら賃下げとの考えが露骨に表れています。
今回の「報告」では「雇用の安定・創出に向けた取り組み」という一章を設けています。「派遣切り」など大企業の無法行為にたいする社会的批判を気にしたとみられますが、内容は国の雇用調整助成金制度を活用して雇用確保に努力し「雪崩」を緩和したという類(たぐい)の、言い訳ばかりです。雇用保険制度の適用拡大など政府頼みの主張を並べるだけです。
非正規雇用の増大についても「報告」は、サービス産業の成長や労働者側の意識の変化などを主な原因にあげています。さすがにそれだけではまずいと思ったか、国際競争の激化で企業の存続をかけて「非正規」を活用せざるをえない側面があったと認めています。しかし「非正規」の多寡を論ずるのは建設的でないとして「雇用は正社員中心に」という要求に応えようという姿勢はありません。
大企業にはありあまるほどの体力があります。企業の内部留保は、この10年間で200兆円から400兆円に異常に増えています。一方、雇用者報酬は1997年から2009年の間に27兆円も減っています。経済の安定した成長のために、大企業はいまこそ巨額の内部留保を、賃金、雇用の改善、社会保障の充実に活用すべきです。内部留保は「会計上の概念」で現金などは手元にはないから「取り崩せない」などとする「報告」の弁明は、社会的責任をわきまえない情けない姿勢です。
国民的なたたかいこそ
政府も「平成21年版労働経済の分析(労働経済白書)」で、企業の利益が株主配当と内部留保の増加に用いられる傾向が強まり、賃金の支払いに向かう部分は大きくなかったと指摘しています。そして、企業が賃金抑制傾向を強め、賃金水準の低い非正規の労働者の活用で抑制したことが「すそ野の広い消費と国内需要を生み出すという点で、大きな障害となった」と分析しています。
賃上げも雇用もかたくなに拒否する姿勢からは危機克服の展望は出てきません。内需主導の経済への転換めざし、大企業に社会的責任を果たさせる国民的な共同のたたかいが重要です。
(出所:日本共産党HP 2010年1月21日(木)「しんぶん赤旗」)