市田書記局長の代表質問 参院本会議
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日本共産党の市田忠義書記局長が、3日の参院本会議でおこなった代表質問は次の通りです。
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私は日本共産党を代表して鳩山総理に質問します。
小沢氏の疑惑――刑事訴追の有無にかかわらず政治が解明すべき問題
まず、小沢民主党幹事長の政治資金疑惑についてであります。総理は施政方針演説ではこの問題に一切触れませんでしたが、この問題が政治に突きつけているものは一体なんだとお考えですか。
問われているのは、国民の税金でおこなわれている公共事業を食い物にした疑惑にどう立ち向かうかであり、刑事訴追されるかどうかにかかわらず、政治がけっして見逃してはならない問題です。あなたは刑事訴追を受けないなら何をやっても良いという立場なのでしょうか。そうでないなら、検察の捜査を見守るという傍観者的姿勢ではなく、政治的道義的責任の有無を政治の場で解明するために、あなた自身が指導性を発揮すべきではありませんか。
「いのちを守りたい」――脅かされる現実に応えているか
経済危機から、いかに国民の暮らしをまもるか。それが今政治に課せられた最も緊急の課題です。
後期医療をめぐる約束ほごは許されない
総理は「いのちをまもりたい」と何度も繰り返されました。
そこで伺います。総理自身がかつては「姥(うば)捨て山」と言われていた後期高齢者医療制度について、施政方針演説では一言も触れなかったのはなぜですか。
あなたの言葉とは裏腹に、実際にはいのちは一層脅かされています。
いま年金で暮らすお年寄りは、年金から、税金はいうに及ばず介護保険料、国民健康保険料、75歳以上の方は後期高齢者医療保険料を差し引かれ、しかもその額は年々重くなります。
総理は「お年寄りが…安らぎの時間を過ごせる環境を整備する」といわれましたが、これが「安らぎの時間を過ごせる環境」ですか。後期高齢者医療制度の廃止の約束ばかりか、保険料の負担をふやさないという約束まで反故(ほご)にするのは絶対に許されません。答弁を求めます。
世界でも異常に大きい医療費の窓口負担
医療はどうか。あいつぐ医療費の窓口負担の拡大で、日本は、いまでは、「現役世代3割、高齢者1~3割」という世界でも、最も窓口負担の大きい異常な医療制度になってしまいました。その結果、医者にかかれないという「いのちの不安」が広がっています。
日本医師会は「窓口負担の軽減」と「子どもの医療費の無料化」を提唱しましたが、いまや、高すぎる窓口負担の軽減は圧倒的な国民の声であります。総理はその声にこたえるべきではありませんか。
製造業派遣を認めれば使い捨ては続く
労働者のいのちを危機にさらしたのが一昨年暮れから荒れくるった派遣切りでした。派遣切りのなにが国民から厳しく批判されたのか。それは、日本を代表するトヨタやキヤノン、パナソニックといった大企業が、生きた人間を必要なときだけ、安い給料でこきつかって莫大(ばくだい)な利益をあげ、後はモノのように使い捨て、職場からも寮からも追い出して恥じないという、横暴勝手な振る舞いでした。政府は、製造業への派遣を原則禁止するといいながら、常用型についてはその限りではないといいます。
しかし総理、常用型なら大企業の派遣切りは起きないのでしょうか。直接雇用している期間社員でさえクビ切りが横行したのです。製造業への派遣を認める限り、それが何型であっても、必要なときに使い、いらなくなったら投げ捨てる大企業の横暴勝手をとめることはできません。製造業派遣の全面禁止へ決断を求めます。
農林漁業の再生――輸入自由化路線からの決別を
農林漁業と農山漁村の再生は、日本国民の存亡がかかった待ったなしの課題です。
自公政権のもと、この10年間で農林水産予算は約1兆円削減され、国の予算に占める割合も毎年のように引き下げられ昨年は4・9%になりました。ところが鳩山内閣ではさらに4・6%に引き下げられました。これでは、戸別所得補償による農林水産業の再生など絵に描いたモチではありませんか。農業を国の基幹産業に位置づけ、農林水産予算もそれにふさわしく抜本的に増額して、当面、米価下落の現状を改善するため、政府が、生産費を基準とする買い入れをおこなうことを求めます。畜産物価格や野菜・果実などについても、再生産が可能となるよう、必要な価格安定対策を講ずるべきではありませんか。
民主党は、先の総選挙で、日米FTA(自由貿易協定)交渉の促進を公約に掲げ、農業関係者から強い怒りをよびました。交渉の相手、アメリカも、オーストラリアも、農業を除外したFTAなどありえないと再三言明しています。日豪EPA(経済連携協定)交渉をきっぱりと中止し、日米FTA交渉は断念すべきです。総理の答弁を求めます。
日本農業をここまで落ち込ませた最大の原因の一つ、歯止めのない輸入自由化路線を根本から改め、関税の維持・強化をはかること、貿易拡大一辺倒のWTO(世界貿易機関)農業協定を根本から見直し、各国の食料主権を尊重する貿易ルールの確立を求めるものであります。
普天間問題――無法な土地強奪が原点、無条件撤去こそ
つぎに普天間問題と日米関係についてです。
普天間問題の原点はなにか。普天間基地がつくられた場所には、民家も役所も郵便局も墓地もありました。普天間だけではなく沖縄の米軍基地はその多くが、戦時国際法にも反して、銃剣とブルドーザーで米軍に無法に強奪された土地であります。それを、別のものをよこさなかったら返さないというこんな無理無体なことはないではありませんか。下地島だ、いや伊江島だ、徳之島だなどといって、別の土地を差し出して返してもらおうという態度はあまりにも無責任、卑屈な態度とは思いませんか。
政府は答弁につまると「抑止力のためには仕方がない」といいます。しかしアメリカ自身、沖縄にいる海兵隊について、「迅速に、どこへでも、どのような任務にも対応する能力を備えた遠征介入部隊」とのべ、日本防衛のためとは一言もいってはいません。あなたは「侵略力ではない」と昨日の衆院本会議でいわれましたが、年がら年中イラクやアフガニスタンに派遣されている「侵略力」そのものではありませんか。移設条件付きでなく普天間基地の無条件撤去をアメリカに強く迫る決断をするべきであります。総理の答弁を求めます。
日米関係――異常な実態をただちに是正すべきだ
今年は安保条約が改定されて50年目の年であります。総理は「日米同盟の深化」などといいますが、日米関係は一体どうなっているのでしょうか。
まず在日米軍の実態です。アメリカ本国では許されないことが日本では起きています。なんといっても人口密集地、宜野湾市のど真ん中に沖縄の普天間基地はいすわっている。基地の周囲には学校や保育所、病院など公共施設がいっぱい。全国各地で低空飛行訓練も傍若無人にやられている。こんなことは米本国でも、野鳥に悪い影響を与えるとしてやられてはいません。日本国民はアメリカの野鳥以下なのか。こんなことが日本で許される道理はないと思いますがいかがですか。
日米地位協定はどうか。同じ敗戦国のドイツでは、日本と違って必要な時には米軍基地への立ち入りもできます。警察権の行使もできます。演習や訓練では事前の政府の承認も必要になります。なぜ日本ではそれができないのか。こんなことを今後も許すのですか。
そして日本国憲法への介入です。9条改定についての要求が、米政府高官からしばしば公然と出されています。憲法は日本の最高法規であって、それを変える権限を持っているのは日本国民だけではありませんか。今後こういうことは決して許さないという決意を明確に示していただきたい。
安保条約のあるなしにかかわらず、少なくとも今述べた異常な関係はただちに是正されるべきだと考えますがいかがですか。
日本共産党は、こうした異常な日米関係をつくりだしてきた安保条約を廃棄し、対等・平等の日米関係を築くために日米平和友好条約の締結を求めて質問を終わります。
主張
衆参代表質問
これでは「いのち」が守れない
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各党の代表質問が一巡しました。日本共産党からは衆院で志位和夫委員長、参院で市田忠義書記局長が質問に立ちました。
鳩山由紀夫首相は施政方針演説で、「いのちを守る」政治への転換を強調しました。
雇用と賃金がかつてなく落ち込み、多くの中小零細企業の倒産・廃業が続いています。深刻な経済危機から国民の暮らしを守るために、抽象的な言葉ではなく現実の政治でどう応えるのか―。首相の答弁が注目されました。
前首相とそっくり同じ
日本の景気悪化が欧米と比べても深刻なのは、長期にわたって大企業が国民の所得を吸い上げてきた結果、国内需要が弱り切っているためです。鳩山内閣は「新成長戦略」をアピールしていますが、問われているのは「成長」しても暮らしが少しも良くならないという経済のあり方そのものです。
大企業が過去最高益を更新していた時期にも、1人当たり賃金は低下し続けました。この10年で雇用者報酬が27兆円も減る一方、企業の内部留保は200兆円から400兆円に倍増しました。増加の半分は大企業のため込み金です。
政府も「新成長戦略」の中で、「構造改革」によって「選ばれた企業のみに富が集中」し、国民には「実感のない成長と需要の低迷が続いた」と分析しています。
大企業の巨額の内部留保は、労働法制の規制緩和による正社員の非正規雇用への置き換え、下請け単価たたきなど中小企業へのしわよせで積み上げられたものです。
政治に求められているのは「選ばれた企業のみ」に富を集中させている原因にメスを入れ、その富を社会に還元させることです。
2日の衆院本会議で志位委員長は、大企業の内部留保と利益を雇用と中小企業に還元させる政策への転換が必要だとただしました。これに対して鳩山首相は次のように答えています。
「内部留保の活用は本来、企業がそれぞれの状況に応じて経営判断を下すべきものだ」
「その上で、労働者の雇用と生活をしっかり守るように最大限努力することは重要だ」
「その上で」という接続詞も含めて、前政権の麻生太郎首相の1年前の本会議答弁とそっくり同じです。
麻生内閣でも、例えば河村建夫官房長官は、雇用の維持に内部留保を活用するよう「積極的に経営者団体などを通じて要請を強くしていきたい」と答弁しています。鳩山首相が、せめてその程度の姿勢も示せないのでは、「働く人々のいのちを守る」という首相の言葉には、実体がまったく伴っていないと言わざるを得ません。
明確な転換こそ
志位委員長が町工場の固定費への補助を求めたのに対しても、首相は「限られた予算の効率的な活用という観点からも望ましくない」と冷たく背を向けました。
市田書記局長が日本農業を破壊する対豪、対米の自由貿易協定を断念するよう迫ったのに対して、首相は「国際交渉は前向きに推進する」と拒否しました。
経済危機から国民の暮らしを守る焦点の問題で、自公政権からの転換が見られないのでは、何のための政権交代かと言われます。
「政治を変えたい」という国民の願いに応え、旧来政治から明確に転換することが求められます。
(出所:日本共産党HP 2010年2月4日(木)「しんぶん赤旗」)
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日本共産党の市田忠義書記局長が、3日の参院本会議でおこなった代表質問は次の通りです。
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私は日本共産党を代表して鳩山総理に質問します。
小沢氏の疑惑――刑事訴追の有無にかかわらず政治が解明すべき問題
まず、小沢民主党幹事長の政治資金疑惑についてであります。総理は施政方針演説ではこの問題に一切触れませんでしたが、この問題が政治に突きつけているものは一体なんだとお考えですか。
問われているのは、国民の税金でおこなわれている公共事業を食い物にした疑惑にどう立ち向かうかであり、刑事訴追されるかどうかにかかわらず、政治がけっして見逃してはならない問題です。あなたは刑事訴追を受けないなら何をやっても良いという立場なのでしょうか。そうでないなら、検察の捜査を見守るという傍観者的姿勢ではなく、政治的道義的責任の有無を政治の場で解明するために、あなた自身が指導性を発揮すべきではありませんか。
「いのちを守りたい」――脅かされる現実に応えているか
経済危機から、いかに国民の暮らしをまもるか。それが今政治に課せられた最も緊急の課題です。
後期医療をめぐる約束ほごは許されない
総理は「いのちをまもりたい」と何度も繰り返されました。
そこで伺います。総理自身がかつては「姥(うば)捨て山」と言われていた後期高齢者医療制度について、施政方針演説では一言も触れなかったのはなぜですか。
あなたの言葉とは裏腹に、実際にはいのちは一層脅かされています。
いま年金で暮らすお年寄りは、年金から、税金はいうに及ばず介護保険料、国民健康保険料、75歳以上の方は後期高齢者医療保険料を差し引かれ、しかもその額は年々重くなります。
総理は「お年寄りが…安らぎの時間を過ごせる環境を整備する」といわれましたが、これが「安らぎの時間を過ごせる環境」ですか。後期高齢者医療制度の廃止の約束ばかりか、保険料の負担をふやさないという約束まで反故(ほご)にするのは絶対に許されません。答弁を求めます。
世界でも異常に大きい医療費の窓口負担
医療はどうか。あいつぐ医療費の窓口負担の拡大で、日本は、いまでは、「現役世代3割、高齢者1~3割」という世界でも、最も窓口負担の大きい異常な医療制度になってしまいました。その結果、医者にかかれないという「いのちの不安」が広がっています。
日本医師会は「窓口負担の軽減」と「子どもの医療費の無料化」を提唱しましたが、いまや、高すぎる窓口負担の軽減は圧倒的な国民の声であります。総理はその声にこたえるべきではありませんか。
製造業派遣を認めれば使い捨ては続く
労働者のいのちを危機にさらしたのが一昨年暮れから荒れくるった派遣切りでした。派遣切りのなにが国民から厳しく批判されたのか。それは、日本を代表するトヨタやキヤノン、パナソニックといった大企業が、生きた人間を必要なときだけ、安い給料でこきつかって莫大(ばくだい)な利益をあげ、後はモノのように使い捨て、職場からも寮からも追い出して恥じないという、横暴勝手な振る舞いでした。政府は、製造業への派遣を原則禁止するといいながら、常用型についてはその限りではないといいます。
しかし総理、常用型なら大企業の派遣切りは起きないのでしょうか。直接雇用している期間社員でさえクビ切りが横行したのです。製造業への派遣を認める限り、それが何型であっても、必要なときに使い、いらなくなったら投げ捨てる大企業の横暴勝手をとめることはできません。製造業派遣の全面禁止へ決断を求めます。
農林漁業の再生――輸入自由化路線からの決別を
農林漁業と農山漁村の再生は、日本国民の存亡がかかった待ったなしの課題です。
自公政権のもと、この10年間で農林水産予算は約1兆円削減され、国の予算に占める割合も毎年のように引き下げられ昨年は4・9%になりました。ところが鳩山内閣ではさらに4・6%に引き下げられました。これでは、戸別所得補償による農林水産業の再生など絵に描いたモチではありませんか。農業を国の基幹産業に位置づけ、農林水産予算もそれにふさわしく抜本的に増額して、当面、米価下落の現状を改善するため、政府が、生産費を基準とする買い入れをおこなうことを求めます。畜産物価格や野菜・果実などについても、再生産が可能となるよう、必要な価格安定対策を講ずるべきではありませんか。
民主党は、先の総選挙で、日米FTA(自由貿易協定)交渉の促進を公約に掲げ、農業関係者から強い怒りをよびました。交渉の相手、アメリカも、オーストラリアも、農業を除外したFTAなどありえないと再三言明しています。日豪EPA(経済連携協定)交渉をきっぱりと中止し、日米FTA交渉は断念すべきです。総理の答弁を求めます。
日本農業をここまで落ち込ませた最大の原因の一つ、歯止めのない輸入自由化路線を根本から改め、関税の維持・強化をはかること、貿易拡大一辺倒のWTO(世界貿易機関)農業協定を根本から見直し、各国の食料主権を尊重する貿易ルールの確立を求めるものであります。
普天間問題――無法な土地強奪が原点、無条件撤去こそ
つぎに普天間問題と日米関係についてです。
普天間問題の原点はなにか。普天間基地がつくられた場所には、民家も役所も郵便局も墓地もありました。普天間だけではなく沖縄の米軍基地はその多くが、戦時国際法にも反して、銃剣とブルドーザーで米軍に無法に強奪された土地であります。それを、別のものをよこさなかったら返さないというこんな無理無体なことはないではありませんか。下地島だ、いや伊江島だ、徳之島だなどといって、別の土地を差し出して返してもらおうという態度はあまりにも無責任、卑屈な態度とは思いませんか。
政府は答弁につまると「抑止力のためには仕方がない」といいます。しかしアメリカ自身、沖縄にいる海兵隊について、「迅速に、どこへでも、どのような任務にも対応する能力を備えた遠征介入部隊」とのべ、日本防衛のためとは一言もいってはいません。あなたは「侵略力ではない」と昨日の衆院本会議でいわれましたが、年がら年中イラクやアフガニスタンに派遣されている「侵略力」そのものではありませんか。移設条件付きでなく普天間基地の無条件撤去をアメリカに強く迫る決断をするべきであります。総理の答弁を求めます。
日米関係――異常な実態をただちに是正すべきだ
今年は安保条約が改定されて50年目の年であります。総理は「日米同盟の深化」などといいますが、日米関係は一体どうなっているのでしょうか。
まず在日米軍の実態です。アメリカ本国では許されないことが日本では起きています。なんといっても人口密集地、宜野湾市のど真ん中に沖縄の普天間基地はいすわっている。基地の周囲には学校や保育所、病院など公共施設がいっぱい。全国各地で低空飛行訓練も傍若無人にやられている。こんなことは米本国でも、野鳥に悪い影響を与えるとしてやられてはいません。日本国民はアメリカの野鳥以下なのか。こんなことが日本で許される道理はないと思いますがいかがですか。
日米地位協定はどうか。同じ敗戦国のドイツでは、日本と違って必要な時には米軍基地への立ち入りもできます。警察権の行使もできます。演習や訓練では事前の政府の承認も必要になります。なぜ日本ではそれができないのか。こんなことを今後も許すのですか。
そして日本国憲法への介入です。9条改定についての要求が、米政府高官からしばしば公然と出されています。憲法は日本の最高法規であって、それを変える権限を持っているのは日本国民だけではありませんか。今後こういうことは決して許さないという決意を明確に示していただきたい。
安保条約のあるなしにかかわらず、少なくとも今述べた異常な関係はただちに是正されるべきだと考えますがいかがですか。
日本共産党は、こうした異常な日米関係をつくりだしてきた安保条約を廃棄し、対等・平等の日米関係を築くために日米平和友好条約の締結を求めて質問を終わります。
主張
衆参代表質問
これでは「いのち」が守れない
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各党の代表質問が一巡しました。日本共産党からは衆院で志位和夫委員長、参院で市田忠義書記局長が質問に立ちました。
鳩山由紀夫首相は施政方針演説で、「いのちを守る」政治への転換を強調しました。
雇用と賃金がかつてなく落ち込み、多くの中小零細企業の倒産・廃業が続いています。深刻な経済危機から国民の暮らしを守るために、抽象的な言葉ではなく現実の政治でどう応えるのか―。首相の答弁が注目されました。
前首相とそっくり同じ
日本の景気悪化が欧米と比べても深刻なのは、長期にわたって大企業が国民の所得を吸い上げてきた結果、国内需要が弱り切っているためです。鳩山内閣は「新成長戦略」をアピールしていますが、問われているのは「成長」しても暮らしが少しも良くならないという経済のあり方そのものです。
大企業が過去最高益を更新していた時期にも、1人当たり賃金は低下し続けました。この10年で雇用者報酬が27兆円も減る一方、企業の内部留保は200兆円から400兆円に倍増しました。増加の半分は大企業のため込み金です。
政府も「新成長戦略」の中で、「構造改革」によって「選ばれた企業のみに富が集中」し、国民には「実感のない成長と需要の低迷が続いた」と分析しています。
大企業の巨額の内部留保は、労働法制の規制緩和による正社員の非正規雇用への置き換え、下請け単価たたきなど中小企業へのしわよせで積み上げられたものです。
政治に求められているのは「選ばれた企業のみ」に富を集中させている原因にメスを入れ、その富を社会に還元させることです。
2日の衆院本会議で志位委員長は、大企業の内部留保と利益を雇用と中小企業に還元させる政策への転換が必要だとただしました。これに対して鳩山首相は次のように答えています。
「内部留保の活用は本来、企業がそれぞれの状況に応じて経営判断を下すべきものだ」
「その上で、労働者の雇用と生活をしっかり守るように最大限努力することは重要だ」
「その上で」という接続詞も含めて、前政権の麻生太郎首相の1年前の本会議答弁とそっくり同じです。
麻生内閣でも、例えば河村建夫官房長官は、雇用の維持に内部留保を活用するよう「積極的に経営者団体などを通じて要請を強くしていきたい」と答弁しています。鳩山首相が、せめてその程度の姿勢も示せないのでは、「働く人々のいのちを守る」という首相の言葉には、実体がまったく伴っていないと言わざるを得ません。
明確な転換こそ
志位委員長が町工場の固定費への補助を求めたのに対しても、首相は「限られた予算の効率的な活用という観点からも望ましくない」と冷たく背を向けました。
市田書記局長が日本農業を破壊する対豪、対米の自由貿易協定を断念するよう迫ったのに対して、首相は「国際交渉は前向きに推進する」と拒否しました。
経済危機から国民の暮らしを守る焦点の問題で、自公政権からの転換が見られないのでは、何のための政権交代かと言われます。
「政治を変えたい」という国民の願いに応え、旧来政治から明確に転換することが求められます。
(出所:日本共産党HP 2010年2月4日(木)「しんぶん赤旗」)