奇跡のかぼちゃ
猛暑の予想だった今夏、忙しくてグリーンカーテンを準備し損ねたぽんず家は恐怖におののいていました。
「遮るものがなかったら、暑さに焼き殺されてしまう~。特にお勝手!」
と泣いていたところ、なんとお勝手窓の下にある菜園と名付けている場所から、かぼちゃの苗が生えてきたではないですか。
もちろん苗を植えたわけではありません。去年地面に埋めた野菜くずの中にあったかぼちゃの種が芽を出したに違いありません。
私はそっと苗をお台所の窓方面に誘導しました。苗はどんどんと伸び、窓一面を見事に覆い尽くしたその上に、かわいい坊ちゃん南瓜を実らせたのでした。実が生って知る南瓜の種類。そうか、これだったか。
と喜んでいたところ、
「ねえさん、まあ、みごとに南瓜を這わせたわいね」と散歩中と思われるおばあさんが声を掛けて下さったのです。
で、二言三言言葉を交わした後、せっかくなので庭の椅子に腰掛けて頂いて(暑い日でおばあさんちょっとお疲れ気味に見えたので)、二人で暫しおしゃべりをしました。
あねさま被りの手ぬぐいに、花柄の割烹着、もんぺズボンという今時珍しい正統派農作業スタイルの、おばあさんの話はこんなでした。
おばあさん 「随分昔の話だけんども、ここらあたりに、ぽず子さん(仮名)つう女しょうの家があったいねが、ねえさん、ぽず子さんの話、知らねかいね?」
ぽんず「さあ、聞いたことないです・・・」
いきなり自分と同じ名前が出てきたのにもびっくりだったんですが、おばあさんの話し方にもびっくり。こんなに方言使う人珍しいです。「ねえさん(女性が中年以上の女性に呼びかける言葉。対話者同士の年齢差は関係なく、80歳が70歳に呼びかけることもある。ただし男性から女性への呼びかけに使われたのを私は聞いたことがない。あるのかな)」なんて、リアルで聞くの何年ぶり?
お「ほうかいね、知らねかね。まあ、有名な話だけんども、知らねえかね」
ぽ「どんな話なんですか?(興味津々)」
お「昔さね、ここいらに、もうちょっとあっちの方だったけんども、ぽず子さんちってあっただいね。」
ぽ「ふんふん」
お「ある、暑い夏のことだわいね、どこん家も暑くて暑くて灼けこんじまったつうに、ぽず子さん家だけ涼しかっただいね」
ぽ「え?なんで?」
お「それがさいね、かぼちゃの蔓が軒の朝顔の支えだったとこに這ってさね、家中をおおっちまってせ、それで涼しかったんだってせ」
ぽ「今で言うグリーンカーテンだ!」
お「それがせぇ、そのかぼちゃは勝手に生えてきただってせえ。ぽず子ねえさんはそりゃあ喜んで、道を通る人みんなに自慢してまわっただってね。勝手に生えてきた、ええこんだって。そりゃあそうだだよ。どこの家も暑くてやりきれねえって、病人まででる家もあったっつうに、ぽず子さんちだけ涼しかったんだからね。ありがてえもんじゃないかいね」
ぽ「確かに・・・」
お「そうずろ。ところがさねえ、ほず子ねえさん、大喜びだったんだけども、今頃だったかいねえ、ある日、ぽず子さん家がなくなっちまってせえ」
ぽ「えっ」
お「わしも聞いた話だけんども、蔓におおわれてせぇ、草むらになってたって話だいね」
ぽ「・・・」
お「まあ、当たり前だわいね。あんなに日陰になってもらって、助けてもらったつうに、ぽず子さん、南瓜とって食っちまったってせ。まあ恩知らずにも程があるわいね」
「ところでねえさん、手に持ってるその南瓜せ、どうするだいね。まさか食べやせんずらね」
と、おばあさんに詰め寄られたところで目が覚めたのですが、こんな夢を観てしまった私は、収穫した6個の坊ちゃん南瓜を美味しく食べて良いものでしょうか。
それとも感謝祭まで待つべきでしょうか。
皆様のアドバイスをお待ちしております。
窓を覆うかぼちゃの蔓
やっぱ食べたい・・・
謹んで追記
じつは、一昨年も捨てた種から南瓜の苗が生えて、お勝手の窓枠で育てておりました。
その時の実った南瓜の写真をアップしておきます。
私、前世で南瓜によっぽど良い事をしたのね(*^_^*)←おいっ!
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