真夏の方程式 感想(ネタばれあり)
ある雨の日。元ホステスの三宅伸子(西田尚美)が歩道橋で刺されて死亡した。
警察は金銭トラブルによる犯行として、仙波英俊(白竜)を容疑者として逮捕した。
この事件の裏で、一組の母娘が一つの秘密を共有していた。娘に謝る母は、その秘密は父親にも秘密だと涙ながらに語るのだった。
両親が店を新装開店する期間、親戚が経営する旅館で過ごすことになった小学5年生の少年・柄崎恭平(山﨑光)は、玻璃ヶ浦へ向かう電車の中で母・川畑節子と電話で会話していた。
電話を切った恭平に、隣席に座っていた老紳士が老婦の制止も聞かず、電車では携帯電話の電源を切るのがマナーだと叱りつける。しかし恭平は自分の携帯電話はキッズ携帯であり、電源を切れば両親の下にメール通知が届いて大変なことになると反発する。
言い争いの中、恭平の前の席に座っていた帝都大学物理学准教授・湯川学(福山雅治)は、恭介の食べていたおにぎりを包んでいたアルミホイルで携帯電話を包み込み、これで電話はかからないと争いを収める。
湯川は海底鉱物資源開発の説明会にアドバイザーとして出席するために玻璃ヶ浦へ来ていたが、玻璃ヶ浦の駅前には開発反対に関する幾つもの看板や垂れ幕が掲げられていた。
説明会では開発の説明を行おうとする企業側に対して、開発に反対する川畑成実(杏)らが強く糾弾を行っていた。
タクシーがつかまらず、遅れて現れた湯川は場の剣呑な空気も一切気に留めずに着席する。
玻璃の海の保護を求める反対派に対し、企業側はこの海特有のものは残すと語るも、他の海に生息するものは壊しても構わないという事かと非難を浴びる。
海洋調査にて出来る限りの海の生態系を破壊しないと説明する企業だったが、湯川はそんな企業側の説明は「良くない」と批判する。
深海は専門の海洋学者ですらまだ未知の部分が多く、確約できないことは出来ないと正しく発言するべきだと語る。その上で、人間の文明は多くの自然を犠牲にしてきており、反対派もそれらの恩恵を受けている。後は選択の問題だと締め括る。
湯川は玻璃ヶ浦で宿泊予約を取っていた旅館『緑岩荘』へと訪れる。
そこは足の悪い川畑重治(前田吟)とその妻・川畑節子(風吹ジュン)、娘の成実の3人で経営されている小さな宿だった。
しかも今朝電車で一緒になった恭平が預けられている場所でもあった。
東京で玻璃料理の小料理屋に務めていたという節子の作った夕食を美味しくいただいた湯川は、地酒の飲める店を節子に案内してもらうことになる。
湯川以外に宿泊していたもう一人の客、塚原正次(塩見三省)は湯川が去った後、節子に自分が元刑事であり、仙波英俊の事で話がしたいと言い出す。
節子は明らかに動揺しながらも仙波という人物を知らないと逃げるように立ち去る。
ロビーで節子を待っていた湯川は、恭平から「博士」と呼んで声を掛けられるが、子供嫌いの湯川はつれなく接する。
湯川が節子に案内された居酒屋に、中川雅人(神保悟志)ら開発反対派の仲間とやってきた成実は湯川に声を掛けて、説明会の時の「選択の問題」という事について問いかける。
湯川はアドバイザーとして呼ばれた自分の調査は音波を使ったものであり、環境破壊は行わないと説明。そして成実たち反対派は自分たちの意見を押し付けるばかりで相手の言い分に耳を傾けずにいると指摘する。
その夜、緑岩荘では恭平が重治とロケット花火を打ち上げて盛り上がっていた。
翌朝、騒がしさと寝苦しさで目を覚ました恭平は、家の前にパトカーが止まり沢山の警察がやってきている事を知る。
宿泊客の塚原が堤防で死体で発見されたのだ。
県警は現場検証の結果から、酒を飲んだ状態で散歩中に堤防から誤って転落した事故死の線が濃厚との調査結果を出していたが、刑事時代の塚原から恩を受けた事のある多々良管理官(永島敏行)は不審を抱いて草薙俊平(北村一輝)に捜査を依頼する。
捜査を依頼された草薙は、緑岩荘に湯川が宿泊しているとして、湯川担当の岸谷美砂(吉高由里子)を現場へ向かわせることにした。
湯川を「博士」と呼んで何かとまとわりついてくる恭平は、塚原の死がおかしいと語る。
塚原は下駄を履いていたが、彼の落ちた堤防は下駄で登れるような場所ではなく、散歩をしていたというが、その場所は夜には暗すぎて散歩に適していないのだという。
少年の名推理を認めながらも、それよりも勉強するようにという湯川だが、恭平は理科なんて何の役にも立たないと不満を漏らす。
子供が苦手な湯川は恭平を遠ざけようとするが、何故かいつものように体が痒くはならなかった。
外出から戻った湯川は途中で堤防の上に腰かける恭平を目撃する。
湯川は恭平の推理通り、堤防に下駄で登るのは難しいと納得する。
立ち去ろうとする湯川に、恭平はここの土地が玻璃ヶ浦と呼ばれるのは、海が水晶の様に綺麗だからなのだと教える。
その海を見るにはもう少し沖合へ行かなければならないが、恭平は泳ぎも得意ではなく、船も船酔いするからダメなのだという。
そんな恭平に、湯川は今の恭平にこそ、科学による地図が必要だと語る。
買い物へ出かけていた湯川は、実験に使うという多くの道具を買ってきたものの、タクシーがつかまらずに歩く羽目になり、汗だくで『緑岩荘』へと戻ってくると、東京から岸谷が湯川を訪ねてやってきた。
実験の準備を続ける湯川に、岸谷は塚原の死因が一酸化炭素中毒によるものであり、他殺後に死体遺棄された可能性が高くなったことを語る。
翌朝、湯川は開発企業、反対派住民、賛成派住民で討論の続く説明会を時間の無駄だと参加せず、恭平を連れて実験のために灯台のある堤防へと向かう。
堤防で釣竿とペットボトルロケットを作った実験を開始する湯川。
何度も何度も繰り返しの発射テストを繰り返す湯川だが、恭平は何のためのテストなのかがさっぱり判らない。湯川はそんな恭平に自分で考えてみるように諭す。
そうして何度も繰り返した末、ペットボトルが目標の200mに到達すると、湯川はペットボトルに入れていた粘土を自分の携帯電話と交換する。
そしてペットボトルロケットの着水後、恭平に電話へ出るように指示する。
恭平の携帯電話に掛ってきたテレビ電話に映し出されていたのは、美しい玻璃の海だった。
湯川は泳ぐことも船に乗ることもできない恭平に、別の手段で海を見ることを科学で示したのだ。
湯川に見せてもらった海の景色に大興奮で緑岩荘に帰った恭平は、ますます湯川を慕うようになる。
宿に着く直前、屋上から降りてきた鑑識を目撃した湯川に、恭平は屋上に煙突があるのだと説明する。
その夜、湯川は恭平に頼んで重治がお風呂に入っている隙に宿の部屋の鍵を取ってきてもらうと、『海原の間』へと足を踏み入れる。
そして恭平から花火をした夜には、花火が宿の中に入らないようにきちんと戸締りしていた事を聞き、部屋のあちこちを調べまわって一つの結論へと達する。
東京では岸谷と草薙が塚原の事件について調査のため、岸谷が塚原の足取りを追っていた。
死んだ塚原にとって最も印象に残っている事件は彼が逮捕した仙波の事件であり、塚原は出所後の仙波の足取りを追って簡易ホテルや漫画喫茶を回っていた。
湯川は岸谷に川畑が玻璃へ引っ越してくる以前、東京のどこに住んでいたのか調べるように指示する。
湯川は犯人が重治であるという確信を抱いていたが、「ある人物の人生が捻じ曲げられる」ことを防ぐために、真相に辿り着こうとしていた。
海洋調査の日、反対派も乗せた調査船が出航する。
湯川は調査に使用される探査艇が周囲を観測して海底などに接触して破壊しないような仕組みになっているのだと成実に説明する。
頑ななまでに反対を唱え、開発側の言葉に耳を傾けない彼女に、湯川は全てを知ることが大切だと教える。
玻璃の海を必死に守ろうとする成実の姿勢に、湯川は彼女がただここの海が好きだからという以外の理由があるように感じ取っていた。
そんな成実の下に、東京の中学時代の友達から電話が掛ってきて、どこに住んでいたかと訊ねられてショックを受ける。
岸谷が友達に訊ねたからだったが、その事で動揺する成実を、節子は必死に宥めるのだった。
すっかり湯川に懐いた恭平は湯川と夕食を食べることになった。
科学について恭平に語る湯川は、紙の鍋が火に炙られても燃えない原理を説明する。
すると、濡れた紙のコースターを固形燃料の上に被せたらどうなるのか、と疑問を抱いた恭平は試してみようとするが、湯川はそれを直前で邪魔して食事を続ける。
だが、それらを見ていた重治は湯川が全てを見抜いているのだと気付いてしまう。
川畑家について調査を進める岸谷は節子が勤めていた郷土料理『はるひ』の店長・鵜飼継男(綾田俊樹)から、みんなの憧れだった節子を店の客だった重治が射止めて結婚したこと、16年前に殺害された伸子も客の一人だった事、そして節子は実は既婚者だった仙波の事が好きだった事を教えられる。
16年前の三宅伸子殺害事件に川畑親子が関係している可能性が濃厚になる中、湯川は重治から宿を出て欲しいと告げられる。
湯川が恭平と共に宿を出た後、重治は警察に自首して警察へと連れて行かれる。
そして重治は警察で、宿は壁の中をボイラーの蒸気が通る仕組みとなっているが、老朽化により海原の間の壁には亀裂が入り、蒸気が漏れる可能性があるので現在は使用していない。当日、眠れないという塚原に病院で処方してもらっていた睡眠薬を渡していた。塚原は花火を見るためか、鍵の開いていた海原の間に入って見ていたが、睡眠薬が効いてきて眠ってしまい、一酸化中毒で死んでしまったのではないかと語る。
その後、死体を発見した重治は、宿で死人が出たという風評を防ぐため、節子と協力して遺体を事故死に見せかけて捨てたのだと供述する。
東京へと戻った湯川は、岸谷が探し当てたケアハウスにいる仙波を訪ねていた。
湯川は成実が重治と節子の子供ではなく、仙波と節子の間に出来た子供であり、16年前の事件の真相は、成実が伸子を殺害したため、仙波が娘のために犠牲になったのだと推測していた。
成実が我が子と知っていた仙波は、『はるひ』のアルバムにあった節子と赤ん坊の写真をこっそりと所有していたが、それを伸子に見られてしまったのだ。
その事を知った伸子は、その事を盾に幸せに暮らす節子を脅迫して金をせびろうとしていた。
節子の不在により、伸子から真実を知らされた中学生の成実(青木珠菜)は伸子が奪い取っていた家族写真を取り戻すため、に包丁を手に追いかけて彼女を刺殺してしまった。
翌日、伸子の殺害を知った仙波は節子に伸子が訪ねて行かなかったかと電話にて訊ねる。
ニュースを知った節子が自室に籠っていた成実の部屋へむかうと、部屋に血の付いた包丁が転がり、成実が半狂乱になっていた。
電話の様子から真実を知った仙波は、既に妻とも別れて会社も倒産していた事から、失う者は何もないと凶器の包丁を譲り受けて身代わりとなったのだ。
介護なしでは満足に生活できない車椅子の仙波と面会した湯川だが、仙波は成実たちの事を知らないと否定し、成実を庇ったことも否定する。
そんな彼に深く追及しない湯川は、成実の写真を置いていくと、成実が書いているブログはある人物を待つために玻璃の海を守ろうとしているのだと伝える。
仙波は湯川に「玻璃の海を守ってくれてありがとう」という成実へのメッセージを託す。
仙波は絶対に16年前の真相を明かさないと確信する湯川に、岸谷はこんな負け方で納得が出来るのかと問い詰める。
湯川は、納得できるはずもなく、「ある人物の人生」を守るため、もう一度、玻璃ヶ浦へ戻る決意を固め、そこで拘留中の重治と面会するのだった。
・キャスト
湯川学:福山雅治
岸谷美砂:吉高由里子
草薙俊平:北村一輝
川畑成実:杏
川畑成実(幼少期):豊嶋花
川畑成実(15年前):青木珠菜
川畑重治:前田吟
川畑節子:風吹ジュン
仙波英俊:白竜
塚原正次:塩見三省
柄崎恭平:山﨑光
三宅伸子:西田尚美
柄崎敬一:田中哲司
多々良管理官:永島敏行
塚原早苗:根岸季衣
中川雅人:神保悟志
鵜飼継男:綾田俊樹
・スタッフ
監督:西谷弘
脚本:福田靖
音楽:菅野祐悟、福山雅治
東野圭吾原作のフジテレビのテレビドラマ『ガリレオ』の劇場版第2作。
原作には西口という成実の同級生である地元刑事が出てくるらしいけど、反対派の一人として扱われていたっぽい。
他にも成実の仲間のフリーライターとかも出てこないらしいので、若干変わっているというか、成実の恋愛に絡んだ部分が時間の関係とかで全面的にカットされたのかな?
あらすじは例によって記憶だけを頼りに書いているので、微妙に順番が入れ替わっているかと思います。
原作では内海薫が出てくるのですが、映画ではドラマに合わせて岸谷美砂に変更されています。
テレビ版ではあまり見かけない草薙が結構出てきています。
巧妙なトリックを物理学にて解くというあらすじではなく、トリックも犯人も早々に解けているのだけど、複雑な人間関係をどうやってうまく解決するのか、というところが焦点となっています。
なので敢えてガリレオシリーズではなくても出来そうはな話ではあるな、と。
ドラマ版とは違い、湯川に警察側が使いっ走りにされるという印象。
キッズ携帯のメール送信については設定変更でなんとかなったはずなんだけど、恭平には判らないだろうし、老人にも判らなかっただろうから仕方ないかな。
なぜ恭平に対してだけ、湯川が痒くならなかったのかは謎。
彼が子供っぽくなかったというわけでもないし、途中までは科学にもまったく興味を示していなかったし。
ラストの展開は『相棒』ならまた違っただろうな。
たぶん右京ならどんな辛い事情があろうと、真実を明るみに出そうとする。その上で無垢な子供を殺人に利用した重治を叱っていたのではないだろうか。
湯川は事実を語った上で、立証はせずに重治の望みを叶えてやり、恭平には辛い現実を生き抜いていく強さを身に着けることを諭しています。
どちらが良い悪いではないのだけど。
湯川はそもそも探偵でもなければ、ましてや刑事でもなく、ただ真実を探求したいだけの人なので、突き止めた真実を公にする義務も責務も負っていませんから、立場の違いでしょう。
個人的評価:70点
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