はてなキーワード: 重粒子線治療とは
放射線治療が専門の医者なんだけど、こんなマイナーな専門分野がテレビで特集されたんでみんなに見てほしいです。
【日立が挑む癌治療】40歳患者の腫瘍を狙い撃ち!その後の人生を守る | ガイアの夜明け テレビ東京
https://tver.jp/episodes/eptrzbwgsk
Tverなんで無料・登録不要でスマホで視聴できます(3月13日(金)21:59まで)。
忙しかったら、30分08秒からの30秒だけ。首の大きな癌が、放射線照射だけでほぼ消える映像だけでも。機械・IT好きには全部見ても楽しめると思います。
癌の治療法って、手術、薬、放射線治療の大きく3つあるけど、放射線治療はあまり知られていないです。
理由はいくつかあって、日本は手術が重要視されてきたこと、放射線のイメージが悪いこと、専門医が全国に2000人以下(医師全体35万人の1%以下)しかいなくて宣伝が下手だった事かなと思います。
日本人って人生の中で2人に1人が癌になり、そのうち1/3が放射線治療を受けるんで、あなたや家族が放射線治療受ける可能性は1/6もあるし、知っておいて損はないと思います。
超高齢化が進む中、体への負担が大きい手術を選べない患者さんでは放射線治療が選ばれることが増えています。
癌治療で抗がん剤って根治が難しいケースが多いけど、放射線治療は根治を狙えることも多いです。
放射線は癌に当たれば癌が死ぬけど、正常な細胞に当たれば副作用が出ます。
放射線が当たってないところは基本的に無関係。例えば、体の癌の放射線治療なら、髪の毛が抜けることは絶対ないです。
だからいかに癌だけに放射線を当するかが大事。これを放射線治療の専門家や関係者は常に考えていて、技術革新とともにどんどん治療が良くなってきました
昔は機械の精度が悪く、5mmくらいずれるのを許容していました。そもそも体の中にある癌を正確に狙うのって想像以上に難しいです。同じ姿勢で台に寝てもらっても体なんて数mmゆがむし、息をすれば肺・肝臓・膵臓などは1cm以上動きます。
昔はそんなずれや動きを許容して、少し広く放射線をあてるって事をしていました。
それがこの30年間くらいで劇的に変わりました。現在は治療ごとの体の歪みをリアルタイムで補正できるし、動く肺癌を0.1秒単位で追いかけて照射できます。ディープラーニングで臓器・癌の位置を自動でセグメンテーションすることもできるから処理も劇的に早くなってきました。
結果的に癌だけに照射できるようになってきて、副作用はどんどん減っています。それに伴って癌に一度に照射できる放射線の量も増えてきました。(つまり少ない回数で放射線治療が完了します。)
昔の放射線治療は体への負担が大きく副作用も多かったので入院が必要な事もあったけど、今の放射線治療はほぼ全て外来で受けられます。
例えば骨転移の痛みを取るのに昔は10回以上の治療が必要だったけど、今なら1回で済む事も多いです。乳がんの予防の放射線治療も同じ効果・同じ副作用で25回から16回に減りました。
いろんな癌で、治療回数は少なくなってるのに、効果は同じかより期待できるようになってるし副作用は減っています。
今年の保険診療改定で、少ない回数の放射線治療がぐっと増えそうな予感がしています。(色々とインセンティブが変わったので)
番組で紹介された前立腺癌の治療費(100万円・63万円)は保険適用前の価格です。保険診療だし高額療養費制度も使えるので、自己負担は10万円以下におさまります。手術と比べても安いです。
番組の2回照射治療はまだ全国対応ではないけど、20回程度の同等治療なら全国の癌拠点病院で受けられます。これも10年前は35-40回くらいの治療が普通だったので回数がすごく減りました。同等の効果で
重粒子線治療や陽子線治療は国産機器が活躍中ですが、放射線治療はVarian,Elekta,Accurayなど海外製だらけです。
ちょっと話はそれるけど放射線治療は、重粒子線治療や陽子線治療と同じ効果の癌が多いです。重粒子線治療、陽子線治療の方が効果がより期待できる癌や部位ってかなり限定されます。
放射線治療の方が医療コストが安いし全国で受けられる病院も多いので、医療経済的には優れています。ちなみに放射線治療の機械は1台5-10億円くらいです。
全国の大きな癌拠点病院なら機器は違いますが同等の治療が可能です。
今回は味覚について話が出ていたけど、首の癌は、治すことと同じくらい後遺症・副作用をどれだけ抑えるかが重要な部位です。
重粒子線治療で1回あたりン百万円、とかの話を聞くと、我々は死を引き伸ばす金を現世で稼ぐために生まれてきたんかなあ…と虚しい気持ちになってくる