田舎町でJKの主人公は母の死後過保護になった父親や優しいだけの幼馴染に囲まれた退屈な日常にウンザリ。都会の大学に進学する野望を胸に鬱屈とした日々を送っていたが、ある日、彼女らの街でゾンビ・パンデミックが発生。学校の愉快仲間達やジョックスとのサバイバルが今始まる。
みたいな話。
何も知らんとティーンズゾンビ映画と思って見始めたら学校に行くや否やいきなり歌い出して、こういうギャグなのかな?と思って見ていたら、食堂で2発目も発動して「ゴリゴリのミュージカルやないか!」となった。で、その楽曲とパフォーマンスがよくてねぇ。昨今のティーンズミュージカルらしく、ポップで耳当たりのいい楽曲と歌詞で登場人物の人物紹介と現状の心境を手際よく紹介する手腕。
特に白髪のレズの子の歌がめっちゃよくて驚いた。ちなみに主人公のビジュがどちゃくそよくてすごい。
そして2曲披露しておおよそすべての登場人物を紹介し終わって、翌日、ちょっと寝坊した主人公が、でも「なんか今日はいつもと違う気がする!」とイヤホンで音楽を聴きながら「Brand New Day!」と高らかに歌い上げる後ろでドーン・オブ・ザ・デッド(ってかショーンオブザデッド)の冒頭よろしく、世界がゾンビパンデミックで阿鼻叫喚になっているという、たしかにBrand New Dayだけどさぁ!っていう展開は「いや流石に気付くだろ」と思いつつも皮肉が効いててよい。
そしてまぁそこからは友人たちとボウリング場に立てこもるもゾンビがやってきて戦ったり、家族に会いに学校に行く途中にジョックスと合流し、ジョックスたちは軽薄な若者らしくゾンビ狩りを楽しんでいたり、その道中でわざわざ危険なルートを選んだ結果、ジョックスの仲間を失ったりとゾンビ映画あるあるを陽気な楽曲とともにこなしていき、学校で家族と合流と思いきや、嫌味な校長が暴走していて「やっぱり一番怖いのは人間だよね」といういつものやつになって最終的にはそいつを倒して生き残った仲間と車でどこかに走り出して終了。という、ゾンビ映画で100万回みたやつでおわる。
個人的にえぇ~と思いつつ、そうなるよなぁと思ったのは、主人公の学校での仲間は主人公に思いを寄せる優しい幼馴染とラブラブカップルの3人、それとは別に嫌味なジョックスがいて、銀髪でレズだけど心根が優しい不良少女がいるが、生き残るのはジョックスと不良少女と主人公。仲間たちは次々とある意味無意味な死を遂げていく。
そして途中で主人公とジョックスは実は肉体関係があるも、そこから何となくすれ違っていたことがわかる。
ジャパニーズ・オタク・カルチャー的に考えればゾンビ・パンデミックという非日常の中で優しい幼馴染の気持ちを主人公が知り思いが通じるということになりそうだがそうはならない。死ぬ。ついでに最後には父親も死ぬ。まぁそこかしこでキスしまくってたバカップルが文法的に死ぬのはしょうがないけどさ。
でもこれが鬱屈した日常に飽き飽きしていたJKが非日常の中で道を切り開く物語だとすれば理屈が通じる。死んでしまった幼馴染みもバカップルも清掃員の父も、嫌味な校長も町の人たちも。みんな境遇に不満はあってもある意味で現状に固執する人間であり、主人公を庇護するものとして描かれている。
しかしジョックスは反発しつつも主人公を変えてくれる存在であり、必要であれば父親も殺す現状を変える人間として描かれているし、不良少女も現体制に反抗し日常ではなく世界を良くしようと活動している人物。つまり社会の庇護の中にあった子供だった主人公がそれらを失って新しい世界へと歩み出していく物語として、仲のいい人ばかりが死んでヘンな奴ばっかりが残るのはある意味で正しい。
でも優しいだけの幼馴染が恋愛競争に敗れて、暴力的なジョックスが生き残るのは青春のリアルな残酷さが描かれていて正直、ちょっとしょんぼりしてしまった。
ゾンビ映画としてのゴア描写はしっかりしているし悪ふざけみたいなゾンビ虐殺シーンもちゃんとあるし、悲劇的な別れも、バカみたいな別れもちゃんとある。ミュージカルにしてしまったことで正直、緊迫感は薄れてしまったなとは思うんだけどゾンビ映画のパロディ、コメディとしては十分な点を挙げられると思う。
ゾンビ映画とミュージカル映画の両方が好きって層には普通にオススメ。ガチのゾンビ映画が好きな層にはもしかしたら微妙かもしれない。