国立情報学研究所(NII)は2016年2月15日、日本IBMの資金援助に基づき運営される研究部門「コグニティブ・イノベーションセンター」を同年2月1日に新設したと発表した。ディープラーニングなどAI(人工知能)技術を中心とする情報技術を研究テーマに、新ビジネスに結びつく研究成果の創出を狙う。センター長として第10代人工知能学会会長を務めた石塚満氏を招聘。研究メンバーは3、4人ほどで、具体的な研究テーマは今後詰める。
日本IBMは同センターを通じて、「IBM Watson」「IBM Bluemix」が備える自然言語処理や映像/音声解析などのサービスをNIIの研究者が自由に使えるようにする。さらに同センターは他の企業にも参画を呼びかけ、参画企業の会社役員を対象とした勉強会を定期的に開催する。現在参画を表明しているのは以下の21社である。
- アルパイン
- イオンフィナンシャルサービス
- オリンパス
- エイチ・アイ・エス
- 小松製作所
- みずほフィナンシャルグループ
- 三井住友銀行
- 三越伊勢丹ホールディングス
- 三菱東京UFJ銀行
- キッコーマン食品
- キリンビール
- 第一生命保険
- 帝人
- DIC
- 東京海上日動火災保険
- 日揮
- 日産自動車
- 日本航空
- パナソニック
- 三菱自動車工業
- 明治安田生命保険
NIIの喜連川優所長は「AIだけでなく、利用可能な先端的ITを融合して、イノベーションを創出していくために、センター名にはあえてAIとうたわなかった」と話す。ビッグデータを基にした機械学習の結果を生かし、人間の意思決定などを支援する活動を起点とするが「それが全てではない」(喜連川所長)。
センター長に就任した石塚氏は「政府系のAI研究機関は基礎研究や先端的な研究を主眼としている。コグニティブ・イノベーションセンターは社会や産業への展開や活用を重視している点が異なる」とする。21社との議論を通じて、6~7月をめどにテーマを絞っていく考えだ。
日本アイ・ビー・エムの取締役専務執行役員グローバル・ビジネス・サービス事業本部長のキャメロン・アート氏は「NIIとの活動を通じて、コグニティブコンピューティングが社会でより広まり、認知が進むと、日本の顧客にとっても当社にとってもメリットがある」と話す。