ITサービスの好事例集「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」は、運用改善・オペレーションマネジメントの仕組みとして大変優れている。だが、IT以外の業種・職種では活用はおろか、認知もされておらず実にもったいない。
この連載では、ITの運用以外の職場も例にとり「そもそもITILって何?」「ITILを活用するとどんないいことがあるのだろう?」を様々な視点で分かりやすく解説する。
本テーマの連載もいよいよ最終回。今回は、業務プロセスマネジメントフレームワークとしてのITILの有用性を再認識する意味で、「プロセス」とは何か、「プロセス化」する意味は何なのかを考えてみたい。
なぜ日本人は「プロセス化」を毛嫌いするのか?
「それって、ロボットのように振る舞えってことですか?」
「なんか、がんじがらめになりそうで、嫌な感じ…」
上記は、「プロセス化」「プロセス整備」という言葉に対する拒否反応の例である。
「業務プロセスを整備しましょう」
「業務をプロセス化しましょう」
このような提案をすると、まず間違いなく現場からネガティブな反応が返ってくる。かくいう筆者も入社3年目ころ、当時はメーカーの購買部門に所属していて、「購買業務のプロセスを作れ」と外国人上司から指示され、抵抗感を持ったものだ。
業務改善やプロセス改革を推進する立場で、現場の説得に苦労した経験を持つ人も多いのではないかと推察する。なぜ、日本人はプロセス化を毛嫌いするのだろうか?ITIL®のようなプロセスマネジメントが、日本の組織になかなか定着しないのはなぜか?
背景の1つに、「プロセス化」が「マニュアル化」と勘違いされている実態がある。
「プロセス化」と「マニュアル化」の違いとは?
拒否反応を示す人の多くは、「プロセス化」を「マニュアル化」と取り違えている。「業務をプロセス化します」と言われた瞬間、マニュアル化を想起し、一挙手一投足を規定され監視されている自分をイメージする。そして、生理的に嫌悪してしまうのだ。
プロセス化とマニュアル化は違う。その説明をする前に、「プロセス」とは何か、「マニュアル」とは何かを定義しておこう。
プロセス化とは、組織共通の活動の一連の「箱」を定義することであり、マニュアル化とは、その箱にひも付く具体的な作業手順を作ることである。この2つはまったく違うのだ。次の図をご覧いただきたい。プロセスとマニュアルの違いを絵で示したものだ。