米アトランタに拠点を置くKabbageは、中小企業や消費者向けに無担保融資を提供するFinTechスタートアップだ。Kabbageのサービスの特徴は、融資の審査をオンラインで完結させていること。融資の申し込みから最短6分で審査を完了するという素早さが売りだ。

 融資の審査がオンラインだけで済むのは、顧客企業が利用するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のデータを審査アルゴリズムが分析して、信用力を測っているためだ。人間が介在しないため審査は高速だ。2011年にKabbageの事業を開始したRob Frohwein CEO(最高経営責任者)は、同社のアルゴリズム審査のヒントが「EC(電子商取引)サイトが行っている偽造品や盗難品などを検出するやり方にあった」と語る。

(聞き手は中田 敦=シリコンバレー支局)

そもそもなぜ、融資を手がけるスタートアップを始めようと思ったのでしょうか。

 融資を従来とは全く異なる方法で提供することに、大きなビジネスチャンスがあると考えたからです。

写真1●米KabbageのRob Frohwein CEO(最高経営責任者)
写真1●米KabbageのRob Frohwein CEO(最高経営責任者)
出典:米Kabbage
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 既存の銀行は、顧客にたくさんの申込書を記入させたり、顧客の資産に関する様々な書類を集めたり、顧客を何度も銀行の支店に来させたりして融資を審査していました。しかし最新のテクノロジーを活用すれば、これらを顧客に強いなくても融資ができると考えました。

 より具体的に言えば、顧客企業がビジネスで利用している様々なオンラインサービスが、データを外部から利用する「API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」を備えていることに気付いたのです。

 これらのAPIを使用すれば、顧客がインターネットで融資の申し込みをしているその瞬間に、顧客の信用力を測る上で必要なデータを全て集めてしまえると考えて、Kabbageを起業しました。

顧客企業に関するどのような情報を集めているのでしょうか。

 顧客の銀行口座や、顧客が使用する会計クラウドサービスの「QuickBooks」や「xero」、クレジットカード決済サービスの「PayPal」「Square」「Stripe」、電子商取引(EC)サイトの「Amazon.com」や「eBay」、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の「Facebook」や「Twitter」などのデータを集めて分析します。

 顧客に断りなくこれらのサービスからデータを集めているわけではありません。顧客には融資の申し込みの際に、顧客がこれらのサービスで使用しているアカウントと、Kabbageに作った顧客のアカウントとを連携させる手続きをして貰います。「OAuth」というインターネットで標準的なアカウント連携の仕組みを使います。当社が顧客に「ID」と「パスワード」を聞くようなことはありません。

 審査アルゴリズムがこれらのデータを分析すると、例えば会計クラウドのデータからはその企業の財務状態が、決済サービスやECサイトなどのデータからはその企業の実際の売り上げ動向が、SNSのデータからはその企業が顧客と良い関係を構築できているかどうかが分かります。これらの指標から、顧客の信用力を測るわけです。