あらかじめ入力したルートに基づき自律制御で目的地まで飛行する小型の複数プロペラ式無人機「ドローン(Drone)」。これまで製品化や活用事例では海外が先行していたが、いよいよ国内でも商用ベースで本格的な普及が始まる兆しが見えてきた。千葉大学特別教授の野波健蔵氏(写真1)が立ち上げたベンチャー「自律制御システム研究所」(写真2)が純国産ドローンを開発。その量産が今秋から来年にかけて始まる。実際にIT農業やインフラ点検などの分野から国内でもドローンを活用する事例が出始めている。
既に海外では、米アマゾンや米グーグルなどIT分野の巨人たちが続々とドローンを使った実証実験や試験サービスを始めようと動き出している(関連記事1:Amazon.com、ドローン配送システムの屋外テスト許可をFAAに申請、関連記事2:Googleもドローン配送システムを開発中、オーストラリアで実地試験)。日本でも今後、様々な形でドローンとIT、そして既存の産業を連携させる新しいサービスが出てくることは確実だ。
自律制御システム研究所が開発したドローン「ミニサーベイヤー」(写真3~5)は、「飛行精度」や「安定性」など制御技術の高さを売りとする。野波氏が千葉大学で30年以上にわたって研究し、磨き上げた制御技術を採用しているという。同社は現在、量産化前の機体を個別に販売しているが、「自社でオリジナルの機体を作りたい」というメーカー向けに、コアとなる制御基板部分だけを提供することもあるという。
国土が非常に広い米国などでは、物流や観測・測量、電波の中継基地など様々な場所やシーンでドローンの活用が考えられる。一方、日本は国土が狭く、物流網もほぼ完ぺきに整備されている。例えば新聞を毎朝ドローンで配達したり、ネット通販で購入した商品をドローンで庭先まで届けたり、電波の中継基地として使ったりするといった用途はちょっと想像しにくい。日本ではドローンを活用できる余地はそもそも少ないのではないか。