ディープラーニング向けシステムで一定の地位を築いたエヌビディアは、新たにTesla P100を投入したわけだが、早期普及のため、自社で開発したマシンであるDGX-1を販売することにした。
半導体のセールス、サーバーメーカーでの採用、サーバー製品の開発という段階を踏んでいたのではユーザー企業が利用できる製品が登場するまで1年以上はかかってしまう。完成品のサーバーマシンを最初に提供することで、市場にいち早くTesla P100システムを浸透させられる。
地位を固めるべく、完成品サーバーを出したエヌビディア
また、ディープラーニング学習に利用するユーザーは、インターネットなどでサービスを行う企業なので、ハードの構築自体には興味はなく、手早く利用できる高速なシステムを欲している。このため、すぐにでも利用できるシステムを提供する必要があるわけだ。NVIDIAはDIGITSを持っており、CUDAでは著名なディープラーニングフレームワークへの対応が既に終了している。ユーザー企業はDGX-1を購入すれば、すぐにディープラーニング用として使えるようになる。
ただ、ディープラーニング用システムは、市場としてはまだ、それほど大きくない。というのも、クラウドサービスなどの開発段階で利用されることが多いからだ。組み込み系での応用でも、学習自体は開発段階で行うものであり、いわゆる開発機器としての市場規模しかない。
GTC2016の「AI(ディープラーニング)は、既にコンピューティングモデルになった」との主張は、研究開発だけでなく、様々なソフトが利用する基本的な「手法」として普及し、より多くのユーザーがディープラーニングを必要とするようになってほしい、というNVIDIAの希望の「裏返し」でもある。
既に画像認識や音声認識では、実績のあるDNNシステムがあり、例えば画像認識機能を利用したいユーザーは、著名なモデルをベースにして、対象を学習させれば応用可能というところに近づきつつある。こうしたユーザーに、ターンキー的なディープラーニングシステムを提供しようというのが、DGX-1の一つの役目なのであろう。
進展著しい自動車関連分野に注力
ディープラーニングの応用分野としては自動車関連がある。AIといえば、Googleの自動運転車が話題になるが、画像認識や環境認識などは、自動運転以外にも利用される。
もともとエヌビディアは、高性能グラフィックスを利用するデザイン用システムで自動車メーカーとの付き合いがある。これまでクレイモデル(粘土模型)などで車体のデザインを確認していたが、車体設計がCAD化し、車体デザインは高精細な3Dグラフィックスで表示できるようになっている。
エヌビディアはリアルタイム性の高い3Dグラフィックスシステムとして「Irayシステム」を販売している(写真1)。また、トヨタ自動車は、車の操縦系のデザインのために運転車がどのような振る舞いをするのかを調べるシミュレーターを開発したが、その開発にもエヌビディアは協力しているという(写真2)。これは、GTC2016の最終日の基調講演に登壇した研究所のビル・プラット氏の講演で明らかになった。