高速化によるトラフィック増が進む一方で,それに見合った収入が見込めなくなりつつあるという問題は,世界の携帯電話事業者にとって共通の課題だ。ドイツの携帯電話事業者各社は,広告に活路を見いだそうとしている。子会社などを通じて広告事業を拡大しようとするドイツの携帯事業者の動向を紹介する。
(日経コミュニケーション編集部)
携帯電話料金の引き下げ競争が激化するドイツでは,携帯電話事業者は従来のように加入者やトラフィックから十分な収入を上げることが困難になっている。
こうした中,これまで米グーグルや米ヤフーあるいはその他のモバイル広告販売事業者に委託していた広告事業を,携帯電話事業者が独自に立ち上げる動きが出てきた。その背景には,ドイツでは自動車メーカーや金融機関など大手企業がモバイル広告を積極的に利用し始めていることがある。携帯電話各社は,広告市場の拡大による収入増を期待している(図1)。
広告受信でサービスを一部無料に
ドイツ国内3位の携帯事業者であるE-プルスは2009年3月,モバイル広告を手掛ける子会社としてゲッティングスを立ち上げた。6月からは,SMS(short message service)あるいはMMS(multimedia messaging service)でユーザーが広告を受信することで,音声通話やメールの料金が一部無料になるサービスを開始している。
ユーザーは,ゲッティングスのWebサイトから携帯電話番号と興味のあるカテゴリーを入力し,希望するサービス・パッケージを選択する。サービス・パッケージは,「S」,「M」,「L」の3種類が用意されている。
Sを利用すれば,毎月最大10通の企業広告を受信することで15分の音声通話または15通のテキスト・メッセージの無料利用が可能になる。無料サービスを受ける代わりに,1ユーロ(約132円)の金券を受け取ることも可能だ。
同様に,Mでは毎月最大15通の企業広告の受信で,25分の音声通話か25通のテキスト・メッセージの無料利用,あるいは1.5ユーロ(約199円)の金券を受け取れる。Lでは,それぞれが最大25通の企業広告,30分の音声通話,30通のテキスト・メッセージ,2ユーロ(約265円)の金券となる。
ユーザーは希望した広告だけを受信することが保証されており,それにより迷惑メールの受信を避けることができる。このサービスは,同社のポストペイド・ユーザーとプリペイド・ユーザーのいずれもが利用でき,またE-プルスがマルチブランド戦略で展開している多彩なサブブランドの加入者に対しても提供されている。同社では,サブブランドによるマーケット・セグメンテーションによって,有効なターゲット広告配信が可能になるとしている。
このサービスのプラットフォームには,仏アルカテル・ルーセント製のホスト・サーバー「5931 Advertising Selection Server」を採用した。このほか,ターゲティング・サービス・ソリューション・ベンダーのルクセンブルクのワンダーループ,インタラクティブ・マーケティングの独ハンブルク・マーケティングおよび通信事業者向け広告販売の米IMGと提携している。