ヤマト運輸のWebサイトについて、前回までにユーザビリティとSEOの視点から分析してきた。今回はLPO(Landing Page Optimization)的な分析を少し深めてみよう。

 まず入り口となるトップページには、利用者を迷わせる可能性のある要素が2つある。1つ目は「宅急便」のリンクバナーだ。このリンクは、宅急便のトップページへと続いている。一見問題なさそうだ。

 しかしここで、「宅急便を送りたい。荷物を取りに来てくれるかな」と思いつつ、このページに入ってきた利用者を想定してみて欲しい。宅急便の集荷を頼みたいと思っているわけだから、この「宅急便」のリンクバナーをクリックするのが最短距離のように思えるかもしれない。

図1
図1

 ところが少し下のほうに目をやると、「サービス一覧」の「荷物を送りたい」という部分に「集荷を依頼する」というリンクが見える。集荷を依頼したいのだから、こちらをクリックするのが最短かもしれない。

 「宅急便」のリンクバナーからだと、「集荷受付のご案内」まで2クリック。「サービス一覧」の「集荷を依頼する」のリンクからなら、同じページまで1クリックだ。急いでいる利用者にとっては、後者の方がありがたいだろう。

 このような分かりにくさが生じる原因は、「宅急便」へのリンクバナーに説明が何も添えられていないことにある。「宅急便」は誰もが知っているサービス名だが、この「宅急便」のリンクバナーをクリックすると、どんなページが現れるかを、クリック前に予測できる人は少ないはずだ。ヤマト運輸で荷物を送りたいなら、全部「宅急便」だろうと思う人もいるかもしれないが、ヤマト運輸には、大型の荷物を送る「ヤマト便」、チラシやパンフレットを送るための「クロネコメール便」等もあって、「荷物を送りたい人」=「宅急便」のお客さんとは言い切れない。

 しかしトップページで、「宅急便」の他に「ヤマト便」などもあることの説明を追加すると、ごちゃごちゃした使いにくいトップページになってしまう。その代わりに「宅急便」のリンクバナーの下に、「宅急便のトップページ:荷物を送る、受け取る、宅急便の全ての情報があります」などと記述して、クリックしてみなくても宅急便のカテゴリートップであることを分かるようにするのが良い。

 一方、ユーザビリティの記事でも取り上げたように、「Webサービス」というサービス名もビジターを迷わせる可能性がある。

 「クロネコヤマトのWebサービス」の近くには、「もっと簡単・便利にeメール通知、伝票発行、集荷依頼、再配達依頼、宅配ロッカー」とある。よく説明されているように見えるが、予備知識のない人にとっては、「Webサービス」とは手短に言うと何なのかという、全体像を把握できる説明が足りない。パッと見て分かるように、例えば「ホームページから、集荷や再配達の依頼、宅配ロッカー発送依頼などができるサービスです。」というような説明文を付ければよい。「Webサービスとは?」というリンクがあるが、クリックして見なければ分からないものはクリックしないという利用者も多い。

図2
図2

あいまいな「問い合せ」へのリンク

 ヤマト運輸サイトでは、グローバル・ナビゲーションバーに「問い合せ」のリンクが無い。代わりに「よくあるご質問」「ご意見・ご要望」の2つのリンクがある。LPO的な視点で考えると、この点が問い合わせをしたい利用者を迷わせる可能性がある。前回の記事に書いたように、<meta name="keywords" content="宅急便,クロネコヤマト,荷物問い合わせ,集荷,クロネコメール便,クール宅急便"><meta name="description" content="クロネコヤマトで知られるヤマト運輸のサイト。宅急便、荷物のお問い合わせ、集荷受付など。">となっている。つまり「荷物の問い合わせ」という表記が入っている。つまり、「問い合わせ」というキーワードに反応して、検索サイトの検索結果に表示される可能性が高いのである。

 ビジターには「ご意見・ご要望」から、問い合わせや質問をしていいのかどうか、リンクを見ただけは判断できない。「ご意見・ご要望」のリンクをクリックしてみると、見出しは「お問い合わせ窓口」であり、「お客様のご質問・ご意見・ご要望は、下記の入力フォームにてお寄せください。」とある。分からないことはここから質問していいのだ。しかし、それはクリックして読んでみて初めて分かることで、「ご意見・ご要望」というリンクを眺めている利用者の中には、「これは、分からないことを尋ねるためのリンクではないだろう」と想像してしまう人もいるだろう。

 改善方法としては、「ご意見・ご要望」を「お問合せ・ご意見など」として、そのリンクをクリックして行ったページから、「よくあるご質問」にリンクを張るようにした方が分かりやすい。

 検索サイトからビジターを招きいれたら、お招きの言葉どおり丁寧に対応することが必要だろう。これがLPOの真髄であり、Webサイトをマーケティング活用していくときに忘れてはならないポイントの一つだと思われる。

図3
図3[画像のクリックで拡大表示]

監修:古賀雅隆
日経BPコンサルティングチーフコンサルタント
Webサイトのビジネス活用状況を、ユーザビリティ、ブランディング、LPOなどの視点から分析し、改善のためのコンサルティングを手掛ける。企業サイトだけでなく、中央官庁や地方自治体などのサイト活用コンサルティングも担当。