Google TV対応液晶テレビ「NSX-24GT1」の筐体からまずテレビ基板を外し,ヒートシンクの取り外しにかかった。分解に協力してもらっているテレビ技術者が,ヒートシンクを留めているハンダにハンダごてを当てて融かそうと試みる。しかし,なかなか融けない。ヒートシンクに熱が逃げてしまうのだ。
「こんなときは逆にハンダを足すといいんですよ」と技術者の一人が経験を披露する。こてを当てている部分にハンダを足していくと,元のハンダがわずかに融け始めた。少しずつヒートシンクの足を引き抜いていく。そうこうしているうち,ヒートシンクを留めている4本の足のうち,1本が抜けた。コツさえつかんでしまえば難しくない。ほどなく,無事,ヒートシンクを外すことができた。残ったハンダは,金属製の吸いとり線で取り除く。
テレビ基板が搭載しているテレビ向けSoCは,ルネサス エレクトロニクス(元NECエレクトロニクス)のチップだった。パッケージ表面に記された型番は「MC10157F1」。おそらく「EMMA3TL2(MC-10157)」だと推定される。米国のATSC,欧州のDVB,日本のARIB(ISDB)の各方式に対応したデジタル・テレビ向けの画像処理用SoCだ。
ISDBに対応しているということは,日本向けのGoogle TVを容易に開発できることを意味する。復調回路はCANチューナーに内蔵されていると考えられるため,CANチューナーを日本の地上デジタル放送向けの製品に取り替えてB-CASカード・スロットを追加し,ファームウエアを日本向けにすれば,日本向けGoogle TVが出来上がる。
こうなると,ソニーが日本向けテレビにどんなSoCを使っているのかが気になる。コストを削減するためISDBに特化したSoCを使っているのか,全世界でなるべく設計を共通化するためATSC/DVB/ISDB対応のSoCを使っているのか。比較用に用意した22型テレビのテレビ基板のヒートシンクを外してみた。
パッケージにLSIメーカー名はなかった。記された型番は「MC10157BF1」。Google TVが搭載していたSoCと「MC10157」の部分が共通で,末尾が違うだけだ。つまり,これも「EMMA3TL2(MC-10157)」だと考えられる。ほぼ同じテレビ向けSoCが載っていたのだ。
これだけで,ソニーのすべての日本向けテレビがこのチップを採用していると判断するのは早計だ。ただ,少なくとも小型テレビでは,全世界でなるべく同じチップを使うようにしているのではないかと思われる。
(その6に続く)