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ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議に入る。米Tesla(テスラ)や中国・比亜迪(BYD)などが電気自動車(EV)・ソフトウエア定義車両(Software Defined Vehicle:SDV)といった次世代車の領域で存在感を高める中、ホンダ・日産連合はどう戦っていくのか。日経Automotiveが2024年8月号に掲載した特集「ホンダ・日産連合、勝機はあるか」を再掲し、両社の今後を探る。(日経クロステック/日経Automotive)

ホンダと日産自動車が発表した電動化・知能化領域での提携検討。ソフトウエアプラットフォームや電動アクスルのような電気自動車(EV)の中核部品、商品の相互補完など幅広い範囲での協業を探っている。2030年以降の生き残りを見据え、両社は相乗効果をどこに見いだすのか。

 「電動化・知能化の技術革新が従来の事業構造を破壊している。新興企業の攻勢は極めて速く強力だ。変化に対応できない企業は淘汰されるほど厳しい状況と認識している」(ホンダ社長の三部敏宏氏)。

 「新興メーカーが革新的な商品とビジネスモデルとともに参入し、圧倒的な価格競争力やスピードで市場を席巻しようとしている。競争を勝ち抜く上で、これまでの業界の常識や手法に縛られていては到底太刀打ちできない」(日産社長の内田誠氏)。

 ホンダと日産が2024年3月15日に開いた協業検討に関する記者会見。両社トップの発言には新興メーカーの勢いに対する強烈な危機感がにじんでいた。EVシフトを引き金に、ここ数年で自動車産業の勢力図は一変した。

 グローバルでは、米Tesla(テスラ)がソフトによる新たな価値を武器に販売を伸ばした注1)。中国では、中国・比亜迪(BYD)が内製の電池を搭載した低コストなEVとプラグインハイブリッド車(PHEV)を大胆な値下げ戦略で売りさばき、独走態勢に入りつつある。同社を中心とする中国メーカーの攻勢を受け、ホンダと日産もエンジン車やハイブリッド車(HEV)のシェアを奪われている。

注1)調査会社の英JATO Dynamicsによると、同社の主力EV「モデルY」は2023年における車種別の世界販売台数で首位となった。

 ともに中国で苦境に陥るホンダと日産だが、同市場での両社の協業の効果は小さいとの見方が強い。中国事業の戦略はそれぞれの合弁のパートナーの方針にも左右される形となるためだ注2)。では、ホンダと日産の提携の狙いはどこにあるのか(図1)。

注2)ホンダは広州汽車集団と東風汽車集団と、日産は東風汽車と現地合弁会社を共同運営している。
図1 ホンダと日産による協業検討の位置付け
図1 ホンダと日産による協業検討の位置付け
両社の協業が決まれば、トヨタ自動車を中心とするスズキ、マツダ、SUBARU(スバル)などで構成されるEV・ソフトウエア定義車両(Software Defined Vehicle:SDV)の連合に並ぶグループが生まれることになる。(出所:各社の公表内容や取材を基に日経Automotiveが作成)
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