VMware製品のさらなる値上げはありうる――。VMware問題に詳しい米調査会社Gartner(ガートナー)のトニー・ハーヴェイ シニアディレクター アナリストはこう指摘し、ユーザー企業は移行先の検討を始めるべきだと語った。
ハーヴェイ氏は2024年12月3日、ガートナージャパン主催の「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス」に登壇。「BroadcomによるVMwareの買収:I&Oへの影響とその対策」(I&Oはインフラストラクチャー&オペレーションの略)と題する講演をした後、日経クロステックのインタビューに応じた。講演とインタビューの内容から、ハーヴェイ氏が指摘するVMware問題の影響やその対策をまとめる。
VMwareライセンス見直しは「前代未聞」
「今回の米Broadcom(ブロードコム)によるVMware製品のライセンス見直しは、前代未聞と言っても過言ではない。多くのユーザーが憤りを感じ、(対応に追われて)嵐のような1年だったのではないか」とハーヴェイ氏は振り返る。ただ、「ライセンス変更は覆らず、受け入れざるをえない。ユーザーは感情的にならず、冷静に対応することが求められる」(ハーヴェイ氏)と話す。
ガートナーの調査によると、ブロードコムによるVMware製品のライセンス体系の見直しによって、ユーザーは平均で2~4倍のコスト増に見舞われた。増額幅が12倍に及ぶユーザーもいるという。
ブロードコムはVMware製品のライセンス体系見直しについて「今までが安過ぎで本来の適正価格にしただけ」「ライセンス変更はユーザーにとってメリットがある」など説明しているが、「(ライセンス変更を)喜んでいるユーザーを私は1人も知らない」とハーヴェイ氏は指摘する。
ユーザーは製品の品質低下を懸念
またコスト面が注目されがちだが、多くのユーザーが懸念するのは「製品の品質低下」だ。ガートナーの調査でも、今後製品の品質が低下することを心配する声が目立ったという。
これについてハーヴェイ氏は「意外にも、過去ブロードコムは買収した企業の製品への開発投資を怠っていない。製品の開発には力を注ぐ姿勢があり、品質が下がるようなことはあまり考えられない」とする。
一方で強調したのが「サポートレベルの低下」だ。「『製品の品質』にはサポートの要素も含まれる。ブロードコムは米VMware買収後にテクニカルサポート系の人材を大胆にレイオフすることで、コスト削減を図っている。VMware製品のサポートレベルがぐっと下がることは間違いないだろう」(ハーヴェイ氏)とする。