2016年に公開された大ヒット映画「シン・ゴジラ」に続き、2022年には映画「シン・ウルトラマン」が公開された。2023年には映画「シン・仮面ライダー」も公開される予定だ。もともとゴジラは1954年に映画として誕生し、ウルトラマンは1966年、仮面ライダーは1971年にテレビ番組として登場した。COBOLが生まれたのはこれらと時代が近い1959年である。
「シン」は「新」「真」「神」といくつかの意味を持つとされている。そこで今回は、これら3つの観点で「シン・コボル」のあり方について考えてみよう。
新・COBOL
国際標準規格に準拠し、クラウド移行も進む
COBOLはもともと標準言語策定委員会「CODASYL(Conference on Data Systems Languages)」によって開発された共通事務処理用言語だ。最新の第5次規格は2014年に制定された。この「新・COBOL」では、浮動小数点形式に関して次の機能が強化された。
- ISO/IEC 60559(IEEE 754)を反映した2進数および10進数の浮動小数点形式のサポート
- ISO/IEC 60559(IEEE 754)を反映した8種類の丸め形式のサポート
この機能強化の目的は、浮動小数点形式を国際標準規格に準拠させることで、COBOLアプリケーションの移植性を向上させることにある。
筆者が関わっているあるプロジェクトでは、40年前に記述されたCOBOLの演算処理の移植で、浮動小数点形式に関する対応に苦慮している。最終丸めが切り捨てか四捨五入かの違いで、1円の誤差が発生してしまうのだ。COBOLの最新の規格は、こうした問題を解決するための地道な機能強化といえる。
米IBMは、世界最大のCOBOLアプリケーションの稼働プラットフォームであるメインフレームの「IBM Z」を提供している。同社は、2020年10月に「IBM Wazi Developer for Red Hat CodeReady Workspaces 1.1」というサービスをリリースした。これにより、米マイクロソフトの「Visual Studio Code(VS Code)」やオープンソースの「Eclipse」といった標準的な開発ツールを利用し、メインフレームからマルチクラウドまで幅広いプラットフォームに対応するアプリケーションを開発できるようになった。
また米アマゾン・ウエブ・サービス(AWS)は、「AWS Mainframe Modernization」というサービスを2021年11月にプレビューとして公開した。メインフレームの開発環境をAWSに移行しやすくするもので、2022年6月には正式にリリースされた。筆者がかかわっているチームでも、このサービスを本格的に使い始めている。このチームでは、フィリピンや日本のCOBOL技術者とクラウド技術者が協力し、30年物のCOBOLアプリケーションのクラウド移行に取り組んでいる。