世界中で生成AI(人工知能)の活用が一気に加速している。企業では経営の意思決定の高速化に生成AIを活用するなど、DX(デジタル変革)の一環として生成AIの導入が進められている。まさに生成AIが経営を変え、事業を変えつつある。
ただ、特に日本では生成AIについて「ある種のごまかし」あるいは「見て見ぬふり」が続いている。AIが人から雇用を奪うという動かしがたい現実から目をそらしているのだ。だが、既にAIを活用したリストラは始まっている。日本経済新聞電子版の2024年12月3日付の報道によると、イタリアの金融機関BPERバンカはAI導入により、約2000人を数年で削減する方針だという。
生成AIは人から雇用を奪う――。その現実から目をそらさせる世間受けのよい対処法は「人は人にしかできない業務にシフトすればよい」というものだ。それに今は「空前の人手不足」だから、AIを導入しても雇用危機は訪れないし、むしろ人手不足の解消に役に立つ。そんな言説が日本ではまかり通っているが、ごまかし以外の何物でもない。
そもそも、生成AIにはできず人にしかできない業務とは、いったいどれくらいあるのか。システム開発ならコーディング作業はAIに任せられるようになりつつある。まもなく上流のエンジニアリングも対応できるようになるだろう。そうなったとき、IT技術者はいったい何をやるのか。もちろん、全ての技術者が不要になるわけではないが、技術者の仕事を続けられる人はどんどん限られていくはずだ。
そして空前の人手不足もいずれ終わるときが来る。考えてほしいのは、生成AIが足りない人の分を穴埋めできるなら、今働いている人も代替できるということだ。日本でもこの問題に向き合わなければならないときが、数年の短いスパンでやって来ると覚悟したほうがよい。