Q.新卒でソフトハウスに入社、現在も勤務するエンジニア(27歳)です。自社への出社は月1回です。実際の勤務場所は取引先の大手IT企業で、とても居心地がいいです。プロジェクト状況に応じてテレワークも可です。プロジェクトリーダーとの雑談中に取引先企業が「中途採用の募集をしている」と聞きました。同社は自社よりビジネス環境も給与も良いと知っています。転職がかなうのであれば応募したいです。ただし転職できたとして、会社間で面倒なトラブルにならないかが心配です。
質問者には転職の経験がなく、会社間のトラブルを気にしています。転職のきっかけは人それぞれです。労働時間や給与面の不満から同業他社へ転職するケースのほか、全く別の業界に転職する人もいます。
質問者は、常駐する勤務先の大手IT企業では、給与やビジネス環境を含めて好条件であると分かっています。心が揺れるのは当然です。中途採用の情報を知ったことはチャンスです。このようなチャンスをつかむか否かで人生が変わることもあります。
仮に、中途採用に応募しなかったと想像しましょう。後々ずっと後悔すると思うのであれば、とりあえず応募してはいかがでしょうか。
転職しやすいビジネス環境に変化
従来「終身雇用制」「年功型賃金」を当然の労働環境だとして、企業・従業員共に捉えていました。今、こうした制度は崩壊してきたと言えます。単純な年功型賃金は、もはや時代に合っていません。日本の人口と同じく、企業内も高齢化しています。企業は従業員の勤務年数や年齢によって給与を上げ続けるのは難しいです。
年功型から職務給(従事する仕事の内容や職務の価値で決定する賃金)を重視する会社が増えてきました。給与に占める職務給の割合が大きいほど、年功型よりも職務給を重視して移行している企業と言えます。
例えば、「ジョブ型」雇用をアピールする企業では、職務に応じた給与体系を採用しています。職務内容と給与(職務給)がひも付く賃金テーブルをイメージしてください。職務のレベルに応じて、仕事内容や役割を定義します。仕事や役割の難度が高くなるほど、職務給は上がります。
完全なジョブ型雇用下における職務給制度では、勤続年数や年齢による有利・不利はありません。職務給制度を重視する会社が増えるほど、転職しやすい環境になるということです。
終身雇用制度の下、定年まで勤め上げ、満額の退職金をもらって老後の資金に充てるといった考え方も変わってきました。退職金制度を廃止して企業年金(確定拠出年金など)に移行した企業もあります。掛けてきた資産は、自己都合による退職後も引き継げます。
そもそも、若い世代のエンジニアは、定年時に支給される退職金のことまで意識して働いていません。労働環境の変化から、今後は人材の流動(転職)がさらに活性化していくはずだと筆者は考えます。