「プラグ・アンド・チャージ(PnC)」システムとは、電気自動車(EV)の充電口に急速充電器のケーブルを差し込むだけで充電と決済ができる充電システムのことである。旅行先などでの「目的地充電」作業を簡素化できるため、EVの利用環境の改善が期待できる(図1)。
日本でEVを普及させるには、顧客に受け入れてもらえる車両の投入に加えて、目的地充電で利用する「公共充電ネットワーク」の数を増やし、その利便性を高めることが求められる。「差すだけ充電」を可能にするPnCシステムは、公共充電ネットワークを利用しやすくする重要な技術といえる。
現在、日本で急速充電器を利用する際は、米Tesla(テスラ)のEVと急速充電器を除いて、充電する車両の特定や充電料金を決済するための認証処理を、EVユーザー自身が手作業で行う必要がある(図2)。
具体的には、充電サービス事業者などが発行する充電用カードを充電ステーションにある認証器にかざしたり、スマートフォンの充電アプリを操作したりしなければならない。PnCシステムであれば、こうした手作業が不要になる。
PnCシステムの実用化では米国が先行する。前述したように、TeslaのEVと急速充電器「スーパーチャージャー」はPnCシステムに対応している。同社が普及を進める急速充電規格「NACS (North American Charging Standard)」に準拠したものである。
欧州でも実用化が進む。ドイツBMWや同Porsche(ポルシェ)などが販売するEVが対応しており、欧州の急速充電規格「CCS (Combined Charging System)」に準拠したPnCシステムの急速充電器も設置が始まっている。
これに対して現時点で、日本は後れを取る。日本の急速充電規格「CHAdeMO(チャデモ)」に準拠したEVと急速充電器は、PnCシステムに対応できていない。