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 「CentOS」の開発コミュニティーが2020年12月にサポート期間の短縮や開発計画の変更を発表し、企業ユーザーが当惑する中、日本のLinuxディストリビューション「MIRACLE LINUX」がポストCentOSに名乗りを上げた。MIRACLE LINUXはもともと有償OSとしてサイバートラストが開発・販売してきたRed Hat Enterprise Linux(RHEL)互換OSである。

 ポストCentOSが注目を集める背景は次のようなものだ。

 CentOSは商用LinuxのRHELと互換性があり、無償で公開されて人気を博してきた。CentOSの開発コミュニティーであるCentOS ProjectはRHELの開発元である米Red Hat(レッドハット)の支援を受けていた。そのこともあり、CentOSはレッドハット公認の「無償版RHEL」として企業の情報システムなどでもよく使われてきた。

 ところが2020年12月にCentOS Projectはサポート期間の短縮や開発計画の変更を発表した。最新版の「CentOS 8」は当初2029年5月までを予定していたサポートを2021年12月31日に打ち切る。計画していた後継版「CentOS 9」の開発も停止した。

CentOS ProjectはCentOS 8のサポートを2021年12月末で打ち切る
CentOS ProjectはCentOS 8のサポートを2021年12月末で打ち切る
(出所:CentOS Project)
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 それから1年が経過し、はしごを外された格好のCentOSユーザー向けに、「ポストCentOS」を提供する動きが相次いでいる。CentOS Projectの創設者であるグレゴリー・クルツァー氏がThe Rocky Enterprise Software Foundationを設立し、2021年6月に最初の公式ディストリビューション「Rocky Linux 8.4」を公開した。また商用ディストリビューション「CloudLinux OS」を手掛ける米CloudLinuxが主導してAlmaLinux OS Foundationを設立、「AlmaLinux OS」をコミュニティーベースで開発して2021年3月に最初の安定版を公開している。

 MIRACLE LINUXがポストCentOSに名乗りを上げたのは、こうした動きの1つである。

 開発・販売元のサイバートラストはCentOSの受け皿となるため、まず2021年10月にMIRACLE LINUX 8.4の無償提供を開始。サポート打ち切りを目前に控えた2021年12月16日には、後継版でレッドハットが開発中の「RHEL 9」と互換性がある「MIRACLE LINUX 9」を開発し、無償公開すると発表した。「MIRACLE LINUXは今後、未来にわたってライセンスを無償にする」(サイバートラストの鈴木庸陛執行役員OSS・IoT事業部OSSビジネス本部長)と宣言した。