Global Wind Energy Council(世界風力会議=GWEC、本部ブリュッセル) は2021年10月7~8日に北九州市で開催された「世界洋上風力サミット」で、「日本の洋上風力発電の導入可能量は、日本の全電力需要量の8倍になる」と発言した。もちろん、これは洋上風車を技術的に設置可能かどうかしかみておらず、それ以外のさまざまな制約、例えば漁業との折り合いや景観保護、陸上の送電線との連系の可否などは考慮していない。それでも、日本の再生可能エネルギーの今後を議論する上では重要なデータになりそうだ。
講演したのは、GWEC、Chair of Global Offshore Wind Task ForceのAlastair Dutton氏。10月7日にオンラインで登壇した。
世界で2050年に計2000GWの洋上風車を導入へ
Dutton氏は、まず世界の洋上風力発電施設の導入状況について触れた。それによれば、洋上風車の累積導入量は定格出力ベースで35.4GW。2020年だけで6.1GW分が新規に導入されたという。
2020年半ば時点での洋上風力発電の均等化発電原価(Levelized Cost Of Energy:LCOE)は約8.3米セント/kWhで、2012年の約1/3に低減したという。そして、2025年末までには5.8米セント/kWhに下がる見通しだとする。
そして今後、地球の平均気温を2050年時点でセ氏1.5度増に収めるためには、同年で計2000GWの洋上風力が必要だとした。その目標に向けて、2030年には年間で40GWで累計270GW、2040年には年間80GWで累計740GW、2050年には年間160GWを導入と、導入ペースを大幅に高めていく必要があるとした。一見、猛烈な勢いにみえるが、導入量の年間伸び率は7~12%超で、最近のさまざまな成長産業と比べて特段高くはない。
「日本は1897GWの洋上風車を導入可能」
Dutton氏は日本の今後の可能性についても触れた。GWECが推定した日本の洋上風力発電の潜在的な導入可能量は、定格出力ベースで1897GW(18億9700万kW)だという。その内訳は、着床式洋上風力が122GW、浮体式洋上風力が1775GWで、これらの発電量は日本の現在の年間電力消費量の8倍になるという。
その計算の詳細は示していないが、着床式の設備稼働率を35%、浮体式を同45%と仮定して年間発電量を計算すると、着床式が374TWh、浮体式が6997TWhで、合計7371TWhとなる。
日本の最近の年間電力消費量は約1000TWh弱。仮に980TWhとすると、7371TWhはその約7.5倍。四捨五入すればこれでも8倍にはなるが、GWECは、洋上風力の設備稼働率を上記の仮定の値よりやや高くみている可能性がありそうだ。
環境省の推定値は日本の電力消費量の約3.5倍
ちなみに、環境省が2019年度に発表した 調査報告書 令和元年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開等に関する委託業務報告書 では、日本の洋上風力の導入可能量は定格出力ベースで着床式が337.34GW、浮体式が782.88GWで、計1120.22GW、年間発電量ベースで計3460.7TWhで、日本の年間電力消費量の約3.5倍となる。
これらの値は、着床式では環境省の推定値がGWECの約3倍、逆に浮体式ではGWECの半分弱と大きく異なっている。
環境省の着床式での推定値が大幅に多い理由は明確ではないが、推定に利用している風況データがやや異なるのが要因かもしれない。GWECが同サミットで示した日本沿岸の風況の推定値を見ると、着床式が中心になる沿岸近くでは、平均風速を環境省の推定値よりも遅めに、浮体式が中心になる沿岸からやや離れた領域ではやや速めになっている傾向があるからだ。
浮体式についての導入可能量の推定値の違いは、主に浮体式の風車を設置可能とする条件の違いによるものだと推定できる。具体的には、環境省が海岸からの距離(離岸距離)が30km以内、水深200mまでという条件を課している一方で、GWECの評価には離岸距離の条件がなく、排他的経済水域(EEZ)内のすべてを想定。水深も1000mまでとしている。