リコール総数が1000万台に拡大──。デンソーの欠陥燃料ポンプが自動車メーカーに与える影響が甚大な域に達した。2021年3月末にホンダが世界で約134万台のリコールの実施を決定。このリコールの原因も、品質不具合を抱えたデンソー製燃料ポンプであることが自動車業界関係者への取材で判明した。これにより、同社製燃料ポンプの品質不具合が原因のリコールは、世界で合計1013万台にまで積み上がった。発覚から1年以上が経過しているにもかかわらず、この品質問題はいまだに拡大し続けている。
品質不具合の原因は、低圧燃料ポンプの樹脂製インペラ(羽根車)にある。このインペラが燃料であるガソリンを含んで膨潤し、ポンプケースと接触して作動不良を起こす。最悪の場合、走行中にエンジンが停止する恐れがある。
今回のホンダ車のリコールで、最も多いのは米国の62万8124台。「Accord」「Acura RDX」「Civic Hatchback」「CR-V」「Fit」など19車種にわたる。日本では「インサイト」「CR-V」「LEGEND」など4車種で1万9430台のリコールをホンダは届け出た。
問題が一向に収束を見せず、過去に経験がない規模にリコールが拡大したことを受け、トヨタ自動車やデンソーのOBからは、デンソーに向けて叱咤(しった)激励を超えた厳しい言葉が飛ぶ。「トヨタ自動車の1年分の販売台数が丸ごとリコールになる量だ。異常な事態と言わざるを得ない」「数十万台でも社内がひっくり返るほど大変なのに、1000万台を超えるリコールとは想像すらできない」「かつては『品質のデンソー』とまで言われていたのに、一体何をしているのか」「トップをはじめ、今のデンソーに危機感はあるのか」──といった具合だ。