音空間事業本部 平田 昌之 福村 薫美 福満 英章 安田 紗知子 神﨑 優
お客様の声
音楽スタジオというのは大抵どこも同じような作りに見えます。恐らくそれが、これまで技術者の方々が試行錯誤を繰り返し、たどり着いたひとつの答えなのかもしれません。完成された料理のレシピに、どれも余り違いがないことと同じではないでしょうか。
ただ今回スタジオを作るにあたり、そのようないつも仕事で訪れるスタジオとは違う、一見すれば音楽スタジオとは思えないような部屋にしたいという思いが強くありました。外の光を見ながらピアノをひき、季節の匂いを感じながら歌詞を考えたい、日本音響エンジニアリングの方々との打合せは、まずその思いを伝えることから始めました。
定番の音響用ファブリッククロスではなく、アール・デコ調の壁紙を選択することはできるのか、空を見るために窓を広くとることは可能なのか、私の突飛な質問にも、「できないことはありませんが......」と少し困った表情で前置きされつつ、費用がかさんだり、なによりも音響面を犠牲にしてしまうため推奨できないことを、無学な私にも分かりやすく説明してくださいました。
限られた選択肢の中で、どこまで自分の理想を形にできるのか。じっくりと時間をかけ、打合せを重ねました。コロナ禍の影響により工期が延びましたが、そのたび平田様はじめ日本音響エンジニアリングの皆さまは最善の解決案を算段してくださり、また私からの無理なお願いに対しても、プロフェッショナルなこだわりのもと次々とかなえてくださいました。そうしてスタジオが出来上がったときには、最初にご連絡してから実に3度目の春が訪れようとしていました。
青緑色の扉を開けるたび、そこに広がる空間に心が躍ります。