記事のポイント
- 世界最大のノルウェー政府系ファンドがイスラエル通信企業への投資から撤退した
- 倫理基準を厳格化し、懸念の残る企業から相次いで投資を引き揚げた
- イスラエル企業のほか、ロシア兵器と関連がある企業の株式も売却した
ノルウェー政府年金基金は12月3日、イスラエル通信企業・ベゼク社からの投資を引き揚げた。今年8月にファンドの倫理基準を見直し、より厳格化した基準の下、懸念の残る企業からの撤退を進める。イスラエル企業のほか、ロシア兵器と関連がある企業の株式も売却しており、今後も倫理基準に照らしたさらなる投資撤退が予想される。(オルタナ副編集長=北村佳代子)
ノルウェー政府年金基金は、資産運用規模が約1.8兆ドル(約273兆円)の世界最大の投資ファンドだ。世界の上場株式の約1.5%に相当する8700社の株式を所有し、日本株も2024年6月末現在、1400超の銘柄を保有する。
同ファンドはESG投資分野において世界のリーダー的存在だ。2023年の日本の株主総会では、女性取締役を一人も選任しない100社超の取締役選任決議に反対票を投じた。
■倫理基準への抵触でダイベストメントの判断に
ノルウェー政府年金基金は12月3日、イスラエルの大手通信企業ベゼク社の全株式を売却したことを明らかにした。2024年初の時点で、同ファンドはベゼク社の全株式の2.2%を保有し、6月末時点では0.76%にまで減っていた。
2023年10月にガザ地区での戦闘が開始して以来、同ファンドでは、投資ガイドラインと照らした調査を実施してきた。ベゼク社からの投資撤退に先立ち、ヨルダン川西岸地区で事業を展開する9社から撤退した。
それら企業は、東エルサレムとヨルダン川西岸地区にあるイスラエル入植地での道路や住宅の建設を行う企業や、ヨルダン川西岸地区を囲むイスラエルの壁のための監視システムの提供を行う企業などだ。
ベゼク社からの投資撤退を勧告した監視機関は、「ベゼク社は、ヨルダン川西岸地区のイスラエル入植地に物理的に存在し、通信サービスを提供することで、国際法に違反するこれらの入植地の維持と拡大を促進している」とした。
ベゼク社は、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人居住区にも通信サービスを提供している。しかしそれを踏まえても、「イスラエル入植地にサービスを提供している事実を覆すものではない」とし、人権侵害に加担している可能性があると判断した。
国際司法裁判所は2024年7月、「イスラエルの入植政策、およびイスラエルによる地域内の天然資源の利用方法は占領そのもので、国際法に抵触する」と判断した。同ファンドの監視機関は、この内容に基づいて新たな倫理違反の定義を定めた。
ノルウェーには、1993年にイスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)とが初めて和平交渉に合意したオスロ合意で仲介役を務めた歴史もある。2024年5月には、ノルウェーは、スペイン、アイルランドとともに、パレスチナを国家として承認した。
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