記事のポイント
- 資金繰りが厳しい林業界にとって、「Jクレジット」は一筋の光明だ
- だが、Jクレジットの発行は非常に工数が掛かり、売れる保証もない
- そこで、中小の森林所有者向けに森の健康を資産として認証する動きがある
日本のCO2排出権取引と言えるJクレジット。このところ森林所有者の間では期待が膨らんでいる。森林が吸収する炭素を金に換えることができたら、資金繰りが厳しい林業界にとって一筋の光明となるからだろう。(森林ジャーナリスト=田中 淳夫)
ただ、Jクレジットの発行は簡単ではない。林野庁も手順を示しているが、現実には非常に手間がかかる。クレジットの認証・発行までには、森林がCO2を吸収するように管理プロジェクトを作成することと、CO2のモニタリング(削減量や吸収量を算定するための計測)を踏まえなくてはならない。
さらに関門となるのは、仮に発行してもクレジットの購入者が必ず現れるという保証はない点だ。方法は、売り出し一覧のホームページに掲載して声のかかるのを待つか、仲介業者に任せるなどのほか、自身で購入者を見つけて来なくてはならない。
しかも、基準は炭素1トンあたり1万円とされるが、これでまとまった金額となるのは大面積所有者だけだろう。日本の森林所有者の大半は、3ヘクタール以下である。それでは金額は些少で意味がない。
もっと中小の森林所有者向きの認証はないか。そう考えて独自の認証を立ち上げたところがある。静岡県浜松市にある森林健康経営協会だ。
代表は会計専門家でありドラッカーに関する著作も多い経営コンサルタントの浅沼宏和氏。ほか環境や生態系の専門家や林業専門家、社会起業家などもメンバーに入っている。
■森の「健康」も無形資産に