記事のポイント
- ヤマトHDは26年度までに環境投資800億円を投じ、事業変革に挑む
- サステナビリティ・トランスフォーメーションを掲げ、脱炭素と収益の両立へ
- SXに向けて陣頭指揮を執るヤマト運輸の福田靖・執行役員に聞いた
ヤマトホールディングスは、2026年度までに環境投資800億円を投じ、サステナビリティ・トランスフォーメーションの実現を目指す。長尾裕社長をはじめ、経営陣が率先して事業変革に取り組む。変革に向けて陣頭指揮を執るヤマト運輸の福田靖・執行役員(グリーンイノベーション開発、サステナビリティ推進 統括)に移行戦略を聞いた。(聞き手・池田真隆=オルタナ副編集長、撮影=髙橋慎一)
――新中計では27年3月期の営業収益を2兆-2兆4千億円としました。どのようにして脱炭素と収益の両立を実現しますか。
24年3月期の営業収益は1兆7650億円の見通しですが、2兆4千億円(27年3月期)を狙います。「基盤事業」である国内輸配送事業(1兆6350億円、24年3月期)では、気候変動に配慮した輸送サービスによる提供価値の拡大とプライシング戦略の強化などに取り組み、1兆8千億円(27年3月期)を目指します。
事業ポートフォリオの変革も行います。特に、日本発着の越境ECなどの「グローバル事業」、在庫管理や流通加工など、顧客企業のロジスティクス企画に参画・支援する「CL(コントラクト・ロジスティクス)事業」を「成長領域」と位置付け、6600億円を目指します。
現状はこの2つの事業の営業収益は2100億円なので27年3月期までに214%の伸び率になる見込みです。
50年の温室効果ガス(GHG)自社排出量実質ゼロに向けた中間目標として、30年までに20年度比48%削減を掲げています。
脱炭素と収益の両立を図るためにも、「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」がカギです。2030年までを一区切りとして、直近3カ年を「1stStage」と位置づけ、中期経営計画のもとグリーン物流に向けた取り組みを進めていきます。
――SXを言い出したのは誰でしょうか。
以前から持続可能な物流の実現に向けたグリーン物流の必要性については、会社として積極的に推進してきました。3年前、社長の長尾は「気候変動対策推進のための有識者会議」でEV導入とカートリッジ式バッテリーの必要性を発信してきました。
社会的インフラである「物流」を担うために、GHGを排出し続けていいのか、未来の社会のためにもグリーンな物流に変わるべきだと方針を示していました。
そうした方針のもと、私もグリーン物流の実現に向けて陣頭指揮を執ってきました。SXに向けた環境が整ったと考えたので、これからの3年で本格的に取り組みを加速していきます。
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