記事のポイント
- 新NISA制度など国を挙げての「貯蓄から投資へ」は、なかなか定着しない
- 一方、将来の年金への不安に関しては、いまや多くの日本人の共通課題だ
- だが、投信業界が国民の資産形成に本気で貢献できるのか、大いに疑問が残る
国を挙げての「貯蓄から投資へ」は、なかなか定着しない。2024年1月から新NISA制度が導入され、証券会社はじめ金融機関は大騒ぎだった。その高揚感も、夏頃には沈静化してきたようで、最近では新NISAが話題になることはめっきり減った。(さわかみホールディングス社長=澤上 篤人)
たしかに、投資慣れした中高年層や若い人たちの一部が新NISAに色めき立ったが、それは短期売買での税優遇を期待してのものだ。国民の多くは、せいぜい関心を示す程度に終始している。それどころか投資は難しい、面倒くさい、リスクが大きいなどで、相変わらず預貯金から一歩も離れようとしない。
そんな投資には距離を置きたがる国民性だが、老後や将来の年金への不安に関しては、いまや多くの日本人の共通認識となっている。それもあって、資産形成の必要性は誰もが重々承知している。国としても、「貯蓄から投資へ」政策はなんとしても進めたいところだ。
そういったニーズの高まりに対し、証券会社はじめ金融機関の大半は、自社の利益拡大に汲々としている。たとえば投信各社は、それこそ猫もしゃくしも状態で、つみたてNISAに照準を合わせた投信を次々と設定していて、その数は軽く200本を超えている。
問題はそれら投信ファンドの一体どれだけが、20~30年といった時間軸で積み立て投資の素晴らしさを投資家顧客に届けようとしているのかだ。
これまで日本の投信業界では、平均運用実績は3年前後でしかなかった。そんな投信会社が果たしてどこまで長期運用責任を果せるのか。
■投信業界に「責任」問え