■ALTキーワード:スプリンターネット
ウクライナ戦争が「ネットの分断化」という問題も浮き彫りにしている。スプリンターネット(splinternet)、サイバー・バルカニゼーション(cyber-balkanization)などと表現される問題だ。(もり ひろし)
ネットの分断化とは、広義には商業・政治などの都合のため「障壁なき情報アクセスが難しくなる状況」をいう。商業的な分断例をあげると「かつてガラケーとパソコンとで接触可能な情報空間が実質別だった状況」などがある。
直近で深刻な課題は政治を背景にした分断だ。「中国が運用する検閲システム」や「ロシアが主権インターネット法(2019年)に基づき行う規制」などがネット環境を国ごとに分断しつつある。
またウクライナ侵攻を受けて大手SNSがロシア市場から撤退したことも、「プロパガンダへのカウンターが伝わりにくくなる」などの副作用をもたらした。
専制・独裁への復古傾向を受け、近年ネットの自由度は世界規模で低下しているという(参考:Freedom on the Net 2021/Freedom House)。「開かれたネット環境」の理念は危機に瀕している。