うまい「毒きのこ」があるという

 雨がぱらつくなか、期日前投票をしてきた。私の前のおばあさんが、比例代表の投票箱の前で、「入れたい党がないんだけど、何も書かないで投票してもいいの、書いたほうがいいの」と投票所のスタッフに聞いていた。スタッフは苦笑いで「いいかどうかと聞かれましても・・・」。中盤戦の聞き取りでは、自民圧勝の予想だが、このおばあさんのように困惑している人がたくさんいて、分からないから現状維持で自民党にしておく人も多そうだ。
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 きのこご飯の美味しい季節だ。
 こないだ、山形県白鷹町の佐藤さん夫妻から、きのこのおもしろい話を聞いた。
 「ほんとにうまいきのこが、何年か前に急に『毒きのこ』だとお達しがきて、お客さんに出せなくなった」という。杉の切り株に生えるスギカノカ(スギヒラタケ)というきのこ。味噌汁に入れると実に香りのよいきのこだったのに、腎臓の悪い人にとっては毒になることが最近分かって「毒きのこ」に指定された。そのため、佐藤さんがやっている民宿でも出せなくなって残念だという。
 そんなことがあるのかとネットで検索すると、たしかに農水省のHPに「スギヒラタケは食べないで!」として以下の記述がある。

《かつては、スギヒラタケは食べられるきのこと考えられていました。そのため、日本では栽培されていないものの、東北、北陸、中部地方を中心に野生のものが広く食べられていました。しかし、平成16年以降、それらの地域でスギヒラタケを食べたことが原因と考えられる病気(急性脳症:意識障害やけいれんが主な症状)が多数報告されるようになりました。》
《農林水産省や厚生労働省が原因究明のための調査研究を実施してきましたが、スギヒラタケが安全に食べられるきのこかどうかは現時点ではわかっていません。》
 ごくごく一部の人にとって体に良くない(らしい)というだけだが、農水省としては注意喚起するしかないのだろう。しかし、こうなると、いったい「毒」とは何か、考えてしまう。アレルギー体質の人にとっては、卵や小麦などのごく普通の食材が命取りになる場合もあるし、多くの薬品には副作用があるではないか。
 佐藤さん、さらに「味シメジなどと言うけれど、ハエトリキノコ(ハエトリシメジ)のうまさはシメジどころでない。絶品だ。いっぱい食うとちょっと目が回るけどよ」という。
 このきのこ、名前の通り、ハエ取りに使われたという。火であぶって酢を垂らして置いておくと、ハエが寄ってきてはコロコロと死んでいくそうだ。うまいのだが、食べ過ぎるとハイになるというのだ。

 「ハエトリシメジ」Wikipediaの説明では、
《名前から毒キノコのようにも思えるが、ハエにとっては有毒であっても、ヒトにとってはうま味成分のトリコロミン酸を含み食用になる。ただし、ハエトリシメジには類縁体のイボテン酸も含まれる。このイボテン酸もうま味成分であるが、テングタケやベニテングタケにも含まれる毒成分であるため、ハエトリシメジを大量に食べるべきではない。食べ過ぎると悪酔い状態(精神高揚あるいは精神抑制、錯乱、幻覚、震え、痙攣など)になることがある。》
 死に至るような毒性ではないらしい。実際に食べてみた人の体験談もネットにあるが、旨かったという。http://www.geocities.jp/wakabayashi3990701/kindan.htm
 佐藤夫妻のきのこ談義はつきない。森の植生とそれぞれのポイントに生えるきのこがあり、森の経年につれて種類が変化していくことなど、山の自然の奥深い話は、実におもしろい。こんど一緒に山に入っていろいろ教わりたいものだ。ついでにうまい毒きのこも採ろう。