「不公正」に対する怒りを理解せよ

takase222015-02-26

月末だ。また、資金繰りの算段。
このところ放送番組がないので入金が少なく、一方、仕掛かり中の企画の海外取材が何本かあって出費が多くなる。ここ1年で最も資金繰りが厳しい時期に突入する。
数字を見ると、うーん、と思わず唸り声が出る。

よく、「大変ですね」と言われるが、実際は精神的には大したことはない。
こんな厳しさも一つの得難い体験と思っている。精神的にとてもタフになっているのを実感する。5年前の倒産寸前の時も、夜眠れないということがほとんどなかった。
またきっと乗り切れるはずだ。
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今朝の朝日新聞の一面に『イスラム国とは何か』の広告が載った。おお、やっと・・・
これは、イスラム国のリアルを伝える最良の本だと思うので、多くの人に読んでほしい。安倍内閣が米国に追随して、日本が中東の新たな紛争の泥沼に足を踏み入れないためにも。
アマゾンでは2〜3週間待ちのようで、お急ぎの方は書店でご注文ください。
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先日読んだ酒井啓子さん(千葉大教授)の「シャルリー・エブド襲撃事件が浮き彫りにしたもの」(『世界』3月号)は、読み応えのある素晴らしい論文だった。
この事件をどうとらえたらよいか迷っていたが、これを読んで論点も整理でき、どこに希望の種があるのかの見当がついた。
彼女の書くものには、いつも考えさせられる問題提起がある。
きょうの朝日朝刊に、「『命の値段』が異なる理不尽」という酒井さんの文章が載っていた。

《(略)
命の値段には違いがある。テロリストが外国人を惨(むご)たらしい姿で殺害するのは、その命が「高い」とわかっているからだ。ISに乗っ取られたシリアとイラクで、殺されているのは外国人ではなく、専らイスラーム教徒だ。2011年の内戦以来、シリアでの死者は18万人を超え、イラクではIS侵攻以来、毎日100人弱が亡くなっている。

 だが、それでは世界は動かない。日本人のだれが、毎日数百人の中東での犠牲者に追悼記事を書くだろうか。今回の人質殺害事件で、イラクのアラビア語紙が紙面半分を割いて、日本人の死を悼む論を掲載したというのに。

 彼らの命と私たちの命は同じだ、と一番実感している日本人は、中東で取材したり駐在したりしている人々だろう。03年に2人の外交官が殺害されたときには、イラク人の運転手も殺された。04年に殺害されたジャーナリストの橋田信介さんと小川功太郎さんの脇には、日本人ではない遺体があった。危険を共有する人々にとって、命の重みは同じだ。

 国籍は違っても目の前の同じ命を救いたいと感じ、日本人として何かしなければと思う。報道を、援助を、貿易を、交流を通じて。人道支援の核はここにある。命の値段の「高さ」を当たり前に考え、遠く危険の及ばないところから行う支援は、施しにすぎない。

 しかしその命の等価性を引き裂くものが二つある。外国人の「高い」命を危険に晒して、多くの見返りを得ようとするテロリスト。そして、「高い」命なのだから危険に近づくなと、自国民の命だけを大事にする国内の空気。

 後藤健二さんの紛争地報道への意欲も、政府の難民支援も、世界から見向きもされない命に手を差し伸べることから始まったはずだ。だが、人質事件への対応の過程で、中東の人々の命の値段はますます、日本人の命と乖離(かいり)していく。日本人を守るために、同じく拘束されたヨルダン人の安否は蔑(ないがし)ろにしてもよい、という空気が流れる。

 そして今、日本人だけを守るためにどうするかに議論が集中している。では日本人とともに生きる現地の人々の命は誰が守るのか。なぜ同じ暴力の犠牲になっている人々全体を守ろうとは考えないのか。

 日本はイスラームや中東の理解が足りない、と言われる。だが、欠けているのは知識ではない。「不公正」に対する怒りへの理解だ。

 命の値段が違う。パリのテロには世界が連帯するが、武装勢力ボコ・ハラムがアフリカで何百人の住民を殺害しても、世界は動かない。白人の暴力は事故とされるが、イスラーム教徒の暴力はテロ扱いだ。

 その都合いい基準、不公正に、中東・イスラーム社会の人々は傷つき怒っている。彼らは、そのことをこそ、わかってほしいと思っている。》
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カナダで作られた動画が話題を呼んでいる。
Blind Trust Project

街角に目隠しをした男性が両手を広げて立っている。足元には「私はイスラム教徒です。テロリストとレッテルを貼られています。」「私はあなたを信頼します。あなたは私を信頼しますか。ハグしてください」と書いた紙が置いてある。
すると、つぎつぎにこの男性にハグする人が現れる映像が流れる。イスラム恐怖症が広がるのを恐れるイスラム教徒が制作したという。
https://www.youtube.com/watch?v=HNUHnzkojag

こうした基本的な感覚をみんなで共有したいものだ。