消えた「同一価値労働同一賃金」

サンプロ放送回が残り少なくなってきた。
きょうの特集「シリーズ日本の雇用2:《均等待遇》阻む壁〜消えた『同一価値労働同一賃金』原則〜」が、私たちの最後の担当になる。以下、ホームページ番組宣伝より;
《今国会に派遣法改正案が提出されようとしている。だが、この改正案では、正規雇用と派遣・パートなど非正規雇用の賃金差別は解消されない。“正規”“非正規”の格差が広がる中、一つの言葉が注目を集めている。
「同一価値労働同一賃金」の原則
これは同一価値労働において“正規”“非正規”間の格差を是正し、均等待遇を実現する原則だ。
欧州ではこの原則の下、均等待遇を実現している。日本でも、“非正規”の割合増加を背景に、民主党の支持団体である連合などがこの原則の必要性を口にし始めた。
実は、日本にもこの原則が法律に入れられる機会はあったのだ。
我々は消えた同一価値労働同一賃金原則の謎を独走追跡。取材のなか辿り着いたのは、歪められた賃金原則の歴史だった。そして、連合と彼らが支持する民主党政権は、広がる格差にどう対応しようとするのか?「均等待遇」を阻む壁に迫る!!》
去年の「日本の雇用」第1回の特集「派遣法誕生」は、取材対象からBPOへと訴えられるなど波紋を広げたが、結局は「シロ」判定が下った。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20091110
そのシリーズの2回目で、今回は、派遣法改正のもっと基本のところを問題にした。
VTRに出てきたイギリスの女性が、趣味にいそしみたいからと、自らフルタイムからパートタイムに変えて合唱を楽しむ姿は羨ましかった。彼女は、週5日から3日労働に変わったが、時間あたりの賃金や手当は正規雇用者と同じ。年金や休暇なども勤務日数に応じて比例配分されるという。要するに、給与などいろんなものが5分の3になるだけなのだ。
日本では、正規とパートの差は、単に給与の違いだけでなく「身分差別」に近いものがある。もちろん時給は何倍も違う。
「子どもの貧困率」で日本は、30カ国中19位と、OECDの平均より悪いことが明らかになった。特に、離婚などによる「ひとり親世帯」の貧困率は54.3%で、OECD30カ国中、最下位!!ひとり親というのはほとんど母親だが、子どもを抱えて、十分な収入のある職に就けないことが大問題なのだ。先日書いた、保育所の不足や病児保育の遅れのように、仕事と育児を両立させられない問題が一方にあるが、もう一方にあるのは、パートや派遣などでは家庭を支える賃金がえられないという問題だ。そしてパートなどは、不景気になれば、簡単にクビが切られる不安定な身分である。
日本では、一家の大黒柱(通常男性)が稼いできて家族を養うものとされてきた。奥さんがパートに出ても、それは家計補助か小遣い稼ぎで、だから安くて当たり前。それが当たり前だと思われてきた。
この非正規への身分差別を改めいていくには、さきの「同一価値労働同一賃金」の原則をきちんと法制化すべきなのである。
これは「同一労働同一賃金」とは違う。「同一労働・・」だと職種や労働形態などが違えば、差があって当然となる。「価値」がつくことで、職種が違っても同じ価値なら報酬も同じにせよといえる。
「同一労働同一賃金」を制度化すれば、当然、フルタイマーもパートタイマーも同じ正規雇用の枠内で均等待遇が実現する。イギリスがこの方向に大きく変わってきたのは97年の労働党ブレア政権の誕生だった。意外と最近なのである。
日本も政権交代して転換のチャンスなのだが、民主党のセンセイ方の腰が定まっていないようである。もっと外から圧力をかけなくては。