古生物学(歴史科学)の科学哲学論文
古生物学において、いかに被説明項たる現象がテクノロジーによって生産され、処理され、提示されているか。
テクノロジーと不可分であることを示す。
Derek D. Turner "Paleoaesthetics and the Practice of Paleontology(美的古生物学と古生物学の実践)" - logical cypher scape2の参考文献に挙がってたので、手に取った。
https://doi.org/10.1016/j.shpsa.2019.03.002
1.Historical sciences and technology
古生物学(歴史科学)の科学哲学の最近の研究動向
Turnerの悲観主義とClelandの楽観主義の間の論争がまず紹介されている
最近、主に注目されているのは、過剰-過少決定の問題
しかし、テクノロジーはあまり注目されていない
それでも、さらに近年になって、傾向は変わりつつある。A.WyleやC.Wyle、A.Currieの研究
3.Paper technology
18、19世紀の古生物学において用いられたペーパー・テクノロジー
スケッチや表、グラフなど
キュビエの骨のスケッチ
ブロンのグラフ(特徴を数量化し時系列上にグラフ化、進化のパターンを視覚化)
4.Twenty-first-century virtual paleontology
20世紀の初めから、X線が使われるようになり、
1960年代から、コンピュータが用いられる
さらに、21世紀から、いわゆるバーチャル古生物学
より完全なデータを抽出するツールとしてのバーチャル古生物学
単にデータを出してくるのではなく、可能なシナリオの生成ができるようになる。
ラウプの腹足類の殻の研究や、Gatesyのティラノサウルスの後脚の研究(実際のものだけでなく、取りうる形をパラメータいじって調べる)
5.Towards a technoscientific history and philosophy of historical sciences
技術的デバイスは、被説明項を提示する
キュビエは、スケッチから現れたものを説明しようとした
過去に起きた出来事そのものは知ることができないが、過去の力は、十分な現実として現れる
コンピュータで生成されたイメージは、古生物学者がアクセス可能な現実の一部であり、化石と存在論的な差異はない。どちらも、同じ現実に対する側面である
科学とテクノサイエンスの違いは、方法論的なものではなく存在論的なもの
探求の対象が単に発見されるのではなく、創り出される
理論的な表象と技術的な発明は絡み合っている
19・20世紀のペーパーテクノロジーと、20・21世紀のバーチャル古生物学は、強い連続性があるけれど、根本的に変化している。
X線、MRI、3Dスキャナーやコンピュータは、表やグラフなどのペーパーテクノロジーにおげる二次元空間ではなく、三次元空間に拠っている
ラウプやGatesyによって視覚化された現象は、ペーパーテクノロジーでは視覚化できなかった
テクノサイエンスとして古生物学や歴史科学を捉えるアプローチは、歴史科学がどのように過去に対して認知的なアクセスをするのかについての理解を助けてくれる
キュビエやブロンやラウプらは歴史的な現象が現れるロバストなシステムを生み出しコントロールするための、テクニカルなスキルを開発してきたのであり、技術と理論のつながりを分析することで、自然史的知識の生産についての理解を広げられる。