KAWADE道の手帖シリーズ。
鬼界彰夫、永井均、飯田隆、岡本賢吾による「レクチャー」、野家啓一のエッセイ、戸田山和久、大家雄裕、田中久美子、小山明、前田泰樹、山田啓一による論考、著作解題、さらに、大森荘蔵、藤本隆志、坂井秀寿、奥雅博がかつて書いた文章も「日本のウィトゲンシュタイン受容史」として掲載されている。
以下、おもしろかったものをいくつかピックアップ
永井「たまたまの孤独」
「私」とか「今」とか「神」とかの話は、まあいつもの永井均だと思う(1冊くらいしか読んでないので断言はできないが)
で、言語ゲームが「たまたまの孤独」であるというあたりがよかった。『ウィトゲンシュタインはこう考えた』を読んだ時、数を数え上げるところの話を読んで、これが「他者」って奴かーとか思ったことがあって、それと重なった。そこにグルーのパラドックスを絡めてるのも面白かった。
言語ゲームっていうのは、単なる偶然性ではなくて、そこから外に出れないということがあって、カジュアルに「言語ゲーム」って言葉が使われる際に、そこらへんが顧みられていない気がして気になっていたりもしたので、よかった。
岡本「ウィトゲンシュタインの数学の哲学」
そもそも数学の哲学自体に疎く、ウィトゲンシュタインがそれに関わっていたということもあまりちゃんと知らなかったので、多分ちゃんと理解できてないけど、勉強になった。
当時の数学の哲学において、「基礎づけ」というのが問題になっていて、色々なアプローチがあったわけだが、ウィトゲンシュタインはラッセルなどのやり方は批判していて、フレーゲのアプローチをおそらくもっとも評価していたらしい、と。
で、ウィトゲンシュタインが何をしようとしていたかを数学の哲学の中で位置付け、それの現在における価値まで触れている。
著作解題『確実性の問題』
ポイントは「ナンセンス」ではなく「不明確」という点だと認識することである。
大屋論文は面白そうだけど短い
小山「ヴィトゲンシュタインの建築問題」
多少、建築もやってたってことは知ってたけど、全然知らなかったので面白かった。
かなり凝った家を作っていたんだなあ。
何もない空間を作り上げ、「ドア」を重視して、ドアの数や配置によって部屋の特徴をつけるという建築。
大森「他我の問題と言語」
「絵なきさし絵」とか「相貌」とか、ロボットの話も出てくる。
奥論文も面白そうだけど、短い。
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/06/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 2人 クリック: 57回
- この商品を含むブログ (11件) を見る