明るい希望をもたらす2024年の医学のブレイクスルー7選

アルツハイマー病の血液検査、ブタからヒトへの臓器移植など

2024.12.17
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ニューロン(赤)のまわりに形成されるアミロイド斑(黄色)を描いたイラスト。アミロイド斑はアルツハイマー病に重要な役割を果たしていると考えられている。2024年には、アルツハイマー病を90%の精度で判定できる血液検査が開発された。(ILLUSTRATION BY THOM LEACH, SCIENCE PHOTO LIBRARY)
ニューロン(赤)のまわりに形成されるアミロイド斑(黄色)を描いたイラスト。アミロイド斑はアルツハイマー病に重要な役割を果たしていると考えられている。2024年には、アルツハイマー病を90%の精度で判定できる血液検査が開発された。(ILLUSTRATION BY THOM LEACH, SCIENCE PHOTO LIBRARY)

 2024年は発見の多いエキサイティングな年だった。人工知能(AI)や計算ツールの飛躍的な進歩が大きな話題となったが、生物学や医学分野の最先端でも多くの興味深い発見があった。(参考記事:「「AI」 人工知能が切り開く科学の未来」

 例えば、科学者たちは年齢とともに成長する心臓弁を移植する方法を知った。また、アルツハイマー病を簡単に検出できる血液検査を開発した。女性が自己免疫疾患にかかりやすい理由についての理解も深まった。2024年の医学において最も注目すべきブレイクスルーは以下の7つだ。

1. 処方箋不要の経口避妊薬

 米国では2024年、処方箋なしで入手できる経口避妊薬が初めて発売された。米食品医薬品局(FDA)は、1日1回服用する経口避妊薬「オーピル(Opill)」を2023年に承認しており、年齢、保険加入の有無、医師の診察の有無に関わらず、誰でも店頭で買えるようになった。(参考記事:「便利で確かな男性の避妊法候補3選、ジェルの治験で有望な結果が」

 一般的な経口避妊薬はエストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンを配合しているが、オーピルはプロゲスチンというプロゲステロンに似た合成ホルモンのみを含んでいる。プロゲスチンのみを含む経口避妊薬(いわゆる「ミニピル」)は、一般に副作用が少なく、授乳中の人や、高血圧の人や、血栓症の既往歴のある人も服用できる。

2. 移植後も成長する心臓弁

 世界初の部分心臓移植手術で、生まれつき心臓弁に問題のある男の赤ちゃんに、成長とともに大きくなる新しい心臓弁が移植された。1月に医学誌「JAMA」に報告されている。

 問題のある心臓弁を機械や生体(ウシやブタの生体組織)の弁で置き換える手術は60年以上前から行われているが、これらは成長することも自己修復することもない。また、機械弁の場合は、患者は血栓を防ぐ薬を生涯にわたって服用しなければならない。

 今回の手術で赤ちゃんに移植されたのは、心臓弁と動脈は正常に機能していた幼児から提供された心臓弁だ。移植された弁は生きているので、移植された心臓と同じように成長し、自己修復し続けることができる。

3. ブタからヒトへの臓器移植

 医師たちは2024年、ブタからヒトへの臓器の移植を複数例、成功させた。これは、移植待機リストに名前を連ねる人々にとって新たな可能性を開く画期的な出来事だ。

 移植された臓器のうちいくつかが腎臓であることは重要だ。腎臓は移植が必要とされる臓器の筆頭で、末期の腎臓病患者が増えているのに伴い、移植を必要とする患者も増加の一途をたどっているからだ。(参考記事:「【解説】死んだブタの臓器を回復させる衝撃の新技術「OrganEx」」

次ページ:遺伝子改変ブタの腎臓

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