これまでに地球上に登場した生物の99%以上は、すでに絶滅している。たえず変化する環境に適応しようと新しい種が進化してくる一方で、古い種は消えてゆく。しかし、絶滅のペースは決して一定ではない。むしろ、地質学的には一瞬とも言えるような短い間に75〜90%以上の種が姿を消す「大量絶滅」が、過去5億年の間に少なくとも5回起きている。
大量絶滅は恐ろしい現象だが、新しい形の生命に地球を明け渡すという意味合いもある。最もよく研究されているのは、白亜紀と古第三紀の境界となる約6600万年前の大量絶滅だ。非鳥類型恐竜を絶滅させ、哺乳類や鳥類が急激な進化と多様化を遂げる余地をつくった。
白亜紀末の絶滅は、主に巨大隕石の衝突によって引き起こされたことで有名だが、これは例外的なケースだ。大量絶滅の最大の原因は、地球の炭素循環の激変だ。例えば数十万平方キロもの範囲に溶岩を吐き出すような巨大噴火は、大気中に二酸化炭素などの温室効果ガスを大量に放出し、暴走温室効果や、それに伴う海の酸性化および貧酸素化を引き起こす。(参考記事:「「暴走温室効果」は起こりえるのか?」)
以下に、過去に5度起きた大量絶滅とその原因、そして、現在の状況を順に解説しよう。
1. オルドビス紀—シルル紀絶滅(4億4400万年前)
オルドビス紀(4億8500万年〜4億4400万年前)は、地球上の生命が劇的な変化を遂げた時期だったが、その終わりに、知られているかぎりで最初の大量絶滅が起きた。このとき、突然の寒冷化により、莫大な量の水が、南極付近の陸地を覆う氷冠として閉じ込められたのだ。この氷河作用は、現在の北米のアパラチア山脈が隆起したことがきっかけで起きた可能性がある。新たに隆起した岩石の大規模な風化により、大気中の二酸化炭素が岩石から水に溶け出した物質と反応して吸収され、地球の温度が大幅に下がったのだ。
その結果、海面は数十メートルも低下した。浅瀬にすむ生物は、生息地の寒冷化と縮小により大打撃を受けた。ところが、寒冷化はすぐに終わってしまう。そしてこれが、生き延びた生物へのセカンドインパクトとなった。海面が再び上昇し、海水の酸素濃度が低下。有毒な金属が海水中に溶け出しやすくなったせいで、回復がたびたび中断させられたのだ。(参考記事:「史上2番目の大量絶滅、原因は有毒金属とする新説」)
現在知られている大量絶滅のなかで2番目に大規模なこの出来事は、すべての種の85%を絶滅させたと考えられている。サンゴ、シャミセンガイのような腕足動物(2枚の殻をもつ生物)、コノドント(ヤツメウナギに似た生物)、三葉虫などの海洋生物が最も大きな影響を受けた。(参考記事:「発見:三葉虫の極上化石、内臓も脚も」)
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