IP(インナーペアレンツ)の妨害工作を笑え!
たとえ親と距離をとってはいても、IPに乗っ取られて生きている人は多い。そういう人が2年ほどをかけて背骨を作っていく。その2年間も半端ではない闘いの連続である。
そして、ようやく自分のIPも相当に強い、ということが自覚できるようになってくる(闇にどっぷり浸かっているときは、IPの強さも自覚できません。そして、他の人のブログ見ながら、みんなIP強くて大変だなぁ…などと他人事のように見ています ^^;)。自覚できたということは、敵を自分から分離できるということ。
それを経て、ようやく引っ越しをしようかというところに来る。それも、外的な要因があったりしてやっとこさ動き始めるような形だ。この時、IPは最大の妨害を仕掛けてくる。その人が、「思い」で行動しようとするときに、それをさせないのがIPの役割だからだ。そのときに、どのように挫折させようとするのか、IPの手口をご覧あれ。
■トラップ1:面倒くさい------------------------------------------
引っ越しをしようと思った瞬間に、
「めんどくせぇ~」という思いがどっとわき起こり
同時に身体がド~ンと重~くなる。
そして、一挙に行動する気力が失せる。
一瞬前と、一体何が違うのか?
外部状況は何も変わっていない。
ただ、「思った」だけである。
それだけで、これほどに心身が瞬時に拘束されたのだ。
つまり変化したのは、外ではない。
自分の内側―脳内現実が変化したのだ。
(これほどに、人は脳内現実に縛られて生きている。心理を考慮に入れず経済合理性だけで行動する「経済人」を前提にして理論を展開する経済学は、役に立たないことがわかるだろう)
このように気持ちで動こうとすると、「気持ちで行動させない」ことを使命とするIP(インナーペアレンツ)が瞬時に発動する。そして、心も体も全身を強烈な倦怠感が襲う。一歩踏み出した瞬間に、バサッと鉛の網が落ちてきて絡め取られるかのようだ。あるいは、一歩踏み出した瞬間にガチャン!と“中”に足を挟んで身動きできなくするトラバサミの罠が、自分の中に埋め込まれている。
(*倦怠感や面倒くささに悩まされている方、それはほとんどIPです)
■トラップ2:自己洗脳------------------------------------------
さて、この罠に負けず、なんとか足枷をつけたままでも、とにかく不動産屋に行ったとする。すると3件ほど紹介された。
1軒目―駅に近い。が、日当たり悪く手狭。今と変わらない印象。
2軒目―1DK。日当たり良好だが、流しが狭く家賃が高い。
3軒目―駅から徒歩20分。2DK。1階だがかさ上げしてあり日当たりも良い。
それらの物件を見た夜、作業をしている最中に「いいなぁ、あそこ!」と思わず声が出たエピソード。彼は、そのいいと思った3軒目について詳細に話し始める。GoogleMapで調べた駅からの距離、自転車に乗った場合の時間、ついでにバスに乗った場合の時間…。
その周りの様子を訊くと、話しにくそうに、しかし詳細に話す。そのアパートから見えるところに「ゲッ!!」(←大きな声だった)と思った場所があるという。
お寺だ。それも、動物供養の多いお寺だという。彼のモンスターペアレントは宗教をやっていた…。さらに、違う方角の近隣に廃団地があるという。詳しく話してくれるので、その一帯の寂れた雰囲気が伝わってくる。気持ちが明るくなる空間ではない。
なるほど…、彼(のIC)が私に電話してきたわけがわかった。IPが彼本体を落とし込もうとしているから助けてくれ、と電話してきたのだ。一通り聴いた後で、ゆっくりと話していく。
最も大きな声で感情があらわになったのは、お寺だ。そして、その様子を語っている間中、「いやだ!」という感情が出ていた。親を思い出すからだ。「ここはイヤだ!」―それがICの本音である。
それを封じ込めるために、IPは“自分”を説得する必要がある。それが、あのネットを使った詳細な“調査”だ。ほら、遠いけど問題ないよ、と自分にも人にも納得させるためのデータをそろえている。
でも、よ~く考えてみよう。今の自分の状況に駅からの距離は関係ある?
「ない」―そのとおり。そもそも決め手にならないのに、わざわざそのような調査をしていたわけだ。これは、自分(IP)が自分を説得するための手続きである。そして、これを話した相手(この場合は私)が納得して背を押せば、彼は承認を得て行動できることになる。
このように自分を説得し、第三者からも後押しされたという“事実”を得て自分を追い込んでいくのが、IPの強い人間の“自分の落とし込み方”である。
(親が自分を落とし込んできたやり方と同じでしょ。身体はしっかりと学んでるんです --;)
■トラップ3:失敗させるための布石--------------------------------
さて、ここに引っ越したとしよう。感情を抑圧する結界空間にまんまと閉じこめるわけだからIPの勝利である。当然、気持ち(IC)は鬱屈する。そして、ある日爆発し、「やっぱり俺はダメだ」と自分を責め自信を失わせる。つまり、引っ越しても、引っ越しが失敗しても、IPのエサとなる。
さらに、「広い部屋がいい」というところを訊いてみた(存在不安が強いので、広い部屋を望まないはずだから)。すると、「実は…」と本音が出てきた。
以前、今の部屋で荷物をどんどん捨てたことがあった。
彼の部屋も「断捨離」の「捨」の章で出てきた摩天楼だった。その部屋をなかなか変えることができなかった。ある時、電話カウンセリングで怒りが出てきたときに、「ちょっと壊していいですか」「おぅ、やれやれ」
しばらく電話の向こうで、ドカン、バキッ、ガチャン…と破壊音が続いた。怒りというエネルギーと見守ってくれる存在の力を得て、彼はやっとIPを破壊することができたのだ。静かになったとき、
「あ~~スッキリした~」―腹の底からの声が出てきた。
「もっと早くやっとけばよかった」(笑)
しかしその後、心が解放された一方で空間が寂しくてしかたがないという。実のところ2DKもあったら耐えられないかもしれないという。それほどに、存在不安が強い。
にもかかわらず頭(IP)は、広い部屋を選ばせようとしていた。つまり、孤独に悲鳴を挙げて、もう二度とこんな気を起こさせないようにするための布石打ちである。まんまとIPの術中にはまろうとしていたわけだ。
このように思考(IP)は、その行動を選択してもIPの勝利、さらにその行動が失敗してもIPの強化につながるような二重トラップの選択をさせようとする。
■トラップ4:針小棒大------------------------------------------
ちなみに、なぜ流しが狭いとイヤなのかを訊いてみた。自炊する際に、皿を置く場所がないのがイヤだという。ならば、カラーボックスの上にアルミ箔でも敷いて置き台にすればいい。
このような些末なことを針小棒大にしてそこに意識を向けさせ、お寺という最もICが嫌がることをスルーさせようとするのが思考(IP)である。
このように思考が意識を向けさせようとすることに対して、「ほんとにそうか?」と思考を疑うことである。すると、このように駅からの距離も、部屋の広さも、流しの大きさも、実はどうでもいいことがわかってくる。
そして、大事なことは、心が安心できる周囲の環境と、今の自分に耐えられる部屋の広さであることがわかる。常に「身の丈」に応じた行動をすることだ。決して無理はしないこと。今の自分(IC)にとって本当に必要なことを一つに絞り込むこと。そこだけは絶対に譲らない。あとは、目をつぶってよい(最初から“完全”を目指させて、それが出来ないからと失敗に追い込むのがIPだ)。
その絞り込みも具体的でなくてよい。具体的になるとIPが陰謀を画策し始めるから(^^;)…まったく大変だね(笑)。だから、一度絞り込んだら手放す。後はアバウトに。直感で。
■トラップ5:第三者の巻き込み-----------------------------------
さて、不動産屋はこちら(IP)の希望で動く。それを不動産やが落とし込みたい物件にうまく落とし込むだけ。最初に微妙に希望と異なるところをしかも対照的な2軒を見せておき、最後に本人の希望に近いところを紹介する。しかしそこは、普通ならなかなか借り手がいないところだったりするわけだ。
このように不動産屋にアプローチする時点からIPは自分を誘導し、IPの選択した範囲で選ばせようとする。実は、IPが不動産屋を利用しているのだが、“自分”は不動産屋がこれらの物件を持ってきたと思っている。しかも、早く引っ越さなければならないから、この3物件の中から決めなければならないと、自分を追い込む理由をつけている。
本当にそうか?
よく考えると、そうではないことがわかる。結局、もし挫折したとき、不動産屋や急がなければならない事情(不可抗力)のせいにするための布石を打っているわけだ。
このようにIPは不動産屋までも利用した。つまり、はなっからIPの土俵の上で右往左往していたというわけだ。いかに、人がIPから離脱するのが大変かがわかるだろう。
■トラップ6:存在不安------------------------------------------
存在不安の話から、また「実は…」と出てきた。
実は、その3カ所とも何らかの知人とつながりのある地理関係だった。しかも、それらの人々はハラッサーだ。
「不安や孤独と向き合う覚悟を決めたつもり」でも、実際の行動は一人になることを怖れて場所を選んでいる。つまり、人に依存しているわけで、そのような行動をするときは必ず罠に落ちる。このように、IPに密かに荷担しているのは、隠れた伏兵「存在不安」ちゃんなのだ。
それほどに、不安や孤独と向き合うことは辛い。親はそれに負けたのだ。そして、一度逃げ始めたら最後、死ぬまで全力で逃げ続けなければならない。そう、速度を落としたら爆発してしまう「スピード」という映画のように。
まさにこの映画は、不安から逃げ続ける人生を象徴したような映画だった。
自分と向き合う時間があると、内側から存在不安が押し寄せてくる。だから、常に意識を外に向けて疾走し続けなければならない。風景を眺めるゆとりも楽しみもなく、ただ緊張し続けて同じ所をグルグル回り続ける人生。止まったらおしまい―爆発してしまう。その恐怖だけが実感する唯一のリアルだ。
自律に向かい始めると、上記のような4重5重に張り巡らされたIPトラップと闘うことになって苦しいが、親は親で速度を落とせば爆発してしまうトラップと闘い続けている。あなたは、どちらのトラップと闘うことを選ぶだろうか。
★追い詰められているのはIP------------------------------------
相談者の方に背骨が出来、いよいよ自律に向かい始めると、IPはなりふり構わぬ妨害に出始める。本人は苦しいが、追い詰められているのはIPの方なのだ。
この段階になると、相談者の気持ちを受け止めるだけのカウンセリングをしていれば、カウンセラーが上記の不動産屋のように“利用される第三者”になってしまう。だから、相談者のIPトラップをきちんと暴いていかなければならない。
ハラスメント界と自律界の境界上に来るとき、相談者の状態もめまぐるしく変わる。生まれ直した後でも、いくらでもIPは復活する。ゴキブリみたいに。たとえば、少し電話が来ないなぁと思っていたりすると、またIPに飲まれている。電話を受けた瞬間に、内心、「あぁ今IPだな」とわかる(また、その電話の最中にICに火をつけるんだけどね)。
彼(IP)は苦しそうに話し、そして自分を取り戻したときに泣いた。大いに泣くといい。
「IPに実体があったら、ぶんなぐってやりてぇ」―よくわかる。
二人で、このIPのしつこさに笑った。
このような事例はごまんとある。
みな、それぞれにIPとの闘い方を身につけていく。
行動すれば、足下をすくわれる。
でも、そのたびにIPのやり口がわかっていく。
だから、どんどん行動すればよい。
この世に成功や失敗などない(←そんなこと言うのがIP)。
あるのは、ただ体験のみ。
それを通して何を学んだのかが勲章。
この方から後日いただいたメールだ。
『もうね、頭の中エレクトリカルパレードだよ
飯食って嬉しいのに身体が重くなってきて
IPの野郎またきやがったって思った瞬間
羽が生えたみたいに身体が軽くなってさ
そしたら今度は餃子食いながら滝のような涙
脳みその中ドッカンドッカン大戦争
よっしゃもうこうなったら見ててやるからどんだけでもやったれや!
俺には中尾さんがついとるで今までのようにはいかんぞ
覚悟せぇやIP!』
★IPを笑え!-----------------------------------------------
よちよち歩きの子どもは、転んだ瞬間に親を見る。
そのとき、親が大変そうな顔をしていると泣き出す。
が、親が笑ってみていると、泣きそうな顔が泣き笑いになり、やがて立ち上がって何事もなかったように再び歩き出す。親の笑顔が、「転ぶなんて何でもないことなんだよ」と言ってくれているからだ。
やる気のスイッチは脳の側座核というところにあり、
とにかくやりださないと「オン」にならない。
だから、膝を抱え込んでいずに、歩き出せ。
そして、何度でも転べ。
転んだら、
「あー転んだね~」と笑って見ていてあげよう。
転べば転ぶほど、転び方がわかってくる。
「まーた、転んじまったよ」(^^)と笑えばいい。
そして、
また笑って歩き出せ!
・インナーペアレンツvsインナーチャイルド(脳内親vs小さいちゃん)
・人生は七転び八起き―転んでも笑って立ち上がって歩き出せ