【中尾英司インタビュー】「会社を変革したいなら・・・」
2004/05/01(Sat) Category : 会社・改革
「月刊人事マネジメント」 2004年5月号
会社変革の仕掛け人・中尾英司氏インタビュー記事
●インタビュアー 吉田典生(以下吉田氏の記事の転載です)------------
「あきらめの壁をぶち破った人々」。
組織の改革に苦闘するミドルや改革を考えている経営者の間で、大きな共感を集めている本だ。
今回ご登場いただくのは、その著者である中尾英司氏。
小説仕立ての本書は、実際に中尾さんが挑んだ「チェンジマネジメント」をベースにしている。
「個と個を結び、組織としての成果を上げるコラボレーションの重要性」を説く中尾さんに、体験に根ざした「会社の変え方」「人事の変わり方」を語ってもらった。
1、働く人々の“気持ちの空洞化”が組織を駄目にしている
2、" 処遇のための組織"を改めなければ成果主義は失敗する
3、団塊層というボトルネックのソフトランディングへの施策づくりを
4、個の問題を関係性の中でとらえ直す“システムズアプローチ”を取り入れる
5、OJTからOJEへ―脱工業化社会に合うマネジメントに転換せよ
■1.働く人々の“気持ちの空洞化”が組織を駄目にしている
カウンセリングマインド。
この聞き慣れない言葉が、中尾さんの作品と活動の底流にある。
「管理職は自分のマネジメントスタイルの問題として、一般社員は上司に言いたいことの代弁として、私の話を受け取ってくれるようです」
ではチェンジマネジメントにおけるカウンセリングとは、具体的に何を意味するのか。
「人々の気持を乗せなければ改革にはつながらない。なんとなく分かっている人は多いのですが、どうすれば乗せられるかのノウハウがない。人としての信頼関係を築くことが基本なんですが、どのように築けばいいのか分かっていない。
そこで改めて相手の話を“聴く”とか“謝る”……などの本質的な意味と方法を理解する必要があります。
一言で言えば、『ちゃんと伝えなくては伝わらないよ』――ということが分かっていないのです。その問題を紐解いて、共に働く人々の気持を引き出すことの大切さを分かってもらう。それが出発点です」
題目だけが美しい経営計画や新制度のもとで、死んだ目をしている人たちがいる。
当事者の心に火がついていなければ、チェンジマネジメントへの挑戦が頓挫するのは至極当然のこと。しかし当事者の上に立つリーダーは、「こんなはずではなかった」と言う。
「昔の日本社会では、もっと人と人のつながりがあったと思います。国や地域、企業組織にも言えることです。そのつながりが希薄になり、人々の中に“気持の空洞化”が起きている。
いつの間にか、気持を大事にしない社会になってしまった。そして学校でも会社でも、教育といえば『個の能力アップ』ばかりを唱えています。
だけど今の日本に必要なのは、個と個をつないで組織を活性化すること。それができる人材を育成することです。つまりコーディネート力、ファシリテーション力のある人材を育成しなくてはなりません」
中尾さんの著作の副題に“日本発チェンジマネジメントの実際”とある。
この「日本発」というところが、実は非常に重要なのではないかと思う。
とかく昨今のチェンジマネジメントの視点は、グローバルスタンダードの名のもとに押し寄せるアングロサクソン方式に偏っている。しかし改革の当事者として現場で生きてきた中尾さんは、自ずと現場の息吹を感じ取りながら“カウンセリングマインド”で取り組んできた。それが著作や講演に寄せられる大きな共感につながっているのだろう。
「これから大切なのは、相手の気持を受けとめる力をつける教育です。それは昔の社会環境では、多くの人が当たり前のように持っていた力です。しかし今は、あえてそれを社会で実施しないと駄目な時代なのです。だからこそカウンセリングやコーチング、メンタリングといったことが、ビジネスとして生まれてくるわけでしょう」
<続く>
会社変革の仕掛け人・中尾英司氏インタビュー記事
●インタビュアー 吉田典生(以下吉田氏の記事の転載です)------------
「あきらめの壁をぶち破った人々」。
組織の改革に苦闘するミドルや改革を考えている経営者の間で、大きな共感を集めている本だ。
今回ご登場いただくのは、その著者である中尾英司氏。
小説仕立ての本書は、実際に中尾さんが挑んだ「チェンジマネジメント」をベースにしている。
「個と個を結び、組織としての成果を上げるコラボレーションの重要性」を説く中尾さんに、体験に根ざした「会社の変え方」「人事の変わり方」を語ってもらった。
1、働く人々の“気持ちの空洞化”が組織を駄目にしている
2、" 処遇のための組織"を改めなければ成果主義は失敗する
3、団塊層というボトルネックのソフトランディングへの施策づくりを
4、個の問題を関係性の中でとらえ直す“システムズアプローチ”を取り入れる
5、OJTからOJEへ―脱工業化社会に合うマネジメントに転換せよ
■1.働く人々の“気持ちの空洞化”が組織を駄目にしている
カウンセリングマインド。
この聞き慣れない言葉が、中尾さんの作品と活動の底流にある。
「管理職は自分のマネジメントスタイルの問題として、一般社員は上司に言いたいことの代弁として、私の話を受け取ってくれるようです」
ではチェンジマネジメントにおけるカウンセリングとは、具体的に何を意味するのか。
「人々の気持を乗せなければ改革にはつながらない。なんとなく分かっている人は多いのですが、どうすれば乗せられるかのノウハウがない。人としての信頼関係を築くことが基本なんですが、どのように築けばいいのか分かっていない。
そこで改めて相手の話を“聴く”とか“謝る”……などの本質的な意味と方法を理解する必要があります。
一言で言えば、『ちゃんと伝えなくては伝わらないよ』――ということが分かっていないのです。その問題を紐解いて、共に働く人々の気持を引き出すことの大切さを分かってもらう。それが出発点です」
題目だけが美しい経営計画や新制度のもとで、死んだ目をしている人たちがいる。
当事者の心に火がついていなければ、チェンジマネジメントへの挑戦が頓挫するのは至極当然のこと。しかし当事者の上に立つリーダーは、「こんなはずではなかった」と言う。
「昔の日本社会では、もっと人と人のつながりがあったと思います。国や地域、企業組織にも言えることです。そのつながりが希薄になり、人々の中に“気持の空洞化”が起きている。
いつの間にか、気持を大事にしない社会になってしまった。そして学校でも会社でも、教育といえば『個の能力アップ』ばかりを唱えています。
だけど今の日本に必要なのは、個と個をつないで組織を活性化すること。それができる人材を育成することです。つまりコーディネート力、ファシリテーション力のある人材を育成しなくてはなりません」
中尾さんの著作の副題に“日本発チェンジマネジメントの実際”とある。
この「日本発」というところが、実は非常に重要なのではないかと思う。
とかく昨今のチェンジマネジメントの視点は、グローバルスタンダードの名のもとに押し寄せるアングロサクソン方式に偏っている。しかし改革の当事者として現場で生きてきた中尾さんは、自ずと現場の息吹を感じ取りながら“カウンセリングマインド”で取り組んできた。それが著作や講演に寄せられる大きな共感につながっているのだろう。
「これから大切なのは、相手の気持を受けとめる力をつける教育です。それは昔の社会環境では、多くの人が当たり前のように持っていた力です。しかし今は、あえてそれを社会で実施しないと駄目な時代なのです。だからこそカウンセリングやコーチング、メンタリングといったことが、ビジネスとして生まれてくるわけでしょう」
<続く>