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財政緊縮策がナチスを台頭させた - himaginaryの日記
こういう研究はキャッチーなので受けやすい。実際、このエントリにはブックマークが突出して多くついている。しかし私は、ドイツのナチズム史について知らないけれども、注意して読む必要があると思った。たとえば、次のような部分にまず引っかかる。

1930年から1933年に掛けてナチが選挙で成功を収めたという厳然たる事実をもたらした経済的理由は、現在のコンセンサスによれば、主にベルサイユ条約と大恐慌(高失業率と金融の不安定性)によるものである。しかし、それらの要因だけではナチの選挙での勝利を完全には説明できない。

そりゃ当たり前だ。

ファシズムやナチズムの台頭が、そうそう簡単に経済要因のみで説明できるわけがなく、また経済要因の中でもスッキリした説明がすぐさま与えられるはずもなく、しかも経済要因さえどうにかしたらという仮定にどれほどの意味があるか、私にはよく分からない。

かつ、こういう研究を現在の状況にただちに当てはめて、ものを語る、考えるのは非常に無理がある。

私がこのところ興味があるのはファシズムだけれども、ファシズムが成立したのは相当の条件がそろったからだ。その条件が現在の先進国に再現されることは、今のところはないのであって、ファシズムの再現はそれほど容易なことではない。

私が、すぐにファシズムやナチス、ヒットラーを持ち出す言説に懐疑的なのはそういう理由であって、かつファシズムやナチズムについて誤解させるのではないか、あるいはきわめて単純な理解にとどめさせてしまうのではないかと思うからでもある。

執筆者たちの意図はどうあれ、ここに紹介されている研究を、1930年代前半のドイツの社会状況について重要な示唆を与えるものとして読むのはまだ理解できるけれども、それ以上のことについては慎重でありたいと思う。とりわけ、ナチズム・ナチズム史についての理解が浸透しているとは到底思われない日本人は、一層慎重に読むべきだろう。