黙っていられないこと part19

橋下の何がいけないかというのは、ごくまともに論ずるとしてもかなりはっきりしていると思います。たとえば、コストカッターとしてはまだしも、余った分を意味不明の事業に投資するあたりなど、もっと批判された方がよい。


ただ、私はちょっと別の見方をしています。というよりも、その種のまともな議論は実はどうでもいいのではないかとさえ疑っています。


今回の一件で、たとえば「まともな反論ができないから人格批判するしかなくなった」という人を散見したのですが、週刊朝日の編集部の意図はともかく、そういう意見にはいささか疑問を付けたくなる気分がないわけではありません。


たとえば、横山ノックや石原慎太郎などは、あれでも一応国会議員を長らく務めた経験があり(石原さんにいたっては運輸大臣までやっている)、行政の中身をよく知っているはずでした。そのあたり、橋下と比較になりません。


他方で橋下が知っているのは法律であって、行政についてはほとんど経験がない。府知事の経験はあっても結果はいかがなものだったか。その上、国政に関する認識はもはやハチャメチャもいいところだ、という点も彼の発言ぶりからはっきりしている。


そういうことももちろん問題なのだけれども、それ以前の問題というのがやはりあるのではないか。


今年話題になったことの一つで、MBSの女性記者と記者会見で議論になったという話がありました。このビデオは全編Youtubeにあるので、是非30分間通してきちんと見ていただきたいと思います。

http://www.youtube.com/watch?v=GShnu_i7TVY
http://www.youtube.com/watch?v=FupdL5Q3MPo&feature=relmfu

橋下の事実認識がそもそも正しかったのかという問題があり、ロジックとしても通らないことをいろいろ言っているように私は思うのですが、それ以前の問題として、芝居にしても怒りっぷりがおかしい。たぶん、前半のほうがより明瞭だと思う。。。しかし改めてみても、本人もよく分かってないか知らないことをここまでよく言えるもんだなぁ。。。


この種の問題を「ディベート術」の問題に還元させてあれこれ評するのは根本的に間違っているのではないか。

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後藤田正晴は権力の運用は抑制的であらねばならないという信念をもっていたようにどこかの本で読んだ記憶があるのですが、それは、後藤田が内務官僚から警察庁長官へと、つまり権力の怖さについてよく知っていたからそういう信念になったわけでありましょうね。


法律の知識や権力そのものは、便利な道具にもなりますが凶器にもなります。刃物と同様に。


率直に書けば、橋下はそもそも権力を持っていていい人間なのかどうか、政策以前にそこから私は疑っています。


前も書いたように大阪だけの話ならまだいいとはいえ(ただし、原則論を言えば大阪だけの話ならいいというのもこれまた随分なわけですが)、大阪も日本第三の都市、第三の経済圏の中央です。そういう重要な都市の行政をこういう人物が握っていて本当にいいのかどうか。


そういうと、それを考えるのは大阪市民や府民の問題だということになるわけで、それは全くもっともな話でもあるわけですが、しかしながら大阪府民でなくてもそこを問うておくことは無意味でもないと思います。

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この点、いささか疑問に思ったのは、人格批判よりまず政策を批判せよという意見です。もちろん、政策批判は重要です。もっとやってもらいたい。


しかし、権力という刃物を委ねている以上、人格も重要な問題になってくるのは当然のところ、政策をもっと批判しろというのはやや一面的な建前の議論だと思いました。


また、このブログにもリンクしましたが、、玉井克哉先生がなさっていたRTです。
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/259870170296770561

橋下氏が記事を読んで感じたであろう「恐怖」と「怒り」を想像できない人間は、人の心がわからないのだろう。記事は橋下氏への憎しみと憎悪にこりかたまった常軌を逸したものだった。彼の人格を否定し、その原因はDNAにあるとして、部落出身の出自や一族の悪評をさらすなど、許される記事ではない。

先日リンクした毎日新聞の記事の「佐野を抹殺しに行かないといけない」あたりの語り口もそうなんですが、この種のことを、そういう普通の解釈で「想像」されるとたまったものではないと思います。人がよすぎます。


また、玉井先生もこういうごく普通の解釈をする普通の人の意見をRTしているということは、先生も人がよすぎるのではないかと思われるわけです。


私が、MBSの女性記者との「議論」を皆さんもっと真面目に聞くべきだと考えている理由は、このへんにあります。