あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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クローズコンタクトではコミュニケーションより対価が重要になる

ソーシャルディスタンスの必要性が求められる中、これまで以上に、密接な関係作りが重要視されてゆくと思っています。

ほとんどの人たちとは一定距離を持ってつきあうけれど、良く知り合っている人とは密接な距離で付き合っていくことです。

 

ただ、それはハードな側面とソフトな側面に分かれてくるでしょう。

 

重要なことは、物理的に距離をおいていたとしても、心理的に近しい距離にあることです。

密接な距離でつきあうクローズコンタクトは、心理的な距離を縮めることによって実現します。

 

企業におけるクローズコンタクトは、メンバーシップやエンゲージメントという言葉であらわされてきました。

このうち、メンバーシップはハードな側面でも密接であることを求めてきました。

 

その一方でエンゲージメントは、ソフトな側面を重視した考え方です。

たとえば経営者との距離や情報のやり取り頻度など、コミュニケーションの改善によって、企業とのソフト面での距離が縮まっていくというものです。

 

ただ、それだけがクローズコンタクトの方向ではない、と私たちは考えています。

物理学者でありベンチャー経営者でもあるサフィ・バーコールは、「ルーンショット」という著書において「イノベーションの方程式」という概念を示しています。 

 

彼はカルチャーよりもストラクチャーの方がイノベーションを引き起こすのに重要だと説き、「目の前の仕事への集中」「目の前の仕事からの報酬」「少ない組織階層と多くの同僚」などが必要だといいます(同書の中では別の言い方ですが、私たちなりに言いかえてみています)。

 

それらをさらにシンプルに示すなら「対価を明確にすること」とだと言えます。

 

もちろん対価の重要性はエンゲージメントの基準においても示されています。

ただ、エンゲージメントが語られるとき、コミュニケーションの側面が過度に強調されてきた傾向があることは否めません。

 

だからクローズコンタクトを促進するための手法として、コミュニケーションの改善と対価の明確化は同時に考えなければいけないものだと、私たちは考えています。

 

そして対価を明確にすることとは、昇格による昇給ではなく、それぞれの期間において設定したゴールを達成した際の利益配分などを明確にすることであり、評価・報酬制度の見直しに他なりません。

 

密接な関係性(クローズコンタクト)のためには、コミュニケーションによる信頼獲得と同様に、正当な報酬を分かち合うことが重要なのです。

ただこれはもちろん、払う側だけでなく、受け取る側が成果を出し続けることと併せて考えなければいけません。

 

余談

対価といえば「等価交換」か「贈与」か、が連想されたりします。

この漫画とか。 

 

この本とか。 

 

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)