あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

事業計画を作る人は人事マネジメントを勉強した方がいい

ここ半年くらい、仕事で、たくさんの起業計画を確認させていただいた。

社会人がまじめに作るタイプの起業計画で、かなりガチなものだ。

なによりも、お金がちゃんと動いている。

中にはもう動き出しているものもある。

 

そんなたくさんの起業計画に、どうしても足りないものがあることに気づいた。

それは「人事の視点」だ。

 

正直私は、人事マネジメントの仕組みをつくりながら、どこかで人事の仕組みを軽んじている部分もあった。

どうこう言っても、お金が優先するよな、とか。

お客さんがいなけりゃ人事も機能しないよな、とか。

 

そうではない、ということが今回、肌感覚で実感できた。

 

なぜなら、ほぼすべての起業計画が、人=お金としてとらえていたからだ。

 

たとえばある計画では、小規模店舗をリーンスタートアップさせ、その成否を見ながら爆発的に拡大していく、というものがあった。

5年目までの収益計画、資金計画が記されている。

店長の年収は550万円で計上され、パートタイマーは8時間フルタイムとして300万円の年収。それらが計画にのぼり、事業拡大の方向が示されていた。

 

それらを見て、私はすぐにわかった。

半年もたたずに、大幅な修正が必要になる。

そもそも、成功の可能性が極めて低い。

それが最初の実感だ。

 

その計画のビジネスのシードはとても興味深いものだった。

しかし、明らかにかけているものが二つある。

 

第一に、働く人に対して求めるモチベーションの方向性だ。

その計画には、モチベーションを高めるための仕組みは、何も用意されていなかった。

 

多くの事業計画作成の指導では、マーケティングと財務計画を教える。

しかし、働く人に対してのモチベーションマネジメントを教えることはない。

年収さえはらえば、人は何でも言うことを聞くのだろうか。

そもそも、生産性を高めたり、創造性を発揮したりすることは、給与を支払うだけで実現できるのだろうか。

 

第二に、経年計画で人件費が常に固定的コストとして見られていたことだ。

一度採用した人はいつまでも同じ年収で働いてくれるのだろうか。、

退職した後、新しい人を採用するコストはどれくらいかわかっているだろうか。

そもそも、事業に賛同し参画してくれる人をつくるために、「無料のOJT」が機能するのだろうか。

 

お金も、お客さんももちろん大事だ。

でも、少なくとも同じくらいに、働いている人は大事だ。

彼ら、彼女らが事業に賛同し、事業に共感し、事業を作り上げていこうとすることなしでは、どんなビジネスも成功しない。

そのために、モチベーションを高める仕組みが必要だ。

選抜して活躍してもらう仕組みが必要だ。

同じ行動をとるための同質性が重要である場面もある。

あるいは、多様性を強調すべき場面もある。

 

お金と顧客だけで、ビジネスは成功しない。

従業員をどう生かし育て伸ばすかを学んでおいたほうがいい。

人事マネジメントを学んでおいた方がいい。

そのことは、きっと、経営者の力になる。

 

この本にも、そんなことが書かれている。

 

How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス)  ―私たちの働き方とマネジメント

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平康慶浩(ひらやすよしひろ)

 

 

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